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時速1kmの思考

薬味蕎麦

薬味蕎麦

食あたりならぬ、肉あたりをしているようだ。買い出しへ出かける回数を極力減らしているせいか、日持ちの良い肉食に偏りがちで、夜通し消化するのに想定外の体力を使っているらしく、朝目覚める頃には胃が疲弊している。
こんな時は、薬を食べるに限る。薬と言っても薬味のほうだ。ここは冷たい蕎麦にでもして心身もろもろを整えたいと思う。

一人ならば薬味だけでお釣りがくるくらいだが、在宅勤務中の家人の体がもつわけがなく、ネバ系食材でスタミナを足してごまかすことにした。

冷蔵庫を漁り蕎麦にのっけられそうなものを取り出す。
キノコ焼き浸し(油をひかずに焼いた数種類のキノコを出汁、薄口醤油、みりん、塩で味を調えたものにつけこんだもので日持ちする)、叩きおくら、鈴廣の蒲鉾、納豆、ミョウガ、山芋、小ネギ、梅干し。なんだかんだで八種類、縁起もいい。薬味はただ刻んだだけである。
麺つゆはいつもどおり、出汁と濃口醤油味醂を5:1:1で合わせて、さっと沸かして冷やしたものだ。

薬味蕎麦

konpeito.hatenablog.jp
茹でて氷にさらし、水気をしっかり切った蕎麦に具材を並べて麺つゆをたっぷりと注ぐ。悪くない景色だ。
肉っ気を抜いた割りには食べ応えもあり、梅干しの効果で消化もいくぶんスムーズに行われているようで、さっそくに薬の効き目を実感。これなら午後もうひとふんばりできそうだ。
つゆまで飲み干し、膨れた腹をなでながら食器を流し台にさげたところで眠気に襲われ、ふんばれそうもない。おとなしく布団に直行した。

軽井沢ジモティーによるブルーベリーの冷凍保存

軽井沢のブルーベリー

梅雨を引きずった七月の終わり、軽井沢の友人からブルーベリーが届いた。ダンボールを開けると枝付きのブルーベリーが1本添えられており、なんとも粋な計らいに雨模様な気分に光が差す。

本来なら友人と一緒に、軽井沢でブルーベリーを狩るはずだったが、都内の感染者が300人に届かんとするニュースを無視することはできなかった。
枝から実をひとつもぎ、口に含めば、ブルーベリー狩りの雰囲気は漂う。トルコで求めたチャイカップがしっくりきた。

軽井沢のブルーベリー

ダンボールいっぱいのブルーベリーは、一粒一粒に個性が際立つ。青かったり赤かったり紫だったりで、スーパーで見かけるやつとはひと味も二味も違う気がする。
割れてしまった実は褒美として口に放り込みながら、洗浄作業に勤しむ。

水気をとったブルーベリーはビニール袋に小分けして、なるべく重ならないよう配置して急速冷凍にかけた。先日隣人から桃をもらったことを思い出し、お裾分けに持って行ってから、友人に御礼のメールを送ると、数時間後に返事がきた。

軽井沢のブルーベリー

ジモティーは、砂糖をまぶして小分けにして冷凍してる。飲み過ぎた夜に最高のデザートです」
そういう情報は前もって教えてほしかったが時すでに遅し。

砂糖がブルーベリーの緩衝材になってくれるのだろうか? 甘味が増すんだろうか? どちらにせよ、来年は砂糖をまぶして冷凍しよう。

それにしても「ジモティー」という言葉が懐かしい。90年代半ばに使われ始めた若者言葉のようだが、そんな若者もいまではくたびれた中年、友人にいたってはアラ古希だが、軽井沢に引っ越した彼は相も変わらずの体躯と精彩を放っている。ブルーベリーのドーピング疑惑が深まるばかりだが、その効果に期待して猛暑を乗り切りたい。

