人生初の北海道上陸が、まさか紋別なるとは予想だにしなかった。まさか札幌をすっ飛ばすことになろうとは。
「今日はまず、ニシオコッペ行ってさー、ぐるっと回ってみようか!」と紋別のスーパースターMさんは今日もエネルギー満タン。とても75歳には見えない快活さに連日圧倒されっぱなしである。
道路には信号がほとんどなく、ひたすらベタ踏みで雪道を運転しなくてはならないから、ドライバーは気が抜けない。後部座席に座る我々は喋ったり、ふかしたり、景色を眺めたりといいきなもんである。
どこまでも広がる雪原に生える色濃い木々、氷の砂浜に打ちかえす白い波、牛は身を寄せ合って岩のごとく佇み、キツネは当たり前にふらり散歩している。
どこを切り取ってもため息の出る車窓の眺めで、なかなか飽きない。うとうと眠ってる暇などないのだ!
標識が現れた。
西興部(Nishiokoppe)。
「ニシオコッペって西興部なんだ!」と今さら発言に車内は爆笑。
アイヌ語のオウコッペ に由来していて、川尻の合流する場所を意味するらしい。
急勾配の山道を降りていった先に、村が見えた。辺りは山の陰になっているから、まだ雪がかなり残っている。村の大通りにはオレンジと緑色を基調にした建物がならび、まるで北欧とかアイスランドにいるような気分だ。村長がドラスティックな改革をした賜物だそうで、小さな村ながらその経済は道内でも優秀なのだという。
西興部村の名産のひとつに鹿や熊といったジビエがある。Mさんがまず見せてくれたのが、鹿肉と熊肉の缶詰だ。鹿はまだしも、熊はお見かけしたことがない。話題性のある土産になりそうだ。
【販売元】西興部村養鹿研究会 事務局「田尾商店」 TEL: 0158-87-2417
次に立ち寄ったのは小さな商店。奥の冷凍庫から出てきたのは真空パックされた鹿のバラ肉で、500gで700円だ。
結局Mさんがこの鹿肉を買ってくれて、東京への土産にとアイスボックスに入れてもたせてくれた。こんなに嬉しい土産はない。
東京へ戻り、初の鹿肉料理はラグー、別名もみじラグーだ。
鹿肉の香りは猪に比べると穏やかで、鮮やかな赤身は弾力がある。おそらく肉を処理した人が相当の手練れなのかもしれない。ジビエ初心者には食べやすい肉とお見受けする。
ラグーは牛肉でつくるのと同様の手順でつくるが、いつもよりセロリを多めにしてつくった。
それにしてもこの価格でこの味。高タンパクで低脂肪な鹿肉を西興部村から直送できるルートはないものだろうか……。
鹿肉のラグー・アッラ・ボロネーゼ
材料
鹿肉 | 200g | 粗みじん |
タマネギ | 小1/2 | みじん切り |
セロリ | 小1本 | みじん切り |
ニンジン | 小1/2本 | みじん切り |
ニンニク | 2片 | みじん切り |
島唐辛子 | 1本 | 種をのぞいてみじん切り |
パンチェッタ | 30g | 乱切り |
バルサミコ酢 | 大さじ2 | |
日本酒 | 60cc | |
トマトペースト | 小さじ2 | |
ローリエ | 1枚 | |
オレガノ | 小さじ1/2 | |
タイム | 小さじ1/2 | |
ナツメグ | 適量 | |
塩・胡椒 | 適量 | |
パルミジャーノ | たっぷり | |
パスタ | 150g | ディチェコ11番 |
※赤ワインを切らしていたので、バルサミコ酢と日本酒で代用したが、結果、うまかった。
つくりかた
- たっぷりのオリーブオイルでタマネギ、セロリ、ニンジン、少量の塩を加えて揚げ炒めにする(ソフリット)。
- 一度鍋から香味野菜を取り出し、さっと拭き取ったら、オリーブオイルをさらに加え、パンチェッタ炒める。
- 鹿肉を加える。あまりガチャガチャと混ぜず、大きなハンバーグをつくるような気持ちで焼き上げる。しっかり焼けたらひっくり返し、反対側も同様。香ばしくなってきたら全体を大きくかき混ぜ、しっかり火を通す。
- ニンニクと唐辛子を加えて炒める。
- バルサミコ酢を加えて強火で酸気を飛ばす。
- 日本酒を加えてしっかりアルコールを飛ばす。
- ソフリットを加える。
- トマトペーストを加える。
- 水をヒタヒタになるまで加え、煮立ったら丁寧にアクを取る。
- ハーブ類を加えて、表面がポコポコと湧くくらいの火加減で30分以上煮る。途中、塩胡椒で味を整える。ソースが乳化してとろりとしたら火を止める。できれば常温になるまでそのまま寝かせるのが理想。
- 100gのパスタに対して湯1リットル、粗塩は10g(小さじ2)を沸騰させ、パスタを6〜7分茹でる。アルデンテより若干早めに引き上げて、温めておいたラグーで和える。水分が足りなければ茹で汁で補う。
- パルミジャーノをふりかけて出来上がり。
やっぱりパスタも手打ちにすべきだったなぁ。
konpeito.hatenablog.jp