仮住まいの台所で難儀しているのは、作業台が狭すぎることだ。シンクとガスコンロの間が30cm弱。愛用していた木のまな板は半分以上はみ出してしまう。作業台が狭いかわりにシンクが広いこの台所にはシンクに渡しがけできるプラスチック製のまな板が付属していたので、ほとんどの作業はこちらのまな板を使うことになった。
だが辛いのは、このまな板がかなり重たいことだ。調理中は何度も洗うので目に見えない疲れがたまる。しかも乾きが悪い。正月に出刃包丁で新巻鮭を切ったせいで、表面がかなり削れてしまい衛生面も不安が残る。
となるともうこのプラスチック製のまな板は、まな板としてではなく作業台として割り切ったほうがよいのでは、と思えてきた。プラスチックの上にまな板を置いて、調理中はそちらのまな板をがんがん洗う。
そうなると条件としては、軽くて、安定していて、場所をとらず、清潔に使えるまな板。四角いまな板はそれなりにあるので、前々から気になっていた丸いまな板に照準を定める。
四角いまな板に比べて選択肢は狭まるものの、調べてみればいろんな商品があるものだ。
丸いまな板、いったいどれがいい?
丸いまな板として有名なのは、やはり料理家の栗原はるみ氏がプロデュースしているものだろう。TV東京で放送中の「男子ごはん」で登場しており、我が台所に似つかわしくないたいへんお洒落な雰囲気をまとっており、料理をするのが楽しくなりそうなまな板である。
サイズ:小24.5cm、602g(¥3,080)
中30cm、871g(¥3,520)
大35cm、1154g(¥4,180)
厚み:1.3cm
素材:プラスチック
サイズと重さは申し分ない。ただどうしても、気になる点がある。それは穴が開いていることだ。この穴に切った小ネギが転がるのを想像するだけでストレスがたまりそう。実際、吊り下げるための穴があいているプラのまな板だとよくネギやら食材がこぼれるのだ。おしいなぁ……。
次点にきたのが、抗菌素材を使った丸いまな板だった。抗菌剤を練り込んだ素材で、その抗菌力は一生モノだというから、衛生面からすれば第一候補に躍り出た。しかもゴム製なので、刃あたりも木製と遜色ないという点も惹かれる。
唯一の難点は、この値段。一生モノとはいえ、踏ん切りがつかなかった。それにサイズ展開が乏しく、いまの自分のニーズを考えると29cmだとやや大きい印象である。
最終的に購入に踏み切ったのは、横浜中華街にある照宝がつくっている丸いまな板だ。同社の通販サイトでも販売しているが、どうしても実物が見たかったので、不要不急とは思ったが、小雨ふるなか弾丸で中華街に向かった。中華街でなにも食べずに帰ってくるなんて、生まれて初めてことである。
さすが中華の調理道具専門店とあって、照宝では3センチ刻みのサイズで丸いまな板が重ねてある。木だけでなく、プロの調理現場でもみられるプラスチック製のまな板もあったが、見た目以上に、腕が筋張るほど重たいのであっさりあきらめることにした。
まな板の厚みも二種類あったが、「厚みがあるほうが切りやすいよ」という店主を信じて、直径24cm 厚み3cm 重さ596g(自分調べ)で手を打った。
想像以上に使いやすかった丸いまな板
さっそく丸型まな板を、シンクとガスコンロの間の作業台においてみるとぴったりはまる。気持ちがよい。
手始めに、ネギやら生姜やらの薬味を切ってみたが、刃あたりもよく、ネギの青い汁も水洗いでさっと落ちた。
みじん切りなんかも、まな板を回せば食材が縦から横になってくれるから、食材に触れなくていいのも都合がいい。
作業台が濡れているとときどきまな板が貼りついてしまってとれないというプラスチックのまな板あるある事態も、吊り下げるための金具を指でひょいとつまみあげればすぐにはがれる。
軽量なため使い終わったらさっと洗って、S字フックに吊り下げておけばカビの心配もなく衛生的だ。
これはもしかしたら、すごい便利なものを手に入れてしまったかもしれない! と前のめりであれやこれやと切りまくる。
丸いまな板の使いづらい点
直径24cmのまな板だから当然なんだが、キャベツや白菜といった大ぶりの野菜はまな板からはみ出てしまうので切りづらい。とはいえ切ったそばからバットに移せばいいと割り切ることにした。
それに、大きめの丸の魚をさばくのも24cmでは無理があった。三枚におろすまでは大きなまな板ですませ、皮をひいたり切り分けたりすなら、丸いまな板でもいける。
とはいえ、軽いゆえに動きやすいので、魚を扱う際は、濡れ布巾を一枚かましてやると抜群に安定するのでオススメだ。
この照宝のまな板を使い始めてはや数ヶ月。最近ではこのまな板の登場率が100%になって、四角いまな板は棚の奥で冬眠状態だ。
はやく作業台の広い台所のある家に引っ越したいと、今日も物件探しに精を出している。