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時速1kmの思考

思いがけないワクチンの副反応

山うにとうふ
熊本のごちそう「山うにとうふ」

2回目のワクチンを打ち終えた。
会場は前回と同じく横浜の集団接種会場だ。5時半の予約で偶然にも一番乗りの席に通され、滞りなく事務的な手続きを終え、白い布で仕切られた問診ブースに招かれる。

「どうもこんにちはー!」
のっけから男性医師の対応は明るく、澱みのない流れる口調で問診が始まる。
「はい、大丈夫です」
最後の問いに答えると、彼のボルテージは最高潮に達したのか、「それじゃあ〜行っちゃいましょうか!」と尻上がりに叫んだ。舞台に送り出された芸人のように小走りで接種へ向かう。

接種ブースでは、これまたひときわ明るく個性的な女医が待機していた。
「こんにちは!あー痛いのいやよねぇ。早く帰りたいよねぇ。じゃあ打っちゃうね! 1回目は大丈夫だった? アレルギーないよね?」

と言うやいなや腕に針を一撃。不覚にも喉の奥から奇声が漏れてしまった。
「おおうっっっ」
1回目より格段に痛いのだ。打った瞬間からドクドクと液体が流れ込んできたのが細胞レベルでわかるし、もう針穴から痛みが滲み出してきた。

「ごめん! 痛かった? ごめんねー」
「大丈夫です! 問題ありません」
腕を負傷した一兵卒は礼を述べ、虚勢の笑みでその場を後にする。

帰りがてらふと、二人の医師が心配になってきた。
彼と彼女はもう疲弊しきっているのではないか。
二人の心のコップに入った水はもはや表面張力でもってギリギリに保たれているのではないか。

それも仕方ない。数分おきに客がやってきて、同じ質問をし、同じ行為をひたすら繰り返す毎日。さばいてもさばいても30分ごとに増殖するヒト・ヒト・ヒト。あと何人、あと何発打てば? これは罰ゲームなんだろうか。いや、そもそもなんの罰なのか。もうやってられないよ、という言葉を喉もとで飲み込む。それは決して表にしてはならぬ医師の秘事。だから自らを麻痺させるべくエンジンをフルスロットルに回しまくるのだ。

せめて今夜だけは、横浜の電飾をバックに、二人でワイン片手に滋養あるモノを食べてもらいたいと願うほどになったが、世はいまだ時短、接種は20時までに終わるのだろうか・・・そんなことに思い巡らせているうちに、帰宅。

腕は木村屋のアンパンが縫い込まれたほどあからさまに腫れあがっていた。今日ばかりは酒を絶って床につこう。

翌日はしんどくて(これが噂の倦怠感か! 初めてこの言葉と身体が重なった感覚にちょっと感動)読書すらままならず、24時間後には微熱もでて、グアムのナマコほど生産性ない一日を過ごした。

翌日。パッと目が覚めた。憑き物がとれたように爽快だ。腕は痛いが体は動かせる。しかも絶好調な青空。数日前の体とは違う。この体は進化したのだ! 適応したのだ! いま私は無双だ! そうだ買い出しへ行こう!

なまった体を動かすべく近くのスーパーへ赴く。そういえば先日のもどきなまこ素麺からろくなものを口にしてない。いったい何が食べたいか。スーパーを周遊しているうちに、またしんどさがぶり返してきた。さすがにまだ本調子ではないらしい。

目に止まったのは、ご当地グルメコーナーだ。いつもならざっと眺めて通り過ぎるが、いま欲しているのはこういった類のものかもしれない。

手に取った赤い箱には熊本名物「山うにとうふ」とある。いいね、買おう。それに紫蘇あんず。よくわからんが津軽の名物だ、買おう。これはすべてワクチンの副作用なのだから抗いようがない、として気前よくカートに入れる。
もしかしたら味覚も生まれ変わっているかもしれない。そんな期待も膨らんでいる。