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時速1kmの思考

もどきナマコ素麺

茄子, なす, 素麺, そうめん
もどきナマコ素麺と名付けたい

家人は朝早くに出社したので、ランチはひとり飯だ。何を食べようかと布団にくるまりぬくぬく瞑想・・・・・・再び目覚めた時には太陽が天高くあがっていた。

それにしても、暑い。ニュースいわく30度を超える地域もあるらしく、おおよそ10月の陽気とは思えないが、これは盛夏に買いすぎてだぶついている素麺を消費するには絶好の日和だ。

素麺だけじゃ味気ないから茄子の丸炊きでものっけよう。昨晩は色が飛んでしまっていたナスだが、一晩でぎらっと黒光りしているのをみて安堵する。

これを茹でて水でしめた素麺にのっける。さて、出汁、薄口、みりんでめんつゆをこしらえる段となって、手を止める。ひとり飯は手間をかけるべからずが鉄則なのだ。ナスの漬け汁をどぼどぼと注ぐ。白い絹糸のような麺が黒く染まり、爽やか一変やや気色悪いが、どうせナスを食べ終えたら流れていく運命、ここで使っておいたほうがなにかと経済的だ。

ビジュアル的には難ありの「茄子丸炊き素麺」だが、これがことのほかうまかったので、一気食いしてしまった。

食後に冷えたコーヒーをすすりながら、改めて写真を眺める。「バエル」「バエナイ」という基準を逸脱し、ナスが悪目立ちしている。というかグロテスクな趣もある。こりゃナスというより、ナマコだな。しかも高級なやつじゃなくて、グアムのぬるい海底でぐんにゃり寝そべっている青いやつ。
思いたって「茄子」「ナマコ」でググってみた。すると、予想外の事実に出くわした。

ナマコは「海鼠」と書く。海底をネズミのように這いずり回っているのが由来らしいが、そのナマコの一種に「海茄子」、通称「フジコ」という生物がいるというではないか。

どちらかというとナマコというより「キンコ」に近い種で、ポスト「ナマコ」として市場価値もうなぎ登りだそう。漁師としては海底で金塊を掘り当てたようなもんだ。

水産新聞によれば、干したフジコの多くがナマコの代替品として中国で取り引きされており、北海道産ものは最高級ブランドとしての地位を確立しているという。


うろ覚えなんだが、むかし中国の精進料理を追うドキュメンタリー番組をみた。中国ではこれを「素食」とか「素菜」というが、それは二つの体系に分けられるという。ひとつは、寺院で坊さんが食べる野菜を炒めたり、豆腐を煮たりといった、見た目が素材そのままの料理。もうひとつは、ジャガイモや大豆(豆腐)などで魚や肉の形や食感を模したビジュアルにする「もどき料理」だ。

日本にもこういう「もどき料理」はある。がんもどき(雁もどき)を筆頭に、マグロもどきの赤蒟蒻、うなぎもどきの豆腐の蒲焼きなどだ。

となると、このナスをのっけた素麺ももどき料理のひとつといえなくもない。
「もどきナマコ素麺」と名付けることで、なんだか一本筋が通った料理にみえてきた。

さて、今日は2回目のワクチンを接種しにいく予定だ。夜はちゃんと食べられるだろうか? まずはシャワーを浴びて準備しよう。

茄子の丸炊き

  1. ナスのヘタを落とし、包丁で縦に筋目を5本くらい入れる。
  2. シイタケの軸を落とし、鹿の子に飾り包丁を入れる。
  3. 水1Lに焼きみょうばんを小さじ1、ポン酢を少々をくわえたものに、ナスをいれてよく揉む。
  4. 水分をよく拭き取ったナスを中温の油で揚げる。
    このとき、包丁をいれた筋目が軽く割れるくらいで引き上げる。長く揚げすぎるとナスの水分が飛んで爆発しやすくなるので大変危険。
  5. 出汁:薄口:みりんを8:1:2の割合で一煮立ちさせ、ナスとシイタケを加え落としぶたと蓋をして、中火でゆっくり煮る。
  6. ナスがすっかり柔らかくなったら、そのまま冷やす。

手順3は、志の島忠氏の『日本料理四季盛付』を参考にしたものだが、色出しのためのミョウバンはわかるがポン酢がわからない。気になったので元板長に尋ねてみたところ、「ポン酢をいれるなんてきいたことねぇなぁ。でもね、色出しとかアクだしっていうのは、食材に刺激を与えることなんだよ。わざわざポン酢を使うってんなら、果汁に反応させてるんだろうなぁ」と返ってきた。
実際、ポン酢を加えても、当日のナスは色が飛んでしまったので意味があったとも思えず、いまだ答えを探している。