去年の冬の初めのころだったと思う。家の前の坂を下ると、イチョウは真っ黄に染まっていた。そういえば、やっと冬らしい冷たさがやってきたようだ。いつものように夕飯の買い出しへいくところだったが、ふと道順を変えたくなった。目黒川をわたす橋へ向かうところを、手前で右折。前の仕事を辞めてからはあまり通らない道なので、なにか変わったことがないか、偵察も兼ねている。ここのところ、あちこちでビルが増殖しているから、風景は一日としてとどまっていない。
竹藪の敷地を抜けたところにも大きなイチョウの木があった。両腕がまわらないほどの大木だ。朱塗りの鳥居に寄り添うように、立っている。奥にはごくささやかな社があって、石の狐が向かい合う。さて、こんなところにお稲荷さんあったかな!? 普段どれほどボケッと生きてるんだと呆れる。イチョウが出張っていなかったら素通りしていただろう。
社の中央には黒っぽい塊。よくよく目を凝らしてみると、猫だった。社が手狭なのか、身体がデカイのか、片足をだらんと垂らし、熟睡している。お稲荷さんと猫。これはいい被写体だと近づこうとすると、猫はめんどくさそうに片眼を開けた。じりっと目があい、すぐに猫はまた寝入りはじめた。もう一歩、踏みだそうとすると、猫の耳だけがこちらを向いてぴくぴくしている。どうやら、寝たふりのようだ。タヌキのような奴である。
そういえば何かの映画で、狐の妖怪が「最近はお稲荷さんに油揚げを供えてくれる人間が減ってしまったの」と嘆くシーンがあった。この都会のど真ん中じゃ、油揚げを供えるのは現実的ではない。あっというまにカラスがかっさらっていくだろう。いや、あのタヌキ猫だって油断できたものじゃない。
遠回りして辿り着いたスーパー。なんとなく油揚げコーナーに足が向き、なんとなく油揚げをカゴに入れて、陽がかげるところを急ぎ足で帰った。お稲荷さんに猫はもういなかった。すっかり、寒い。なにか温かいものを体に入れなければ・・・・・・ということで、その日の献立はきつねうどんになったのだ。
五穀豊穣、商売繁盛を祈願して、甘い揚げさんいただきまひょ。
きつねうどん
材料
油揚げ | 1枚 | ※で炊く |
※出汁 | 200cc | 出汁のとりかたはこちらへ |
※薄口醤油 | 大1.5 | |
※みりん | 大1.5 | |
※きび砂糖 | 小1 | |
うどん | 二人分 | スープは※をあわせて一煮立ちさせる |
※出汁740cc | ||
※薄口醤油 | 大1.5 | |
※みりん | 大3 | |
※塩 | 小1/2〜1 |
つくりかた
油揚げを煮る
熱湯でさっと油揚げを湯がいたあと(油抜き)、油揚げを適当な大きさに切っておく。
出汁〜砂糖までを小鍋に入れて一煮立ちさせたら、油揚げを加え、中火で煮汁が半量になるくらいまでふっくら炊く。煮詰まったら火からおろして、そのまま味を含ませる。
うどんスープをつくる
うどんのつゆの比率は出汁、薄口醤油、みりんを16:0.5:1の割合。これだどかなり薄味なので、あとは塩で調整していく。
味見したときに、少し薄いかな? と思うくらいがちょうどいい。油揚げにしっかり味が入っているから一緒に食べたときにメリハリもでるし、スープも最後まで飲み干せる。
うどんを茹でる
お好みのうどんを茹でる。我が家では専ら、カトキチの冷凍うどんを常備している。うどんを湯がいているあいだに、丼にも湯を入れて温めておこう。
丼の湯を捨てて、湯切りしたうどんを入れたらつゆをたっぷり入れて、油揚げとネギを散らしたら、即刻食うべし!
七味唐辛子は、浅草のやげん堀で「中辛・陳皮多め」で特別調合してもらっている。香りが抜群によくて、うどんとの相性は最強だ。浅草に出かけたらぜひ!