mogu mogu MOGGY

mogu mogu MOGGY

時速1kmの思考

名バイプレーヤー再び! 冬のポン酢のつくりかた

https://78.media.tumblr.com/1b3aa30d4708aa68129946f98797094b/tumblr_pdqw1groe51tvgyjgo3_1280.jpg

最高のポン酢のつくりかたをこのBlogで紹介したのが2018年の夏。基本のポン酢を夏用だとすれば、冬用のポン酢も紹介しなくては・・・と使命感に燃えていたにもかかわらず、どうも冬はBlog熱が冷めてしまうのはなぜだろう。寒いから、としかいいようがない。ぜひ、夏のポン酢の記事とともにご覧いただければ幸い。
konpeito.hatenablog.jp

冬のポン酢と夏のポン酢。まぁ同じポン酢なので、材料や工程はほとんど変わらないが、大きな違いが2つある。

  • 隠し味にたまり醤油
  • 焼き昆布

冬のポン酢は、河豚をはじめ、鍋料理に合わせて配合したもので、脂肪分の多い冬の食材に負けないよう、コクと旨みを補強し、よりまろやかな味わいになっている。
焼いた昆布の効果がいかなるものなのか、さっそく仕込んでいきたい。

冬のポン酢のつくりかた

例によって、家族や友人にもお裾分けしたいので業務用レベルの仕込みである。

材料 比率 備考
だいだい 1800cc(1升) 1 岸田ポン酢
濃口醤油 1620cc(9合) 0.9 ヤマサ
みりん 180cc(1合) 0.1 タカラ
たまり醤油 180cc(1合) 0.1 関ヶ原
鰹節 150g(40匁) 築地、秋山商店の鰹上削り(2番)
羅臼昆布 112.5g(30匁) 築地、有限会社フナミ

匁というのは昔の量りかたで、一匁3.75gだ。つまり、このレシピはけっこう古い。参考までに調味料のメーカーも添えておく。とにかく橙だけはクオリティにこだわりたい。






岸田ほんだいだいしぼり酢(特上ぽん酢)

内容量:1.8L
原材料:本だいだい果汁、酸味料






ヤマサ 醤油ハンディボトル

内容量:1.8L
原材料:脱脂加工大豆(遺伝子組換えでない)、大豆、(遺伝子組換えでない)、小麦、食塩、アルコール






タカラ本みりん カジュアルパック

内容量:2L





関ヶ原 たまり醤油

原材料:脱脂加工大豆、小麦、食塩、甘味料(甘草)、保存料(安息香酸Na)

昆布を焼く

https://66.media.tumblr.com/7bbe350f7c030a144e0876db8fe40333/07149c8ccef7c855-d0/s1280x1920/1627bd73ff5b4b171e3134db72cc50967227abdd.jpg

昆布の半量を、網にのせて焼く。ちょっと焦げて台所が香ばしい。

合わせる

https://66.media.tumblr.com/b6bd250642693af976a6460de37e0fe3/07149c8ccef7c855-56/s1280x1920/a0a1a4b84947f210773fac1a395cd869c9897864.jpg

清潔な鍋に、普通の昆布、焼き昆布を入れて、調味料を加えていく。
昆布に数カ所、切れ目をいれておくと昆布のエキスが出やすいのは、夏のポン酢と同様だが、今回は羅臼昆布の端切れをつかったので割愛。この昆布は、築地の乾物屋フナミのものだが、お手頃価格で品のある出汁がでるので日々の食事に重宝している。

https://66.media.tumblr.com/a2f7d9d8eb9be5cd6a4f47dc9f339849/07149c8ccef7c855-e0/s1280x1920/add47b76d9dff6c46be87c1d83a40faa3c2a1203.jpg

最後に鰹節を静かに沈めたら、冷暗所で1週間寝かせる。

漉す

https://66.media.tumblr.com/88cbc19606cce6382d975c55b68d7549/07149c8ccef7c855-a0/s1280x1920/0beae23cd4a16f9d152e949d3a09a090c3436733.jpg

