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時速1kmの思考

【Amazon Prime】EAT THE WORLD ep1. 新北欧料理 

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2004年、スカンディナビア半島で食の革命が起こった。その名も「新北欧料理(ニューノルディック・キュイジーヌ)」。

地元の食材が見直され、伝統的な調理法が復活したのだ。世界の美食家を虜にしたデンマークコペンハーゲンの「ノーマ」を皮切りに、このムーブメントは世界を席巻することとなる。

エメリル・ラガッセは、この新北欧料理の神髄にせまるべく、スウェーデン出身の人気シェフ、マーカス・サミュエルソン(Marcus Samuelsson)とともに旅にでる。落ち合ったのは、ストックホルムだ。

北欧料理は男の料理

まず訪れたのは、ニコラス・エクステッドが経営するEkstedt(エクステッド)だ。

北欧料理は、高熱と煙で調理する炎の料理だという。電気が普及し、その独特の調理法は廃れてしまったが、ニコラスは原点回帰。電気を一切使わず、燃やした薪の熱と煙ですべての調理を行っている。

トナカイの心臓のタコス

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登場するのは、ニコラスが「タイタニック」と呼ぶ手製の薫製機だ。

薫製は古くから北欧で使われる調理法で、食材の水分を高温で飛ばして短時間で乾燥させることで保存性を高めることができる。その器具もさまざま、各家庭に自家製の薫製機があるというから驚きだ。

まずはセイヨウネズを燃えさかる炎の上におき、その煙で刻んだトナカイの心臓を燻していく。セイヨウネズが独特の風味をつけてくれるのだ。その間に、鉄製のボウルを火に入れる。

カンカンに熱つくなったボウルにバターとパセリ、温燻製した心臓も入れて手早くかき混ぜていくニコラス。さらにパセリ、塩で調味し、マッシュルームを加えていく。「低温でじっくり」というのがBBQにおける定石だが、北欧では直火や熱した鉄で調理をするのだ。これをファンタジー小説になぞらえて、「ゲーム・オブ・スローン的だ」とニコラスは言う。

かたやマーカスは、北欧の伝統的な薄焼きパンを焼き始める。薪オーブンを前に、要領がつかめず焦りの表情を隠せないマーカス。焼き上がったパンを格子状の突起がついた麺棒で伸ばしていく。

薄焼きパンに熱々のトナカイの心臓、カリカリに揚げた苔、コケモモのソースをのせて、一口でかぶりつく。

わらで焼き目をつけたアカザエビ

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フライパンが発明される前の北欧では、熱した牛脂を肉や魚にかけて、表面に焼き目をつけていたという。

そしてニコラスはこの伝統的な調理法にひねり加える。熱した窯に並べられたアカザエビに藁をかけるのだ。藁のさわやかな風味をアカザエビに移そうというのだ。

牛脂をいれた鉄製の漏斗を真っ赤になるまで熱し、エビにピンポイントで脂をかけていく。かなりの重労働らしく、漏斗を必死で振るエメリルの額には汗がにじむ。

コールラビの千切りを敷いた皿に、アカザエビ、フェンネルの花粉、スイバをのせ、酢漬けのコールラビを添える。最後に、鶏ベースのソースをかけて出来上がりだ。

伝統的な調理器具を前に、まるで新しいオモチャを手に入れた子供のようにはしゃぐシェフの面々。わいわいと料理をする三人の姿がなんともほほえましいのだが、北欧料理はまさに男の料理とよぶにふさわしい側面が強く印象づけられる映像だった。

Ekstedt(エクステッド)

Humlegårdsgatan 17, 114 46 Stockholm

http://ekstedt.nu/en/ 

北欧の漁師飯

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エメリルとマーカスは、アカザエビ漁に同行するために、スモーゲンへ向かう。あられの降るなか、船上でさっそく獲れたてのエビを調理する。

湯だった大きな釜に塩、ビールを数本いれ、アカザエビを放り込む。実にシンプルで豪快な漁師の料理だ。

素材の味を活かすのが北欧料理だと、エビにむしゃぶりつく二人。マーカスはアカザエビを100匹仕入れる。

マーカス・サミュエルソンの新北欧料理

エメリルとマーカスは、ヨーテボリにあるフェスケショルカ(FESKEKORKA)とよばれる魚市場へ繰り出す。かつてのゴシック教会がそのまま使われているこの市場は、魚教会と呼ばれるそうだ。新鮮な食材に目移りしながらも、選んだのはイシビラメだ。

