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時速1kmの思考

セロリの葉のかき揚げ蕎麦

「セロリが好きなんだよね」と軽はずみなことをいったばかりに、八百屋は毎週、立派なセロリの株をもってきれくれる。その葉ぶりも見事なものだから、捨てるに惜しい。
セロリの葉は、スープベジブロスサラダ要員として登板させることが多いが、この冬はさばききれない物量となっている。生食だと少々ワイルドなので、他所様には出しづらいが、かき揚げは一番クセなく食べやすいかもしれない。まぁ春菊天が好きな人ならいけると思う。

揚げたてを、温かい蕎麦にのっける。衣に出汁をじゅわっとにじませ、そこめがけてかぶりつく。独創的なセロリの香りはなりを潜め、ただただ軽やかで旨い物体になっていた。唇が油でぬらぬらしたところを間髪いれず蕎麦を啜る。控えめに言って、最高じゃないか。
副産物と捉えていたセロリの葉だが、これは昼食ラインナップの一軍に昇格内定だ。
セロリの出汁漬け」を教えてくれた魚屋の奥さん、通称「心の佳代子」にも教えてあげよう。

セロリの葉のかき揚


材料

セロリの葉 適量
薄力粉(打ち粉) 適量
天ぷら粉 大さじ4
冷水 大さじ5

つくりかた

  • 洗ったセロリの葉は水分をしっかり拭き取る。(水分が残っていると油がはねて危険。)
  • 適当な大きさに切った葉に、薄力粉を全体的にまぶす。(残った水分を吸収させるイメージ)
  • かき揚げ1つ分の葉をボウルにいれ、溶いた天ぷらの衣を大さじ2ほど加えて全体をしっとりさせ、170度の油で揚げる。

かき揚げのコツはこちらが詳しいです。ご参考まで。
konpeito.hatenablog.jp
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酸っぱくなった白菜の漬け物で酸菜白肉鍋

いつもの八百屋で白菜ひと玉120円だった。破格である。
玉が重たく、巻きもしっかりしていて良品だ。漬け物にでもしようと、えっちらおっちら持ち帰る。
二度漬けして食べ頃になったのが正月前のことだ。

おせちづくりも一段落をおえた年末。今年もまた「孤独のグルメ」大晦日SPを眺めて過ごすことになった。年を締めくくるにふさわしい、最良の選択。物語は沖縄から始まったが、なぜか台湾で年越しを迎えていた五郎さんが食べていたのが、白菜の漬け物と豚肉の鍋「酸菜白肉鍋(スヮンツァイ バイロー グォ)」だ。

台湾における白菜の漬け物「酸菜(スヮンツァイ)」は、昆布や唐辛子を使わず、塩だけで乳酸発酵させた漬け物だが、そのまま食べる漬け物というより、塩漬けした保存食の立ち位置が強いのだろう。つくりかたは東海漬け物のサイト「第38回 台湾・前篇|全国漬物探訪|東海漬物」に詳しい。水分量が韓国の水キムチに通じるところもあるし、東欧のキャベツ丸ごとザワークラウトにも似ているが、一度白菜に火を通すという工程が興味深い。

とにかく、漬けすぎた白菜の消費にもってこいではないか。ということで、正月を過ぎても白菜には手をつけず、酸っぱくなるのを待ちわびていた。
満を持して、酸菜白肉鍋にとりかかる。

五郎さんが訪れた店、長白小館のメニューによると、鍋底(スープベース)は白菜、豚肉、凍り豆腐、カニ、椎茸、かつお節、乾燥海老etcだ。具は牛、豚、羊と選べ、さらに野菜と春雨がつくセットだそう。

かつお節が入っているのが予想外だったが、今回はシンプルに昆布でいってみたいと思う。足すのはいくらでもあとからできるし、酸菜白肉鍋専門店「老舅的家郷味」のオーナー聶斌武(ニィェ ビンウー)氏も次のように話されている。

