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時速1kmの思考

プロ直伝! 料亭仕込みのまろやかな土佐酢

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酢が苦手な人に食べてほしい
板長の土佐酢

酢をつかった料理は、なぜか男受けが悪い。遺伝子レベルで雄は酸味に弱いとか諸説あるが、たしかに酢を好む男は周りでも少数派。
にもかかわらず板長の土佐酢は男性客の人気が高い。決定的な違いは、酸味がとてもやわらかくすっきりしていることだ。料亭時代から数十年かけて、男性でもすんなり口にはいる土佐酢を目指して試行錯誤してきた自信作だという。

土佐酢は十人十色、板前の個性が出やすい調味料だ。重要なのは「口当たり」。板長のいう口当たりとは、自分の味をつくることだ。
たとえば酸味が強いと感じたら出汁で薄めたり、逆なら酢を多めにしてみたり、その種類を変えてみるのもいい。だから土佐酢に正解はないんだが、これだけは守ってほしいという点があるという。

調味料を入れる順番を守る。

入れる順番を変えると味も変わる。和食の「さしすせそ(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)」にあるように、本来的には甘味のあるものから入れるというのが鉄則だが、●●酢という名称がつく場合はまず酢をいれる。

鰹と昆布は加減する。

鰹と昆布が強すぎると、和える食材によってはその食材そのものの味・香りが死んでしまう。あくまでも食材の味、香りを引き出すための調味料ということを忘れてはならない。
たとえば一番出汁をとるのと同じような量の鰹節・昆布を使うと、なんだか口の中がべっとりするようなしつこい土佐酢になってしまった。せっかく酢でさっぱりと思っているのにこれでは意味がない。
感覚的には半量くらいの鰹節・昆布で十分ではないだろうか。
ちなみに、水ではなく一番出汁を使った場合でも、多少の追い鰹をしたほうがいいそうだ。

土佐酢をつくろう

材料

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みりん 薄口醤油 砂糖
7合 2.5合 1合 1合 42g 8g
1260cc 450cc 180cc 180cc 42g 8g

+昆布と鰹節だ。
酢はミツカン穀物酢、薄口はヒガシマル、鰹節は築地は秋山商店の鰹上削り(2番)を使っている。ちなみに、米酢を使った土佐酢はまた配合が変わってくる。

家庭ならこの半分〜1/3で十分かもしれないがある程度日持ちするので、冷蔵庫のスペースが許すなら多めに仕込んでおきたい。夏場はゼラチンを入れてジュレにしても涼しげだ。

つくりかた

  1. 水を鍋にいれて強火にかけ、酢、みりん、薄口醤油、砂糖、塩の順番にいれ、沸騰させて酸を飛ばす。沸騰した直前から香りを嗅いでいると、だんだんと酸が弱まってくるのがわかる。
  2. 昆布、鰹節を入れて火をとめ、常温に冷ます。
  3. 静かに漉す。

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せっかくなので、板長に味見をしてもらった。板長が仕込んだのが左だ。色はほぼ同じだが、やはり味がぜんぜん違う。同じ材料を使っても火加減や入れる順番によってこれほど違うのかと驚愕した。

土佐酢を使った簡単な一品

白瓜の土佐酢和え

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雷干しした白瓜に土佐酢と鰹節をかけただけのスピード一品。これがうまい!
konpeito.hatenablog.jp

鱧ざく

鱧ざく

キュウリと玉子の土佐酢和え

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塩もみキュウリに錦糸玉子をのせて土佐酢をかける。
konpeito.hatenablog.jp

キュウリとクラゲの土佐酢和え

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土佐酢に胡麻油をひとたらしすればまた新鮮!

真鱈の土佐酢がけ

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土佐酢にカラーピーマン、紫蘇、ショウガ、ミョウガ薬味セット)を加え、片栗粉をまぶして揚げた真鱈にさっとかける。つくりかたはこちらへ。
konpeito.hatenablog.jp

カニ、キュウリ、寒天の土佐酢和え

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konpeito.hatenablog.jp

糖質2.9gの究極ロカボ飯、翡翠なす素麺

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去年の夏はGさんの畑の長茄子が豊作で、当然冷蔵庫に収まりきるわけもなく、我が家のワインセラーはナスセラーと化した。見れば見るほど珍妙な光景だったが忘れられない夏だった。人生であんなにナスを食べたことはない。
konpeito.hatenablog.jp

茄子素麺はナスを素麺に見立てた料理だ。ナスは油との相性がいいからついつい焼いたり揚げたりしがちだったが、ナスを茹でるというのも面白い。実は偶然TVで見かけた料理で、作り手である農家さんの創意工夫は底知れないなと感心するばかり。
材料はナスだけ。普通のナスでもいいし、長ナスだとより長く麺らしくなる。