さらにサルハールという歴史古い市場では、乾燥熟成肉の薄切りを15枚、カレーペーストなどを買い込み、ようやく二人は料理にとりかかる。

イシビラメのミソ&ディル仕立て

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半身のイシビラメは骨ごと一人前用に切り分けておく。熱したフライパンにヒラメをおき、焼き目をつける。焦がしバター、レモン、ディル、隠し味の味噌を追加し、スプーンでソースを魚にかけながら、ていねいにソテーしていく。

黄色いソースを散らした皿にイシビラメをおき、そしてカレー粉、バター、ディル、胡瓜などで和えたエビをのせる。

見るからに洗練された一品だ。ディルはやはり北欧料理の要となるハーブなんだろう。

牛肉とアカザエビのだんご

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叩いた極薄の牛フィレ肉に、茹でたアカザエビとマッシュルームおく。

そこでマーカスがおもむろに取り出したのが、モロッコのスパイスだ。コリアンダー、クミン、シナモン、ターメリック、ジンジャーなどがブレンドされた辛くないスパイスである。

団子状に丸められた牛フィレ肉はスープ皿におかれる。熱いエビの出汁をかけて、牛肉が半生になったところをいただく。

スウェーデンは移民の国だ。マーカス自身も生まれはエチオピアだ。さまざまな人種が共存するこの国を表したような一品である。

「移民がもたらした文化をいれる」のが、マーカスの考える新北欧料理なのだ。

まるで鯛茶漬けのような発想のひと皿。食材を活かして調理を最小限におさえる日本料理との共通点を見出せる。

ゆでた魚卵

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茹でたイシビラメの魚卵に、酸味(pickled)のソース、チリオイル、鮭類の魚卵(トビコのようだ)、すり下ろした西洋ワサビをのせる。なんとも酒の肴にふさわしい一品だ。

NORDA ノルダ バー&グリル

www.nordabargrill.se


豪快でいて繊細。シンプルでいて複雑。相反するのものがひと皿に融合された新北欧料理を堪能した。ぜひAmazon Primeで味わっていただきたい。

【Amazon Prime】EAT THE WORLD ~エメリル・ラガッセと世界を食す~

ひょんなことからAmazon Primeに入会することになった。目的は買いものだ。WOWOWに入会しているので、プライム・ビデオには興味がなかったんだが、ふっと「深夜食堂」が見たくなって、ドラマ版から映画まで一気に見てしまった。

たしかに、WOWOWとはまた違った楽しみが、プライム・ビデオにはある。せっかくだからお試し期間をたっぷり楽しむことにする。

そして何気なしに見始めた「EAT THE WORLD~エメリル・ラガッセと世界を食す~」にすっかりはまってしまったのだ。

エメリル・ラガッセは、アメリカでは大変有名なカリスマシェフで、TV番組で活躍するほか、著書や受賞歴も数々あるそうだ。全米で自らのレストランを展開し、専門はケイジャン料理だ。

周りを明るくさせるお茶目でコミカルな中年男だが、真摯に料理に向き合い、涙もろい感激屋の一面もある。その人間くささが彼の魅力のひとつだ。

Essential Emeril: Favorite Recipes and Hard-Won Wisdom From My Life in the Kitchen

Essential Emeril: Favorite Recipes and Hard-Won Wisdom From My Life in the Kitchen

 

本作は、そんな彼が友人のトップシェフたちとともに、世界のあちこちで食べまくるドキュメンタリー番組である。舞台となるのはスウェーデン、中国、スペイン、韓国、イタリア、そしてキューバ。ただ食べるだけでなく、道中では各地の食文化や歴史を探ったり、料理をとおして現地の料理人と交流をはかったりする姿が描かれている。

だがやはり、メインは料理だ。深夜に見るには非常に危険な番組だ。やたらに腹が減ってくるのだ。そしてトップシェフたちがおしげもなく披露する調理の技術は、ただ漠然と見ているだけでも興味深い。

なにより家庭料理がワンランクアップするようなヒントが随所に出てくるから、いますぐにでも「料理したい」気分になってくる。イタリアの回ではアクアパッツァが登場するのだが、シンプルな素材と調理の隠し味に魚醤をいれるという本場の味を真似したところ、家人にも好評だった。