スープのだしは、豚骨、セロリ、ショウガ、タマネギの4種類を使っているが、酸菜白肉鍋のポイントはだしではなく、やはり酸菜そのものと念を押す。聶さんが自宅で作るときは、だしはとらずに、酸菜とほかの具材だけで食べるそうだ。
第38回 台湾・前篇|全国漬物探訪|東海漬物より

昆布出汁に細切りの白菜を加え、20分ほど煮立たせる。くたくたになった頃合いに他の具材を投入し、一煮立ちしたところで、豚バラをしゃぶしゃぶする。まずはそのまま食べる。うん、うまい。スープの塩気も酸味もいい塩梅だ。ただやはり、食べ続けるにはやや単調か。ソースも考えてみよう。

酸菜白肉鍋, 孤独のグルメ, 台湾, 台北, 中国酸菜白肉鍋, 孤独のグルメ, 台湾, 台北, 中国
豚バラ、白舞茸、キクラゲ、海老しんじょ

長白小館のオススメは、芝麻醤2、ニンニクソース1/2、韮菜花椒2/1という配合のシンプルなものだ。五郎さんセレクトは、ホットペッパー(辣椒醤)、醤油、豆腐乳、ニンニク、(おそらく)韮菜花椒パクチー、砂糖、ネギ、最後にレモン汁と、ほぼ全部のせだ。
白菜の発酵具合によるが、レモンはいらんだろう・・・と思うがいかに。
「100回は通わないとソースの調合は極められん。オレはまだまだ白帯だ」という五郎の気持ちは痛いほどわかる。全部いれたくなるのが旅人の人情というものだ。

ということで、我々は胡麻油とパクチー、辣油を選択。というのも胡麻ペーストを先日の火鍋で食い尽くしてしまったからだ。

酸菜白肉鍋, 孤独のグルメ, 台湾, 台北, 中国
パクチー胡麻油、辣油

牛、豚、ラムを一通り喰った五郎さんが「この鍋は豚肉に尽きる」とつぶやいた理由がわかった。白菜の漬け物の酸味が豚バラの脂身を包み込み、肉がさっぱり無限系の食べ物に昇華している。これが宇宙ってやつか。部位にもよるかもしれないが、赤身の強いラムだと白菜に負けそうだし、牛だとスープが負けてしまいそうだ。ただソースに練り胡麻をいれたら、牛とラムが一気にのし上がってくるのでは・・・・・・。

こういう実験的な飯に手をだすとき、ついつい家人の様子をうかがってしまうのは悪いクセだとは思う。静かに様子をうかがっていたが、予想以上にがっついているではないか。「うまいな、これ」と五郎さんバリに箸を鍋に突っ込んでいる。これは冬の鍋の主席になりえるポテンシャル。

とはいえ、なにより喜ばしいのは、今後は心置きなく白菜ひと玉を漬けられることだろう。明日は八百屋。白菜ひと玉買ってこよう。

酸菜白肉鍋(スヮンツァイ バイロー グォ)


材料

酸っぱくなった白菜の漬け物 1/4個分 せん切りにする。つけ込んだ唐辛子は輪切りに
昆布 5cm角ほど
ショウガ(スライス) 4枚
豚バラ肉の薄切り 200g
白舞茸 1パック
キクラゲ 適量
海老しんじょ 適量 つくりかたはこちら
薬味 適量 辣油、胡麻油、パクチー、ネギetc

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つくりかた

  1. 水に昆布を入れて弱火で煮立たせる。沸騰する前に昆布は取り出しておく。
  2. 出汁に白菜の漬け物、唐辛子、ショウガを加え、白菜がくたくたになるまで煮る。
  3. スープに酸味がうつったら、キノコや海老しんじょを火を通す。
  4. 豚肉をしゃぶしゃぶし、薬味をかけていただく。

業務スーパーの火鍋の素はガチだった

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業務スーパーの火鍋の素

全国的に寒波がくるというニュースをききつけ、薄切りの羊を買っておいた。築90年を迎える我が家はとにかく寒い。ここは火鍋で乗り越えようという目論みだ。
懐疑的だった業務スーパーの火鍋の素はかなり本格的だ。それに棗、ショウガ、ニンニクを追加している。

