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時速1kmの思考

飲める刺身、「快力」

魚久, 刺身, 切り落とし, お父さんのおつまみセット
快力

騒々しいカエルの合唱で目が覚めた。まだ5時前だ。猫が窓の外をじっとり眺めているので覗いてみたら、小鳥とは言えぬ、じゃあ中鳥か、くらいのサイズが数羽、喋りまくっていた。とにかくやかましい。
「茶色・鳥・うるさい」で検索してみると、正体はすぐに判明した。
ガビチョウという鳥だった。特定外来生物に指定されており、この時期はつがいで行動するという。つまりはWデートか?
よそでやってくんねーか? 


4月に入って、庭の柑橘の花が咲きはじめた。愛らしい、白い花だ。
2月に枝をだいぶ刈り込んだから心配していたんだが、問題なさそうで一安心だ。それと同時に蜂やらその他虫の往来が激しい。

納戸の庇にも蜂がいた。なにやらごそごそと勤しんでいる。目をこらすと、小さな巣がぽっこりたれ下がっていた。
柑橘の花に夢中なミツバチかと思いきや、やや大きいような気もする。まさか女王蜂か⁉︎
調べると、ミツバチは女王を独りにすることはなく、巣作りも皆でやるという。
つまりはスズメバチ系統か!これはまずいぞ!
とりあえず蚊取り線香で燻してみたがまったく効果なし。平然と・・・しているかどうかは不明だが、おかまいなしに巣作りを続行している。
しばらく観察したところで、内なる野生が囁いた。
今ならまだ、ヤレる!
防護メガネに長袖、フードをかぶりその上に帽子、マスク。左手に電撃ラケット、右手に殺虫剤を携えいざ出陣。
噴射! 逃げた! 棒で巣を壊す! 城陥落!
午前だけでぐったり疲れてしまった。ネットがなかったら、もう自分は死んでいるかもしれない。


1匹だと思っていたアシダカグモは、実は2匹我が家に住み込んでいた。この家を内見した際、手のひらほどあるアシダカグモを見て、マジ住めるのか⁉︎と怖じ気づいたこともあった。リフォームの工事でおそらくどこかへ引っ越したと思われたが、子孫なんだろうか?

玄関に侵入してくる虫を食べてくれるだろうからと同居を許し、名前をつけてやろうと話していた。ホニャララ・シスターズがいいんじゃないか、などと相談しながら、留守番を頼んで買い出しへ。
帰宅すると、一匹、仰向けで息絶えていた。シスターズじゃなくて、ライバルだったんか? 箒で外にはいた。


伊豆山の魚屋・魚久で、刺身の切り落としMIXを求め、快力に。
この料理は昔、手伝いをしていた店の板長に教わったもので、数種の刺身に山芋の千切り、ワカメ、紫蘇、大根のツマ、タデ、ワサビ、ウズラの卵、海苔を添えたものだった。各自醤油をつけて自由に食べる。

これは飲める。
これは飲める刺身だよ。

なぜ「快力」という名前なのかは不明だ。山芋は精がつくと言われているから「怪力」のほうが合ってるんじゃないかという気もするが、「こころよい」「病が治る」「すみやか」な食べものと捉えれば、「快」はしっくりくる。

熱々の白飯にぶっかければ、これまたするするネバネバ胃袋へと流れ込んでいってしまう。なんて爽快なんだ。うっかり米のオーバードーズをそそのかしてくる山芋とは恐ろしい食べ物だなと常々思っていたが、それも心配無用なことがこのほどわかった。

生のトロロは、でんぷん分解酵素を主体とした消化酵素が豊富にあるので、飯やトロロ自体のでんぷんを糖化して消化しやすくなっている

小泉武夫の『食に知恵あり』の一節だ。これからも気兼ねなく米×山芋を食えるとわかり、たいへん嬉しい。
とにもかくにも、日々降りかかる突発的な肉体労働で疲弊している自分にとって、明日への活力を養うにはこれぞ最上の食べ物だったと大いに満足し、また茶碗に白飯をよそうのである。