これはバンコクでメキシコ料理レストランを経営しているシェフと五反田の居酒屋で飲んだときの話である。
「タイ人は、なんにでもナンプラーいれちゃうのよ」
「メキシカンでもナンプラー使ってるの?」
「まさか! 一度、タイ人の従業員がボウル一杯のナンプラーをレストランでこぼしちゃったことがあってね。もう店中がナンプラー臭くて大変だったのよ!」
「タイ人にとってナンプラーは命だよね。まぁ日本だったら醤油、味噌あたりかなぁ」
「どこにだってあるわよ。フランスだったらバターとクリーム、メキシコだったら唐辛子とライム、イタリアだったらニンニク、トマト、オリーブオイル。なんにでもいれちゃうじゃない」
「たしかに!(笑)」
どの国にも絶対外せないソウルフードってのはあるもので、ある特定の調味料さえ使えばその国の味を再現できるんじゃないか、っていう実験である。今回は夏の定番料理、焼きナスを通して世界を味をめぐってみたい。そもそもナスは野菜のなかでも古い歴史をもつらしく、各国に焼きナスという料理が存在するのは興味深い事実だった。
焼きナスのつくりかた
なにはともあれ、焼きナスをつくらないと始まらない。
- ナスのガクを取り、ガクからお尻に向かって縦に数カ所、包丁で浅く切れ目を入れる。
- ナスを直火で真っ黒になるまで焼く。
- 熱いまま皮をむく。竹串でガクのほうから、切れ目に沿ってむくとするするっととれる。
- うちわなどで仰いで急冷する。水につけるとナスが水っぽくなってしまう。
さて、では焼きナスを食べていこう。まずは日本から始める。
日本風焼きナス
長ナスを七輪で丸ごと焼いた基本形。トッピングは鰹節とショウガ。ほかにも紫蘇、ミョウガ、七味なんかは鉄板だ。醤油やポン酢で食べる。
ユッケ風焼きナス
集団食中毒事件をうけてユッケが外食産業から消えたのが2011年。その後もユッケが忘れられずつくったのがこれ。とろとろのナスがユッケもどきになる。
醤油、ショウガ、ニンニク、ゴマ油を混ぜたタレをかけ、玉子の黄身、海苔、カイエンペッパーを散らす。
アラブ風焼きナス
焼きナスをペーストにしたババガヌーシュ(Baba Ganoush)は中東の前菜としてよく食べられている。焼きナスに、タヒニ(胡麻ペースト)、ニンニク、レモン汁、オリーブオイル、塩・胡椒を合わせたものをすりつぶす。好みでパクチーパセリ、クミンなどのスパイスをいれるとより本格的。
サラダというよりもディップに近いので、私はピーマン、トマト、タマネギ、アサツキも追加し、箸でつかめるようナスも粗めに潰している。
メキシコ風焼きナス
ピーマン、トマト、タマネギ、ニンニク、ハバネロの酢漬けをトッピング。ライムと塩のタレで食べる。
ひとまずこれだけあれば1週間焼きナスの連投でも「また焼きナス〜!?」と言われることもないだろう。焼きナスの旅はまだまだ続く。
お題「晩御飯の定番」