新入社員だった2000年代前半。火鍋にはまっていた時期があった。銀座界隈の火鍋屋に通いはじめ、それに飽き足らず家でもつくるようになり、友人と火鍋パーティを開くまでに至った。
つくりかたも難しくはない。唐辛子や花椒を脂で炒め、それに出汁とスパイス各種を放り込み、部屋中に怪しげな香りが充満したころで、スープに肉や野菜を通して食べる。

鍋の素が売られているいうことは、火鍋もすっかり定番化した証拠だろう。1月某日、熱海に偶然立ち寄ってくれた友人夫婦に馳走したところ、現場はカオスとなった。





好人家 手工老火鍋底料 4個割れ 個分け包装 手作り鍋の素

本格的な食材と香辛料をもとに伝統的な製造工程で作られた激辛鍋の素です。4割れで使いやすく、1回1割れぐらいで十分です。
内容量:約360g(4割れ、1個約90g)

キューブ状の火鍋の素2つに対して、湯は1リットル。鍋からもうもうと立ち上る痛い煙、スープは地獄のごとく赤くたぎっている。
「おぉ」と歓声があがったのも束の間。みな苦悶の表情を浮かべ、妙な奇声を漏らしながら肉をしゃぶしゃぶしている。鍋パーティというより、奇祭を見ているようだった。久々の再会につもる話もあるはずだが、発せられるのは「辛い」という言葉ばかりだ。
胡麻油のタレにくぐらせても辛さが和らぐことなく、最終的にはとっておいた和出汁を各自どばどば投入する有様。当然のことながら、薬味の辣油なんて誰ひとり手をつけなかった。
〆に振る舞った山かけごはんをかきこむ、皆の安堵の顔が忘れられない。結果、「おいしい山かけごはんをいただいた」という印象しか残らない会になってしまったようだ。

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好人家の火鍋底料:牛脂、ショートニング、唐辛子、食塩、ネギ、豆板醤、花椒、ショウガ、ニンニク、八角、シナモン、砂糖、植物油脂、ローリエ
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羊がいちばん好きだが、お好みの薄切り肉を。野菜はたっぷり。おすすめはサツマイモ

友人を自分の趣味に巻き込んで恐縮だが、あの遊びのない辛さ、しびれる辛さ。じんわりと開く毛穴。武者震い上等なビジュアル。これこそ理想の火鍋だ。一人火鍋の夢も近い。皆の苦闘うらはらに、内心ほくそ笑んでいたのは秘密にしておこう。

後日、スープを湯増しして、火鍋キューブ1つに対し湯800ccで食べる。家人に火鍋教育を施すのだ。
タレは練り胡麻黒酢と醤油。これで辛さはだいぶ軽減したようで、家人の悲鳴もワントーン落ちた。パクチーをたっぷりかければすっかり火鍋の虜だ。つくづく、食い方というのは重要だと思う。

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羊とクレソンは最強の組み合わせ。いくらでも食べられる。

〆のラーメンはもはや担々麺ですこぶるうまいが、スープを飲み過ぎると腹がゆるくなることだけが難点だ。

簡単火鍋のタレ

胡麻油:オイスターソース:黒酢:を4:1:1:1
② 日本の胡麻ペースト(芝麻酱より滑らかで食べやすい):醤油:黒酢を4:1:1

辛子味噌ラーメン赤龍に沼る

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辛味噌ラーメン赤龍

ラーメンのなかでも味噌味を格下にみている節があった。地域性や世代もあるのかもしれないが、やはりラーメンは醤油、次点は塩。そうなると味噌の出番はそうそう回ってこないのだ。そして味噌味は、なぜか途中で食べ飽きてしまうこともしばしばで、自分にとってはハードルの高い食べ物だと思っていたが、このほど味噌ラーメンに開眼した。