糖質0g麺で気休め冷やし中華

紀文【平麺・丸麺】糖質0g麺

家人に合わせて、1日三食をしっかり食べていたところ、完全に重量オーバーだ。腹回りと太腿まわりにでてきた貫禄が否めない。
解せないのは、家人は体重をキープしているどころか、ときどき「痩せたかも」と耳を疑う独白をするのである。

在宅勤務をしている家人に比べれば、日がな一日肉体労働を強いられているのはこちら側であるというのに、解せないにもほどがある。
つくってもつくっても飯が消えていく事実に反して、「家でなにも食べさせてもらってないんじゃないか」という疑惑さえでかねない事態に、戦々兢々とする毎日である。

週末にアイスホッケーと草野球に興じている家人は、基礎代謝がだいぶ高いと見える。健康優良児でありがたい反面、飯をつくる側としては燃費が悪すぎて迷惑な話でもある。

考えてみれば、在宅勤務が始まる前の自分の昼食は、いっぱいのかけうどんだったり、パン一枚とか、そんな程度のものだった。いうまでもなく、晩酌に命をかけている自分にとって、カロリーの摂取はスロースタート気味だ。

それがいまや、寝起きからカツ丼、ラーメン、天ぷら蕎麦にパスタ……トップスピードで走り出してるもんだから、そりゃ肥えるのが自然の摂理である。

「今週は暑くなるから冷やし中華を買っておこう」と提案され、気軽に了承したものの、製麺コーナーから走ったのは、蒟蒻コーナー。いま自分に必要なのは、限りなくカロリーの低い、麺状の蒟蒻なのだ。

見つけたのは紀文の糖質0麺、カロリーにして25calである。常用しているカトキチの冷凍うどんに比べれば割高だが、背に腹は変えられず、カゴに納める。


梅雨の切れ間、ハム、錦糸玉子、トマト、カイワレダイコンを具にした冷やし中華で昼食となった。

紀文【平麺・丸麺】糖質0g麺

家人は小麦粉の麺で、自分は蒟蒻である。みためは、ほぼ遜色ない冷やし中華となった。食べてみると、昔の蒟蒻麺とはまったく違い、蒟蒻独特の臭みはなく、コシはないものの、麺としては成立している。昨今の食品技術には舌を巻くばかりである。しかも茹でなくていいという手軽さもズボラな自分には合っている。

こんな程度では気休めくらいにしかならないだろうが、気休めでもやらないよりましなはずだと自分を慰める。そして、通常の倍速で腹が減ってしまい、柿の種に手が伸びるのだった。問題の元凶は、自分を甘やかしているところにあるようだ。

渾身の焼鮭

焼ジャケ

「鮭の皮の焼き方がいつも甘いんだよ」
イラッとしながら"いつも"聞こえないふりを貫いて数年は経過している。そもそも魚・肉全般の皮を苦手としている自分にとって、鮭の皮をパリパリに焼くこと自体、あまり興味のないの人生だった。


アイヌの人々は鮭を「カムイ・チェプ」とよび、神の魚のとして崇めている。鮭に捨てるところなし。皮は衣服やブーツに加工されている。鮭の皮をはぐ工程が難しく、身が残ると生臭い靴が出来上がるそうだ。(参考:サーモンミュージアム、Maruya Nichiro)。
「お前足くせぇなぁ」「こりゃ靴のせいだよ」なんて会話が繰り広げられていたかもしれないと思うと、なんだか香ばしい。

昭和17年に出版された『鮭鱒聚苑(けいそんじゅえん)』(水産社)は、鮭の皮で装丁されている珍本だ。(開高健最後の晩餐 (文春文庫)』より)
画像検索してみると、背と角の部分に鮭の皮が施されており、渋い。編集に携わっていた者として一度は拝んでおきたいが、国会図書館でも公開しておらず、復刊が望まれる。もちろん、装丁が鮭の皮なら齧ってみたい。