一週間後、ザルを二重にして、その間にキッチンペーパーをかませて、漉す。
瓶に詰めたら出来上がりだ。

まずは、河豚刺(てっさ)で食べてみよう。ふく晴の身欠きを使っている。

河豚の刺身(てっさ)

https://66.media.tumblr.com/789e48894d32a43e7196c802b0bab34a/273d85e91ab55ba9-32/s1280x1920/c4ef3bfcc2ba962ba48e858fe7484d7ea76cd32f.jpg

皿に咲いた大輪の花。これ以上ない絶景に歓声がわいた。古道具屋で手に入れた大皿の文様が、くっきりと浮かびあがっている。
まずは河豚をポン酢にちょっとつけていただく。薄い切り身なのにしっかりした歯ごたえ。まろやかなポン酢の風味。ちょっと自慢したいくらい、よくできた冬のポン酢である。

次は、河豚にカワハギの肝を巻いてからのポン酢。濃厚さが増してトロリとした肝の食感、それでもさっぱり。これが家で食べられるなんて、感涙だ。

ちなみに、河豚につきものの紅葉おろしも手作りした。ここまできたら、とことんやっちまいたくなる。

紅葉おろしのつくりかた

https://66.media.tumblr.com/c4866a3510688b00fdba6617491f32b3/273d85e91ab55ba9-d2/s1280x1920/2ccbfdbb51ed9dda041410e22f88a3c13f857292.jpg

皮をむいた輪切りの大根の表面に、菜箸で穴を開けて、そこに種をとった唐辛子を詰める。

https://66.media.tumblr.com/482780dad8504378c036237e4c788d92/273d85e91ab55ba9-c6/s1280x1920/8e1ddf1eb59c21673a935a1a7a1598b016d0cc31.jpg

これを摩れば、紅葉おろしの出来上がり。市販の瓶詰めよりも色は薄いが、神出雲唐辛子はしっかり辛いから油断禁物。

河豚のにこごり、河豚の唐揚げを挟んで、メインは河豚と松茸の鍋だ。ここで冬のポン酢が本領発揮した。

https://66.media.tumblr.com/61838f1284ce3e6d0c1843052a12ac7d/38f3ee4817ef0561-62/s1280x1920/9a0680d71478722f8fe4540af2187754c927c8d2.jpg

鍋を食べると、焼き昆布の効果がしっかりと感じられた。鍋の食材を焼くことはあまりないから、焼いた昆布の炭っぽい香ばしさが生きてくるのかもしれない。夏のポン酢につけると、ややさっぱりし過ぎる印象だ。

〆の雑炊は小さく切った焼餅を入れる。日本酒の一升瓶も空になった。もう腹も心も一杯だ。

そして・・・冬のポン酢はついに底を尽きそうで、ただいま夏のポン酢を仕込み中。季節は巡るよぐるぐると。
konpeito.hatenablog.jp

春のヤリイカ三昧

産卵期にはいったせいか、ヤリイカがよく出回っている。冬を代表する高級イカがお手頃価格となれば、飛びつくしかない。春のヤリイカ三昧と銘打って、せっせとイカを解体するのだ。

ところで以前、スーパーの魚屋で、「ヤリイカ」と表示された「スルメイカ」が売られていた。当時はまったく気づかなかったが、並べてみるとたしかに違う。故意にやったとも考えにくいが、なんでも鵜呑みにしてはいけないなと反省したので、改めて確認しておく。

ヤリイカスルメイカの見分け方

ヤリイカスルメイカ
【左】ヤリイカ【右】スルメイカ

明らかな形の違いは、エンペラと眼球。

ヤリイカ スルメイカ
エンペラ 先が尖りダイヤ型に近い 丸みを帯びた二等辺三角形
眼球 出目 つぶら

さて、では調理開始。
まずヤリイカを捌いていくが、 その手順を理解するのにオススメなのが Nara hirokazu さんの動画。とても丁寧で、仕事も美しく、いつも生唾を飲み込みながら勉強させてもらっている。


《ヤリイカでイカソーメン》・・・・大和の 和の料理《刺身》

彼の動画には音声がないので、僭越ながら手順を説明させてもらうとこんな具合だ。

  • イカの胴の中に指を入れて、胴と内臓をつなぐ筋を切り離す。
  • 足を引っ張って、静かに内臓を抜き取る。
  • 目を取り出す。
  • 背骨(軟甲)を抜く。
  • エンペラの付け根をつまむようにして皮を剥ぐ。残った皮も取り除く。
  • 背骨があったところから半分に切り開く。
  • 胴体の内側をよく洗い、縁など硬いところを丁寧に取り除く。
  • 胴体の内側の薄皮を丁寧にむく。

