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時速1kmの思考

海の家系ラーメン

醤油ラーメン

"The only reason why we ask other people how their weekend was is so we can tell them about our own weekend."

「『週末はどうだったか?』と尋ねるのは、自分が週末の話をしたいからである」というのは小説家チャック・パラニュークの言葉らしいが、「どこのラーメンが好き?」という質問にもどこか通じるところがある。

こういうことを聞いてくるやつは、たいていラーメンのウンチクが長く、やたら自分の好みを押し付け、ようやく「どこそこのラーメンが好きだ」と答えてみれば、十中八九「あそこは麺はあーだけどスープがこうだよなぁ」とか異論を唱えてくる。
ラーメンだけで食事を完結したくない自分にとっては、退屈かつ面倒くさいトピックである。
だが別に、ラーメンが嫌いというわけではない。200%腹をくだすリスクを負ってでも家系ラーメンが食べたい時だってある。


記憶に残るラーメンといえば、葉山の海の家で食べた醤油ラーメンだ。海の家といっても、波の音をかき消す音楽に洒落たカクテル、箸が転んでもおかしいパリピが集う家ではなく、イグサのござにちゃぶ台が置かれ、瀕死の扇風機が首を振り、婆さんがスープに片指突っ込んで運んできそうな情緒あふれる昭和の海の家である。
麺はたぶん、インスタントだったと思う。具はチャーシュー、メンマ、ワカメ、ネギあたりだろうか。

よく考えたら家でつくるラーメンと変わらないんだが、潮水をさんざ飲んだあとのラーメンはなぜあんなにうまいのか。そういえばかつてビートたけし小渕恵三首相を「海の家のラーメン」と喩えたようで、その真意は「まずいと思って食べたら意外と美味かった」ということだ。たしかに、海の家のラーメンにたいした期待はしていない。そして、まずいと思ったこともない。

そうか、次から「どこのラーメンが好き?」と聞かれたら、海の家系ラーメンと答えることにしよう。
海の家系ラーメンは俄然、醤油味がいい。
もっぱら贔屓にしているのは「マルちゃん正麺」。これをきっちり袋の表示通りにつくる。ラーメンのための自家製チャーシューと、つくりおいたモヤシのおひたし、刻んだネギをぱらりとかければ、ちょうどいい海の家系ラーメン、一丁上がり。

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