ナス100gに含まれる糖質は2.9gだという。片栗粉を使うので実際は2.9g+αになってしまうが、それにしたって素麺の糖質は100gあたり24.9gだというからかなりのローカーボ。糖質制限をしている人はもちろんのこと、酒飲みのつまみとしてはもってこいの一品だ。

翡翠なす素麺

材料

ナス 好きなだけ 細切り
片栗粉 適量  
めんつゆ 適量  
薬味 適量 ショウガ、ミョウガ、海苔etc

つくりかた

  1. 大鍋に湯を沸かす。
  2. ナスの皮をむき、細切りにする。太さは好みだが、細いほど喉ごしがより麺に近くなってくる。
  3. 海水くらいの塩水に10分ほどさらしてアクを抜く。
  4. 水気をしっかりとり、片栗粉をまぶす。
  5. たっぷりの湯量で、かき混ぜながら茹でる。湯量が少ないとナスがくっついてしまう。
  6. まぶした片栗粉が透明になったらナスを引き上げる。氷水にさらしてしっかり冷えたら皿に盛る。
  7. 好みのめんつゆ、薬味でいただく。

タレは冷やしうどんの配合にした。一煮立ちさせて冷やしておく。

出汁 薄口醤油 みりん
4(120cc) 1(大さじ2) 1(大さじ2)

肉を付け合わせるとメインの一品になる。たとえば豚しゃぶなんかは相性抜群だ。
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こちらのナス料理もどうぞ

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【プロの技】薄造り

夕飯の買い出しを済ませて店に立ち寄った。ビールを飲み干し、汗がようやく引いてきたところでメールが届く。
「今日はメシいならい」

おい! 思わず目の前にいる板長に愚痴ってみる。
「せっかくイワシ買ってきたのに、帰ってこないとさ」
魚の入った容器をカウンターにおく。
「けっこういい(新鮮)じゃない。薄造りにでもしてみようか」

そうして目の前に出てきたのが鰯の薄造りだ。
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皿に大輪のイワシが咲いている。
これで1尾分、原価90円である。90円だぞ! 90円がプロの手にかかるとこうなるわけだ。ちょっといい料理屋にいけば数千円とられてもおかしくない。やはり食べる側は料理人の技術に敬意を払い、きちんと対価を払うべきなのだ。

「これをもっと美味くする方法があるよ。ちょっと待ってて」
まだ半分以上残っているイワシがさげられてしまった。
そして15分後でてきたのは、冷凍庫でキンキンに冷えたイワシの薄造りだ。半分凍っているルイベの状態だ。
口に入れてみると、冷たいイワシがとろっと口の中でとけて脂が広がる。ポン酢も爽快。こりゃもうビールを飲んでいる場合じゃない。冷酒だ! 

薄造りという技にすっかり魅せられた私は、以来魚を買ってきては薄造りに挑戦しているが、いまのところ人様に出せる代物ではない。もう一度板長の薄造りを観察したいと思っていた矢先、チャンスは訪れた。

シマアジの薄造り

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チャンス到来。板長がシマアジを薄造りにしてくれるというのでさっそくカメラをまわす。
レゲエに合わせて板長の薄造りをどうぞ。
youtu.be

注目すべきは次の三点。

  • 刃渡り全体を使ってなるべく薄く切ること(これは当たり前か)
  • 切り口の三角形(写真の赤で囲った部分)を、内側に折り込むこと
  • 折り込んだ三角形の部分を親指と人差し指で摑んだまま皿におき、包丁の切っ先で引っ張りながら盛ること

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切り口の三角形はスロー再生で何度くり返しても同じ形で、ただただ感嘆。原理はなんとなくわかったものの、やるのと見るのじゃ大違いなんだよなぁ。

【プロの技】鱧の串打ち

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店では鱧落とし(湯引き)と同じくらい人気が高いのが鱧の照り焼きだ。どちらかといえば、通はこちらを食べる傾向にあるような気がする。でもまぁ、どちらも趣が違うし、どちらもうまいことには変わりない。
konpeito.hatenablog.jp

今日は宴会。マダムたちの集いはコース料理のため、焼き物はハモでいくことになった。
おもむろにハモをとりだした板長。すでに骨切りはしてある。
「これ、串打ちしてくれる?」

素人への無茶ぶりはここ最近、板長の常套手段である。実際に鱧の照り焼きを焼いているところは何度もみたので、やってみることにした。
右手に串をもち、まな板に寝そべっているハモに左手をそっと添えて串を打とうとしたところで、

「左手で触るな!」

と檄が飛ぶ。ハモの身は柔らかく崩れやすいので、べたべたと手で触るのは厳禁なのだ。
ハモを触らずに串打ちするにはどうしたらいいのか? 
とりあえず右手だけで静かにハモの身に串を入れてみる。