エンペラとげその皮をむくかは、好みだろう。加熱するとピンク色で春らしい雰囲気もある。
では、春のヤリイカ三昧いってみよう。

春のヤリイカ三昧

https://66.media.tumblr.com/0c520f3f51ff4b741e398e908aad9531/37cbe481acca7bbb-b6/s1280x1920/dc0b180ba7f7cc5c935ddd0cdd8a0b38f3bb0187.jpg

ヤリイカ素麺(写真手前)

ヤリイカの胴体を横半分に切り、その下の部分を使った。
包丁の切っ先で、ごく細く切っていく。
肘を意識して、腕全体を使って包丁を引くのがコツ。
紫蘇をあしらい、さい箸で適量をすくって盛る。
わさび醤油で。

ヤリイカの明太子和え(写真左奥)

胴体の上の部分を使う。
やや太め、きしめんくらいの太さに切る。
明太子の薄皮を取り除き、和える。

ヤリイカの七味焼き(写真右奥)

エンペラとげそを70度くらいの湯で茹でて、白くなったら引き上げる。
イカに醤油を塗して、網にのせて焼く。すでに火は通っているので、醤油を乾かすイメージで。
七味を塗して和える。

ヤリイカの卵黄和え

https://66.media.tumblr.com/ecf8273496d894212787bdffbd12d52e/68abfda6118e4620-cf/s1280x1920/dcac02a9ff0b628cb2c8b66dfe9e085be3a80096.jpg

胴体の下の部分を使った。
イカ素麺と同じく、ごく細く切る。
まな板の上で軽くほぐし、菜箸でふんわりと盛り付け、真ん中を凹ませる。
卵黄を乗せる。
だし醤油でいただく。

ヤリイカのおろし和え

https://66.media.tumblr.com/61e4e284e806ad606a33465c6afaf174/68abfda6118e4620-10/s1280x1920/96dfc47dacb2dbf1a4ed4ba695ef3f45b7be08db.jpg

胴体の上の部分を使った。
きしめんくらいの太さに切る。
大根おろしと和える。
イクラはお好みで。なくてもよい。
さっぱりポン酢か、生醤油で。

ヤリイカのバター和え

https://66.media.tumblr.com/0db03f924afd3e7f2e35bc2a6d32d344/68abfda6118e4620-77/s1280x1920/3e131b1d731927900f2f6d2d1474e3f06b836ebf.jpg

エンペラとげそを使う。
調理自体はソテーだけれど、イカが硬くなりすぎないよう、バターで和えるイメージ。
フライパンにバターを入れて温めたら、イカを加えて、バターを絡ませながらゆっくり火を入れる。
仕上げに胡椒をほんのすこし。

ふきのとうとヤリイカの和えもの

https://66.media.tumblr.com/ce4fbc9bd282b1b500566f7adbf48241/4dbd6986b6ae8050-bb/s1280x1920/ad9add746238fd911b36af41f105a49dbb94a8cf.jpg

ヤリイカをまるごと使う。
つくりかたはこちらへ

もうしばらく、ヤリイカの季節が続いてほしい。

【暮らしの道具】理想の中華お玉を選ぶ

中華用のお玉を買い換えることにした。これまで使っていた香港製のお玉は、家人がわざわざ買ってきてくれたものだったが、つのる不満はもはや頂点に達していたのだ。

決定的な不満は2つ。

手持ちの中華鍋(リバーライト製の30cm)に対してお玉の直径が大きいのか混ぜにくいこと。これはリバーライトの炒め鍋の底が平たいのも影響しているかもしれない。

次が決定的なんだが、持ち手の木製部分が外れてしまうことだ。歯止めもなく、オモチャのようにスポッと取れる。布をかませてみたりしたけれど、やはり外れる。ついには直に柄を持っていたけれど、長さが足りなく調理中かなり熱く、まさに地獄のキッチン! 我慢大会さながらなのだ。