七草がゆの日。新年会もかねて隣人に連れていかれたのが熱海の商店街にある香蘭亭だ。行列ができる老舗の町中華で、隣人もここ10年ご無沙汰しているという。野菜炒めも餃子も、名物ヒゲにんにくもうまかったが、〆の辛味噌ラーメンは最高だった。やや太麺。口に入れたときのとんがった辛さはないが、じわじわと押し寄せる辛味。単調になりがちな味噌が、絶妙な辛さと旨味でもう一口と後をひき、箸が止まらない。スープ飲み干したころには、首筋に汗がたれていた。

味噌ラーメンはうまい。以来、うまい味噌ラーメンを求めてスーパーの陳列棚のパトロールが始まった。

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湯河原のFinds Foodで見つけた赤龍ラーメン

気に入ったのは赤龍という九州の辛味噌ラーメンだ。麺は常食にしているマルタイの棒ラーメンに近いかもしれない。豚骨ベースは得意ではないが、特有の臭いもなく、むしろ甘くてまろやかなスープに溶け出す味噌と唐辛子のバランスが絶妙なのか、最後まで飽きずに、というより夢中で食べおえてしまう。赤い沼にどっぷりだ。

スープは粉末でなく、液体の味噌だ。これがインスタント麺らしからぬ本格感を演出しているのではないか。飲んだ後の〆にこのラーメンを出すスナックがあれば、繁盛間違いなしと思う。なんせ具なしの素ラーメンでも十分にうまい。

きけばインスタントラーメンの業界ではかなり有名な商品らしく、九州出身の友人などはKALDIで箱買いをしているという。九州男児らしく、高菜の漬け物をトッピングした赤龍ラーメンの写真を送ってくれた。

自分といえばいつもの肉味噌、それにネギとほうれん草など、冷蔵庫にあったものをのせるのみ。
インスタントラーメンはランチでよく食べるので、より手軽さと香りを求めるべく、肉味噌は香味野菜をいれることにし、さらにスーパーでもらってきた牛脂をがつんと効かせる。
以下はトッピングのメモだ。ご参考までに。






ピリ辛味噌とんこつ熊本 赤龍ラーメン

乾麺・ノンフライ麺
内容量 1人前125g(めん:80g スープ:45g)×15袋入(1箱)

赤龍ラーメンのトッピング

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トッピングは肉味噌、ほうれん草、白髪ネギ

肉味噌【炸醤肉末】ジャージャンロウモー

材料
豚ひき肉 200g  
大さじ2 植物油と牛脂(スーパーでもらえるやつ)をブレンド
甜麺醤 大さじ2
紹興酒 大さじ2
濃口醤油 大さじ1
ニンニク 1片 すりおろす
ショウガ 親指第一関節ほど すりおろす
つくりかた
  • 油ならしした中華鍋に油とひき肉を加え、お玉の背でほぐすようにして炒める。ひき肉から濁った水分が出てくるので、しっかり水分を飛ばすよう炒めると、煮汁がだんだん透き通ってくる。
  • ニンニクとショウガを加えて香りがでたら調味料を加え、全体に艶がでるまで炒める。

白髪ネギ

  • 5cmくらいの長さに切りそろえた白ネギに、縦に包丁を入れて丸まった芯をぬく。(芯は他の料理に使っている)
  • ネギを絵巻のごとく開いて、繊維にそって可能な限り細く切る。
  • 水に15分ほどさらす。急いでいる場合はもみ洗いでも。

ほうれん草

  • 紫色の芯に十字に包丁を入れ、しばらく水にさらしたのち、泥など汚れを落とす。
  • たっぷりの湯で茹でて水にさらし、3cmくらいの長さに切りそろえる。

クリガニとボレロ

クリガニ, 栗蟹
クリガニの甲羅焼き

伊豆山の魚屋・魚久でクリガニを手に入れた。一杯350円。自分の手のひらよりも小ぶりだが、しっかり生きている。連れ帰ってすぐに店でもらった海水に放ち、蒲鉾を与えた。最後の晩餐になるだろう。カニ初見の黒猫を傍らに存分に観察したのち、海水をしっかり浸した新聞紙をかぶせて冷蔵庫で休んでもらう。