「それじゃぁうまく打てないでしょ」
板長は笑いを噛みしめている。どうやらからかっているのか。東大王でもこんなの知らないと思うぞ…。

しばらく考えたがもうお手上げ。
「板長、手本を見せてください」

鱧(ハモ)の串打ち

板長は右手にありったけの、左手に2本の串をもった。
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答えはごく単純なことだった。左手の串でハモを押さえながら右手で打っていけばいいのだ。
ちなみにこういった方法を縦串といい、かならず左から打っていく。右から打つと串が手に当たり作業効率が悪いことが実際にやってみてわかった。細かいことではあるけれど、こういった小さな所作が大きな違いを生む。

では、ジャズにのせて板長の串打ちをどうぞ。
youtu.be

このあと仕事を引き継いだが、コツがわかれば素人でも出来る。身が割れやすいものの左右の端、身が厚い部分にしっかり串を通し、串全部を持ち上げてハモが落ちてこなければ問題ない。薄い部分に刺してしまうと、焼いているうちに身がちぎれてしまう。
板長は串を4本使っているが、何本でも打っていいいう。とにかく、焼いている途中に落ちないことが絶対なのだ。
仕上げに木串を金串に直角にぐし縫いしてやる。専門用語では添え串、追い串、補助串とか言うらしい。これでハモが反り返ることなく美しく焼き上がるのだ。

ハモの照り焼き

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皮のほうからハモを焼いていき、ときどき照り焼きのタレをかけ流す。これをくり返すわけだが、焼いているあいだも常に、串を指先で回していなくてはならない。焼けて身が締まった魚から串を取り外すのに苦労することになる。ハモでなくても、身がぼろぼろになることうけあい。

ハモの梅焼

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焼いたハモに梅肉を塗り遠火で乾かした料理。照り焼きのように何度も塗るのではないので調理も手軽。ピンク色のハモを前に、宴会のマダムたちからは歓声が起きた。
料理はサプライズ。今日も大成功だ。

【プロの技】鱧の骨切りと落とし

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板長が立派な鱧を仕入れてきた。
まだちゃんとした鱧を食べたことがない私に、驚きとなかば呆れ顔の板長が味見させてくれるという。
しかも目の前で調理してくれるというので、目を皿のようにして観察してきた。

鱧の骨切り

天板にごく薄塩をする。

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いざ、骨切り。
鱧は小骨が多いので、皮のギリギリまで包丁を細かく入れて骨を切っておかねば食べられたものじゃない。
実際、九州なんかでは鱧なんかたいしてうまい魚ではないからと、スーパーでは格安らしい。ではなぜ料亭で食べる鱧は高級なのかといえば、これはもう料理人の技術を食べているようなものなのだ。

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包丁は鱧専用のもので、切っ先の形状が独特である。

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とにかくミリ単位で鱧の骨を切っていくのがプロの技。

素人でもできるものか? とひとつやってみたが異次元のむずかしさ。専用包丁は重たいし、骨が固いから切ろう切ろうと意識して無駄な力が入ってしまう。ここで包丁の重さを活かして切るという基本に立ちかえるわけだが、和包丁の使い方が未熟なことがモロバレで凹む。
巷には機械で骨切り処理をしてある鱧も売っているので、素人はそちらを買った方が無難かもしれない。両方食べてみたが、やはり食感は違う。

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重ならないように天板に並べて骨切り終了。

鱧の落とし(鱧ちり)

穴の開いたお玉に鱧を皮面を下にして重ならないように並べていく。こんなに薄いものをちまちまと並べていくのか! 

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湯引きする。
皮はしっかり火を通し、身はほぼ生でなければならない。ここからがプロの技である。

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皮を均等に加熱するためにお玉をゆっくりまわしながら湯につける。そして身は瞬きする間に湯につけ氷水へ放つ。身が縮れて白い花が咲いたようである。
素人代表としてひとつやらせてもらったが、あっという間に湯がきすぎでぼろぼろの身となってしまった。鱧、すまん。

水分をふきとりレタスで蓋をして保存。ほどよく水分を保ってくれるそうだ。
本来なら客から注文が入ってからすぐに提供するのがベストだが、人材不足のための苦肉の策。

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ソースは梅肉にワサビをといたものだ。板長いわく梅肉とワサビは味が喧嘩しあってばっちりはまるという。独特な表現なんだが、食べてみるとわかるような気がする。

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噛むと上品な脂が染みだして口の中で身がほろりと崩れていく。なんと爽快な食べ物なんだろう。
ビールより冷酒が合う。而今、鍋島、スーパーくどき上手を飲みつつ、仕事の疲れが吹っ飛ぶ深夜。