どうやら香港のかっぱ橋と呼ばれる卸売り市場の中で最も安いものだったそうだ。安かろう悪かろうをつかまされたのか? それともあえてこういう設計なのか、謎である。

ところがいざ買い換えようと決めてから購入にいたるまでの道のりはなかなかに遠かった。
ネットで探せばいくらでも中華お玉は出てくるものの、それを実際に触ることができないのでポチッと決心がつかないのだ。実際問題、気になるお玉が一挙勢ぞろいしている店もないだろう。

中華鍋に比べてあまりに情報が少ないので、結局購入に至るまで数ヶ月かかった。
なので今日はその長い道のりを振り返り、中華お玉の購入を検討している人の参考になればと考えている。

中華お玉を選ぶうえで注視したのは、形状、素材、容量、柄の長さである。

中華の形状〜円形か楕円形か

中華お玉の形状には円と楕円がある。
円形はどこの中華料理店にもあるオーソドックスな形状で、炒める、すくう、混ぜる、つぶす、盛るなどあらゆる作業に使える。




工房アイザワ 中華お玉 ステン

サイズ:幅10.1×奥行38.5×高さ6.9cm
素材:18-8ステンレススチール
容量:140ml
重量:192g
生産国:日本

楕円形も調理の機能という意味では同じだが、おもに四川料理に使われているようだ。もし四川料理を学ぶならもうこの一択しかないのかもしれない。

鍋との接地面が大きいので食材を混ぜやすく、かつ水溶き片栗粉を少量たらすといった細かい作業はやりやすいのではないか、と想像する。実際私も、普段使いのお玉では楕円の方が重宝している。






玉虎堂 楕円中華お玉

サイズ:135×105×365
素材:ステンレス18-8 柄は天然木(ブナ) 日本 ATY16
容量:338cc
重量:275g

ただ、炒飯を作ったらやはり楕円形、つまりオムライスみたいになるんだろうか?
まずは基本の一本が欲しかったので、今回はオーソドックスな円形を選択。

中華お玉の素材とメリット・デメリット

中華お玉の素材は大きく分けて3つ、鉄、ステンレス、その他の素材に分けられる。どの素材が自分にあっているのか、それぞれの特徴をかき出してみた。

素材 ステンレス チタンなど
メリット - 油が馴染むので、食材がくっつきにくい。
- 頑丈
- 軽い
- 錆びにくい
- 頑丈
- 超軽い
-頑丈
デメリット - 重い
- 油返しが必要
- 錆びやすい
- 鉄より頑丈ゆえに、鉄鍋を傷つけやすい
- 油が馴染まないので食材がくっつきやすい
- 価格が高い
-鉄に比べると熱伝導率と油なじみ劣る

この時点で、自分の中ではややステンレスが優位。たしかに炒飯のこびりつきは気になるものの、毎回油ならしをするのは現実的じゃない。だが、鉄製で油ならしが必要ない中華お玉もある。リバーライト製のものだ。少々値がはるが、手持ちの中華鍋とも合うので候補としては捨てがたい。






リバーライト 中華 お玉 鉄製 レギュラー

サイズ:直径10.5x全長37cm
素材:鉄(窒化熱処理済み) グリップエンド/木製
容量:140ml
重量:210g
生産国:日本

さて、ステンレスでも18-0と18-8がある。この違いは、ステンレス純度みたいなもので、18-8のほうがより高級なステンレスとなる。たとえば、スプーンのように鏡面が品質になる商品はほとんどが18-8だろう。
ただ、ネット情報によれば、より鉄を多く含む18-0のほうがこびりつきが少ないという記事もあった。これは有力情報だ。そもそも、中華のお玉にそこまで美しい輝きだとかは求めていない。

中華お玉の容量

中国では両という単位で容量を測るようで、1両40cc、お玉もそれに準じて40の倍数で構成されているようだ。だいたい4両から、つまり160ccが小さいお玉のようである。

日本製になると、160cc以下の家庭用サイズの選択肢が豊富だ。

ミニ 120〜160cc 頭径100mm以下
小  240cc  頭径100〜120mm
中  320cc  頭径120〜130mm
大  400cc  頭径130〜140mm
特大 480cc  頭径140〜150mm