翌日、蒲鉾はなくなっていた。こうなると愛着がわいてくるところだが・・・・・・。「カニは生きているうちに茹でろ」というお告げにしたがい、泣く泣く熱湯に放り込む。

クリガニ, 栗蟹クリガニ, 栗蟹
クリガニ最後の晩餐は小田原の蒲鉾

今回は2リットルの沸騰した湯(1%の塩)でカニの甲羅を下にして1分ゆで、殻が真っ赤になったら一度引き揚げ急冷し、甲羅をしっかりこすり洗いして、次に1リットルの湯(1.5%の塩)で茹でた。カニを加えて沸騰させたら弱火におとし、ゆらゆらと8分茹で、最後にひっくり返して1分。

カニは身の危険を察知すると自分の脚を切り離して逃げる、「自切」という習性がある。このクリガニもご多分に漏れず脚を切り落とした。湯がく前に外にだして自由に遊ばせておいたのを悔いた。

クリガニ, 栗蟹クリガニ, 栗蟹
タワシで身体を清めているうちに遊びだした

とにかく今回のクリガニは小さい。爪の先など猫のそれと同じくらいだから、針の先に糸を通すほど、身を取り出すのが難儀だ。真っ二つに割って味噌汁に入れてしまえば話は早かったのだが、カニをさほど好きでもない家人に出しても手をだすまい。なんとか食わせるにはやはり殻をむかねばならない。
これは役務なのだ。

そういえば以前SNSで、ピアニストの友人が「商店街のイベントで、ピアノ弾いてます」と投稿していた。なぜかブリの解体ショウにあわせてピアノを奏でており、動画からはただ者ではないシュールさがだだ漏れていた。いまやミュージシャンとして第一線で活躍している彼も、人の良さうえ断れなかったんだろうと推測している。

そうだ。カニを解体するときにも音楽をかければいいんじゃないか。そう思い立ち、「カニ解体ショーの音楽をかけて」と呼びかけた。ごそごそと家人がiPhoneをいじり、流れてきたのがボレロだった。

ラヴェル作曲のこの有名すぎる音楽は、単調が売りである。フルートの音色からはじまり、以降同じリズムと旋律が繰り返される。この単調さが、地味なカニの解体にかなりマッチしていた。苦しい役務が、ボレロによって中和されていき、心が凪いでいく。
もくもくと作業がすすむ。そしてボレロはだんだんとさまざまな楽器が加わり、その音色はクライマックスに向けてがぜん盛り上がりをみせてくる。

しかし、カニの解体はまったく盛り上がらない。結局、ボレロが終わった数十分後に役務完了。
苦役の末にでた身は少ないが、甲羅に詰めるとそれなりの見栄えだ。濃厚なカニミソと味噌、日本酒を加えて練り、身を詰めた甲羅にかけてグリルで焼いた。

クリガニ, 栗蟹クリガニ, 栗蟹
ボレロにのって殻をむく

味噌の焦げた香りが部屋中に広がり、いてもたってもいられない。広島の友人にもらった日本酒、賀茂鶴を注げば万全だ。

クリガニ, 栗蟹
かにさん かにさん くりかにさん。けがにになれない くりかにさん

「かにさん かにさん」では「ケガニになれないクリカニさん~♪」と歌われている。クリガニを庶民にたとえ、毛蟹にはなれないけれど人生頑張っていこうという、やや演歌調の渋い童謡だ。
たしかに毛蟹と比べれば、身は少ないし、小さいし、食べるのも面倒だ。毛蟹の代用ってわけにはいかないだろう。けれどクリガニだって蟹味噌は濃厚で乙な味わいだ。
ほじくるのに1時間かかって、食べるの3分という刹那的食いもんだったが、多幸感をもたらしてくれる肴だった。

クリガニ,
黒猫とクリガニ