調べるほどますます鮭の皮を無理して食べることに疑問がわいてくるところだが、まぁいい。今日は鮭の皮をしっかりと焼くことに専念しよう。

焼ジャケ

使う道具はおなじみの「カンダのKan焼き上手」。
塩水に漬けておいた鮭の水気をしっかり拭き取り金串に刺すと、にわかに野外感が増し気分も底上げ。
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焼ジャケ

脂身の少ない切り身を中火で焼いていく。こちらは後日、お茶漬けかパスタかおにぎりになる予定だ。

焼ジャケ

やや火を落として、カマはじくじくと皮面から焼いていく。せっかちを封印し、心静かに鮭を見つめ、無の境地に至ろうとしたとき、したたった脂で煙がもうもうと立ちはじめ、慌ててうちわで仰ぐ。換気扇にガタがきてて、思うように吸ってくれず、いろいろと気忙しい。

焼ジャケ

満を持して裏返し、手で皮を触ってみる。念には念を入れて、もう少し、焼く。こうなりゃとことんだ。

焼ジャケ

渾身の焼鮭は合格ラインにのったらしく、あっという間にバリバリと食い終わる家人。北海道の熊もこんな風にかぶりついてるのかもしれない。つられて自分も皮を齧る。まぁ、悪くない。ブニョっとはしていない。
熊は足りなかったようで、保存用の鮭にも手をつけた。



kan 焼上手 両手

サイズ:29.5×20×2.5cm/本体重量:480g

生鮭を塩鮭に

鮭の塩水漬け

焼いた塩ジャケとご飯が食べたいという家人の要望を受け、近場のスーパーへ走る。

海洋深層水仕立てが売りの塩ジャケはペラっとした切り身二枚で600円。野菜も高騰するなか、青息吐息である。海洋深層水が塩ジャケにどのような作用を与えるのか不明のまま、ふらふらと生鮭のコーナーへ流れる。

昨今はチリ産が鮭売り場を占めており、それより高額でノルウェー産のアトランティックサーモンが並ぶ。
国産では宮城県の養殖が安パイ、時期によっては北海道のものもあるが見あたらず、決めてに欠けるラインナップだったのであえなく塩鮭コーナーに逆流。

海洋深層水鮭で手を打とうとした瞬間、山積みされた隅のコーナーに目が留まる。乱雑に積まれた魚たちはドリップが漏れそうなパックもあり、捌きがまずいのか鯛アラは緑に変色。屍臭漂う、ホラー映画顔負けの死体安置所。
もう少しきれいに並べたらいいのにと、やるせない気分になる。ジェンガよろしく慎重に山を崩すと、宮城県産の生鮭アラが埋もれているではないか。驚愕の300円、奇跡的に状態も悪くない。反射的にカゴに入れる。当たりが見えた福袋は最後のひとつだった。

鮭の塩水漬け

さっそく3%の塩水と砂糖を入れて鮭をつけ、一番だしをとった後の二番昆布で蓋をして冷蔵庫で一晩寝かせる。
この一連をSNSに投稿したところ、あるフォロワーから質問があった。
「なぜ砂糖を入れるのですか?」

ローストチキンも塩と砂糖をつかったブライン液につけてるんですが、塩分の入りすぎを防ぎ、焼いたときのメイラード反応(焦げ付き具合)もきれいになりつつ身はジューシーに仕上がります。

しめ鯖でも砂糖で締めてから塩で締めるやり方がありますが、おそらく砂糖と塩の分子の大きさの違いと、砂糖のほうが水に溶けやすく(親和性)、保水&脱水作用があるので、食品に適度な水分を保ち、焼いたときジューシーに仕上がります。

人間でもポカリスェットを飲むと吸収されやすいのと一緒かなぁ。専門家ではないので、こんな答えですみません。

あくまでこれは、科学に基づかない私見である。ちなみに、塩は粗塩を使い、砂糖はきびで、塩の半量を目安にしている。
3%の塩分だと、塩っ辛い鮭というより、はんなりとした塩加減になり、鮭の旨味がよくわかる。塩分がほしくなる真夏日なんかは、4〜5%くらいでもいいかもしれない。
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