お玉の直径にもよるが、30cmの中華鍋に合うのはミニ、もしくは小くらいまでだろう。

できれば容量違いを何本か持っておきたいところだが、収納の関係もある。
ちなみに主に炒飯を作ってまん丸の形に一発で盛り付けたいなら、小〜中、かつ湾曲が大きいものが向いているのかもしれない。

柄の長さ

お玉は腕の一部になるものだから、自分の体型や台所の広さなんかが大いに関係してくる。

まず注意すべきは、お玉の長さの表示の仕方がメーカーによってまちまちなことだ。柄長か全長(柄長+頭径)でだいぶ変わってくる。

次に自分の身体のサイズに合う長さ。感覚を掴むために、右手に針金のメジャーを持って、左手で鍋をあおるなんてこともやってみたところ、私の場合は35cmの柄は手に余ると感じた。とはいえ、手持ちの柄長24cmの中華ヘラはやや短いと感じていたので、全長で35cmくらいのものを探した。

結果的に購入したお玉の全長は、自分の肘下の長さにほぼ近い

理想の中華お玉

以上を総合的に考えて、ようやく購入したのが、カンダの中華お玉ミニサイズである。偶然にも、魚焼きグリルと同じメーカーだった。






Kan ステンレス ミニ中華お玉

サイズ:頭径φ95×柄長295mm、全長378mm
素材:18-0ステンレス
容量:140cc
生産国:日本

30cmのリバーライト炒め鍋と比較するとこんな感じ。

柄とお玉の部分の溶接。

バンコクで購入した全長32cmのヘラと比べてみる。

このお玉を使った中華料理第一号は、椎茸と雪菜の炒め物。地味だけどうまいのよ。

https://66.media.tumblr.com/f0dab0724ffdc2019ef33e7d1807ca84/f34247c8538b78d1-8c/s1280x1920/a4ee406e87808d9f1f06b155da875e9617070744.jpg

炒める、すくう、混ぜる、つぶす、盛る。やはりヘラとはまったく違った便利さである。
よし、がんがん使うぞ!

ふきと秀吉。おまけにお浸し。

https://66.media.tumblr.com/9abdc333243694af9959af4dc656e4ff/tumblr_ppmuxhK6Cc1tvgyjgo3_1280.jpg

ふきのとうと違って年中出回っているふき。平安時代にも栽培されていた記録があるそうだが、それを世に広めたのは豊臣秀吉だったという説がある。

そういえば、先日読み終わったばかりの吉川英治新書太閤記(九巻)にもふきの一節があった
山崎の合戦で明智光秀を討ち、ようやく姫路城に帰還したときのことだ。待ちわびた秀吉の母は、息子の好物である蕗味噌をつくろうと、雪が残る庭にでて、嫁の寧々とふきのとうを探す。
時期が早すぎたこともあり、やっとのことで見つけた12個のふきのとう。母はそれを側にいた家臣の瀬尾金五郎に分け与える。

そなたの家のご病人は近頃どうじゃの。この寒さでは持病も募ろう。蕗のとうは、痰持ちには無二の薬と聞いておる。煮るなと、汁に入れるなとして喰べさせてあげたがよい

金五の喜びは一入で、神棚に供えるほどだった。もちろん秀吉も、蕗味噌を前歯で味わうように噛みしめて、湯漬けをもう一杯おおく食べたという話。

日本の四季と家族の健康と愛を綴った美しいエピソードだった。
くさかんむりに路で蕗。昔はその辺の道端に生える雑草のようなものだろう。もともと極貧だった秀吉一族がこういった野草の効能を熟知していたとしてもなんら不思議ではない。秀吉がふきの栽培を奨励したのは、領民の健康を願ってのことなのか、それともただ自分が腹一杯になるまで食べたかったのかは謎である。

せっかくいつでも手に入るとはいっても、正直あまり料理しないふき。たいていはお浸しにするくらいなんだけど、ふきを下ごしらえするのはけっこう楽しいし、ちょっとした集まりに持っていくと、箸休めになるせいか、珍しいのか、喜んでくれる人がいるので、新春から春にかけては積極的につくるようになった。
一説によれば花粉症の症状を和らげる効果もあるそうなので、家人にも食べるよう、すすめている。

