「なんでふきのとうが苦いのか、知ってる?」
「冬になまりきった身体を起こすため、かと思っていました。冬眠から覚めた熊とか食べるとか?」
「うーん、きっとそれもあるだろうね。これはお客さんから聞いた話なんだけど・・・・・・」
苦味という成分は、身体にたまった脂肪や毒素を排出してくれる効果があるんだ。
春の野菜を苦いと感じることができたということは、冬に蓄えすぎた余分なものがうまく体外へでている証拠。
逆にいえば、冬にうまいものを食べた人こそ、ふきのとうが苦いと感じるそうだよ。
たしかに、フグやら鍋やら、冬はうまいもんが多いもんなぁ。
日本の食と自然とって、うまいこと出来てるんだなぁって感心したよ
つい最近の厨房トークである。
調べてみると、ふきの苦味は「フキノール酸」というポリフェノールによるもので、これには抗酸化作用がある。カリウムには塩分や老廃物の排出を促してくれるデトックス効果がある。こうやって科学的にどうなのか? と正解を知りたがるのは私の悪い癖だ。
そんな知識よりも、春になったら苦いものを食べることを身体に覚えさせたほうがいい。熊のように。
農家直売店で手に入れたふきのとうは天然物だった。大きさがまばらだけど、キュッとツボミが締まってて、やや紫がかった姿は野性味に溢れている。その時点で、もう頭の中はふきのとうの天ぷらで一杯だった。
ふきのとうの天ぷら
ふきのとうは洗わずに、キッチンペーパーで汚れたところを落とすだけ。よほど土がついている場合は、ボウルに水を入れて振り洗いして、水気はしっかりとっておくこと。
大きなふきのとうは、根元を十字に切っておくと火の通りがよくなる。小さいものはそのままでよい。
揚げたときに花のように開かせるには、あらかじめガクを向いてツボミを露出させておくが、小さなものは必要ない。花束だって、花とつぼみがあるから美しいのだから。
刷毛で薄力粉を薄くまぶしてから、薄衣(容量比で粉と水が1:1.2くらいか。さらっとした衣)をつけて170度くらいで揚げていく。
花が咲いたように揚げるには、根元をもち、ツボミを下にして、油につけたら手を小刻み揺らしながら揚げて、数秒後に手を離すのがコツ。途中で裏返しつつ、上がってくる気泡が小さくなったらあげる。
とにかく火傷しないようには気をつけてほしい。小さなものはそのまま揚げてしまう。
天ぷらにするほどまでもない小さなふきのとうが余ったので、次は和え物を紹介したい。
ふきのとうとヤリイカの和えもの
旬のヤリイカとふきのとうを、ビネグレットソースで和えた前菜のようなもの。ふきのとうは山菜の部類に入るけれど、普通の野菜のように食べればもっと身近で可能性が広がると教えてくれたのは、フレンチのシェフだった。
ふきのとうの下処理
ふきのとうを和え物にする場合は、ちょっとした下処理が必要だ。
沸騰させた湯に塩を加えてさっと茹でたら水にさらしておく。さらしておくのは一晩中でもいいらしいが、苦味の効果を考えるとやり過ぎも禁物だろう。
アクの強い野菜には湯に酢を加えて茹でるのも効果的なので、今回はこちらを採用。茹で上がったら使うまで、水にさらしておこう。
ビネグレットソースをつくる
ビネグレットソースは、白ワインビネガーとレモンを合わせて大さじ1くらい、それに塩少々、太白胡麻油を2.5倍ほど加えてよく混ぜておく。
イカと菜花を茹でる
小ぶりのヤリイカを2杯。胴は皮をむいて筒切り、げそとエンペラは皮を残したまま一口大に切る。沸騰した湯に茶碗一杯の水をいれて温度を下げてから、イカを茹でる。半生くらいでもうまいから、とにかく色が変わったらすぐにひきあげて、ビネグレットに浸ける。
菜花は穂先だけ少量、彩りで加えることにした。こちらも塩を加えた沸騰した湯に茶碗一杯の水で温度を下げてから茹で、30秒ほどでとりだしたら内輪で仰いで急冷しておく。
仕上げ
ふきのとうの水気を軽く絞って刻み、イカと菜花を加えて和えて、器に盛る。