ふきの下処理

板ずりをする

https://66.media.tumblr.com/09a31373bcfe7f83bda94a0bff0d5827/tumblr_pqed997TdF1tvgyjgo1_1280.jpg

「板ずり」は野菜に塩をふってまな板の上でこすりつける和食の技法だ。キュウリはフキは発色がよくなると同時に、硬い表面を傷つけることで皮が柔らかくなる。
まな板にフキを並べて、塩をひとつかみ塗したら、手の平でごろごろ転がして5分ほどおく。
キュウリの場合はこちらを参考に。
konpeito.hatenablog.jp

ゆでる

https://66.media.tumblr.com/2415446143f691adb3dce1f123417155/tumblr_pqed997TdF1tvgyjgo2_1280.jpg

沸騰した湯に、塩ごとフキを入れて、歯ごたえが残るほどに湯がく。フキの太さにもよるけれど、30秒〜1分くらい。柔らかいのが好みなら、3分くらい。

流水にさらす

https://66.media.tumblr.com/259b9fa3d519c71cd9c3303f3a3f88c2/tumblr_pqed997TdF1tvgyjgo3_1280.jpg

筋をとる

https://66.media.tumblr.com/d7f11f776d88bf16558cb33bc9402902/tumblr_pqed997TdF1tvgyjgo4_1280.jpg

フキの切り口から、スジをひっぱるようにしてとる。バナナの皮のように、筋を途中まで引いて、何本かをまとめて剥くと気持ちが良い。
左がスジをとる前で、右がスジをとった後のフキ。垢すり前後くらいに艶が違うじゃないの。

https://66.media.tumblr.com/f83a8b9505c8906911d1e47d276a1065/tumblr_ppmuxhK6Cc1tvgyjgo2_1280.jpg

ここまで下処理できたら、水につけたまま冷蔵庫にいれておけばしばらくは日持ちするが、モノによってはアクがまわって黒く変色してしまうこともあるので、さっさと料理をしてしまおう。

今回は、ふきのお浸しをつくる。
つくりかたは二通りあって、ひとつは、調味液で短時間さっと煮たのち、フキと調味液を別々にして冷やして、最後に合体するやりかた。

もうひとつは、多めに調味液をつくって、ふきを二度漬けするやりかた。今回は後者でやっていく。

ふきのお浸し

調味液の比率は、出汁:薄口醤油:みりんを10:1:0.5の割合に塩を加える。キリッとした味わいにしたかったので、みりんを減らしたが、10:1:1でもいいだろう。あらかじめ、フキを保存する容器にふきを並べてみて、ふきがしっかり浸かる水分量を計っておくといい。

下処理したフキ 好きなだけ
出汁 500cc 出汁のとりかた
薄口醤油 50cc
みりん 25cc
小2/1〜1

つくりかた

  1. 出汁〜塩を鍋にいれて一煮立ちさせてて、鍋ごと大きめのボウルにつけて冷やしておく。これが調味液になる。
  2. ふきを適当な長さに揃えて切る。太すぎるふきは縦に2〜3等分。
  3. 浸し液の半分をふきに注いで、30分くらいおく。
  4. ふきから水分がでて、調味液が薄まるので、一度調味液を捨てて、残りの浸し液を改めて注ぎ、数時間おく。
  5. 皿に盛って、鰹節をのせる。

なぜふきのとうは苦いのか? 

https://66.media.tumblr.com/ce0b42f488a3c2244fe8ed3f3b185ab9/da6dfbc05543d340-f2/s1280x1920/c708d6b110b6e5723b55634806d129a21306cd42.jpg

「なんでふきのとうが苦いのか、知ってる?」
「冬になまりきった身体を起こすため、かと思っていました。冬眠から覚めた熊とか食べるとか?」
「うーん、きっとそれもあるだろうね。これはお客さんから聞いた話なんだけど・・・・・・」

苦味という成分は、身体にたまった脂肪や毒素を排出してくれる効果があるんだ。
春の野菜を苦いと感じることができたということは、冬に蓄えすぎた余分なものがうまく体外へでている証拠。
逆にいえば、冬にうまいものを食べた人こそ、ふきのとうが苦いと感じるそうだよ。
たしかに、フグやら鍋やら、冬はうまいもんが多いもんなぁ。
日本の食と自然とって、うまいこと出来てるんだなぁって感心したよ

つい最近の厨房トークである。

調べてみると、ふきの苦味は「フキノール酸」というポリフェノールによるもので、これには抗酸化作用がある。カリウムには塩分や老廃物の排出を促してくれるデトックス効果がある。こうやって科学的にどうなのか? と正解を知りたがるのは私の悪い癖だ。

そんな知識よりも、春になったら苦いものを食べることを身体に覚えさせたほうがいい。熊のように。

農家直売店で手に入れたふきのとうは天然物だった。大きさがまばらだけど、キュッとツボミが締まってて、やや紫がかった姿は野性味に溢れている。その時点で、もう頭の中はふきのとうの天ぷらで一杯だった。

ふきのとうの天ぷら

https://66.media.tumblr.com/3745c3485692f6ccfe56ca0e4c0413c7/da6dfbc05543d340-33/s1280x1920/ca24b1b99fcd849eb37f5b84fdfbdcd3d7c220a9.jpg

ふきのとうは洗わずに、キッチンペーパーで汚れたところを落とすだけ。よほど土がついている場合は、ボウルに水を入れて振り洗いして、水気はしっかりとっておくこと。
大きなふきのとうは、根元を十字に切っておくと火の通りがよくなる。小さいものはそのままでよい。

https://66.media.tumblr.com/b3d22a846a851aeceeaddfa79a505323/da6dfbc05543d340-bc/s1280x1920/720976ec707597de39ff15a596210f50b91c586a.jpg

揚げたときに花のように開かせるには、あらかじめガクを向いてツボミを露出させておくが、小さなものは必要ない。花束だって、花とつぼみがあるから美しいのだから。

刷毛で薄力粉を薄くまぶしてから、薄衣(容量比で粉と水が1:1.2くらいか。さらっとした衣)をつけて170度くらいで揚げていく。

花が咲いたように揚げるには、根元をもち、ツボミを下にして、油につけたら手を小刻み揺らしながら揚げて、数秒後に手を離すのがコツ。途中で裏返しつつ、上がってくる気泡が小さくなったらあげる。
とにかく火傷しないようには気をつけてほしい。小さなものはそのまま揚げてしまう。

天ぷらにするほどまでもない小さなふきのとうが余ったので、次は和え物を紹介したい。

ふきのとうとヤリイカの和えもの

ふきのとう, ヤリイカ, 菜花
ふきのとう、ヤリイカ、菜花

旬のヤリイカとふきのとうを、ビネグレットソースで和えた前菜のようなもの。ふきのとうは山菜の部類に入るけれど、普通の野菜のように食べればもっと身近で可能性が広がると教えてくれたのは、フレンチのシェフだった。

ふきのとうの下処理

ふきのとうを和え物にする場合は、ちょっとした下処理が必要だ。
沸騰させた湯に塩を加えてさっと茹でたら水にさらしておく。さらしておくのは一晩中でもいいらしいが、苦味の効果を考えるとやり過ぎも禁物だろう。
アクの強い野菜には湯に酢を加えて茹でるのも効果的なので、今回はこちらを採用。茹で上がったら使うまで、水にさらしておこう。

ビネグレットソースをつくる

ビネグレットソースは、白ワインビネガーとレモンを合わせて大さじ1くらい、それに塩少々、太白胡麻油を2.5倍ほど加えてよく混ぜておく。

イカと菜花を茹でる

小ぶりのヤリイカを2杯。胴は皮をむいて筒切り、げそとエンペラは皮を残したまま一口大に切る。沸騰した湯に茶碗一杯の水をいれて温度を下げてから、イカを茹でる。半生くらいでもうまいから、とにかく色が変わったらすぐにひきあげて、ビネグレットに浸ける。

菜花は穂先だけ少量、彩りで加えることにした。こちらも塩を加えた沸騰した湯に茶碗一杯の水で温度を下げてから茹で、30秒ほどでとりだしたら内輪で仰いで急冷しておく。

仕上げ

ふきのとうの水気を軽く絞って刻み、イカと菜花を加えて和えて、器に盛る。