旅に出たら一度はいってみたいレストランの情報も満載だ。ぜひともAmazon Primeで味わっていただきたい、おいしい番組なのだ。

1. 新北欧料理(スウェーデン

konpeito.hatenablog.jp

 登場する料理
  • トナカイの心臓のタコス
  • わらで焼き目をつけたアカザエビ
  • イシビラメのミソ&ディル仕立て
  • 牛肉とアカザエビのだんご
  • ゆでた魚卵

2. 小籠包(中国) 

konpeito.hatenablog.jp

 登場する料理
  • 子牛の脳みそのラビオリ
  • 豚肉の小籠包
  • 蟹と豚肉の小籠包
  • マリオの小籠包(ウナギ、マッシュルーム、ハーブ)
  • エメリルの小籠包(エビ、豚肉、ナズナ

3. モダニスト料理の巨匠たち(スペイン) 

konpeito.hatenablog.jp

 登場する料理
  • ハモン・イベリコの鶏卵素麺載せ
  • ウナギの薫製
  • ファバダ・デ・プレンデス
  • アーモンドのムース

4. 料理の啓蒙(韓国)

konpeito.hatenablog.jp

 登場する料理
  • メウンタン
  • 焼肉
  • 焼き豆腐の漬物添え
  • 干し柿のサラダ
  • テンジャンチゲ
  • チキンウィング
  • BBQシュリンプ

5. 世界一のピザ(イタリア)

konpeito.hatenablog.jp

登場する料理
  • アンチョビのアクアパッツァ
  • コラトゥーラのスパゲッティ
  • アンチョビのフライ
  • イル・ソーレ・ネル・ピアット

6. 禁断のキューバキューバ

konpeito.hatenablog.jp

 登場する料理
  • ロブスターのクリームライス添え
  • 子豚のロースト
  • アヒアコ・スープ
  • ロパビエハ
  • 豆の煮込み
  • カボチャの花のフリット
  • ダーティ・ライス
  • 豚のモホソース

グアム最強のティナクタックバーガーにかぶりつく—ピカズ カフェ(Pika's Cafe)

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2016.02.01 初出
2017.02.12 更新(2017.01.21に再訪。「グアム最強のティナクタックバーガー」を末尾に追記)
2018.01.18 更新(Information追記)

グアム人の、グアム人による、
グアム人のためのPika's Cafe

「このあいだ12時ごろに行ったら、1時間以上待たされたよ!」

そう言いながらも、グアムの数あるレストランのなかでも彼の一押しが、ピカズ カフェ(Pika's Cafe)だ。新鮮な地元食材とひねりを効かせたチャモロ料理を求めて、昼どきは行列がなす超人気店だ。

少し時間をずらし、閉店一時間前の2時頃に入店すると、15分ほどで席に案内された。とはいえ、やはり満席だ。営業時間も7:30〜15:00という潔さである。時間に余裕をもって訪れたほうがよさそうだ。

人気なのは、2011年のグアム・バーガーフェスタ(Guam Burger Festa)でグルメバーガー部門第2位に輝いた、ティナクタック・バーガー(Tinaktak Burger)だ。ティナタックとは牛バラ肉を野菜とココナッツで煮込んだチャモロの代表的な料理のひとつ。

グアム出身のオーナーLenny Fejeran 氏が「グアムが詰め込まれたサンドイッチ」と言うのもうなずける。ただ情けないことに連日の肉料理で胃袋が疲れ気味である。

そこで胃袋と相談して頼んだのが海老のラップサンド(Shrimp Club*) $12.50だ。海老、アボカド、トマト、ベーコン、ロメインレタス、チリのアリオリがトルティーヤで包まれている。

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ぷりぷりに火入れした海老、歯切れの良いしゃきしゃきレタス。さすが、農家と契約して野菜を吟味しているだけある。華奢なラップサンドに見えて、じつはかなりのボリュームだ。

天国か地獄か
激辛ディナンシェ・ソース

横に添えられているホームメイドのディナンシェ・ソースつけると、飛び上がりたくなるくらい絶品だ。じつにパンチが効いたこのソース、ちょっとつけるだけで天国(もしくは地獄)へと直行できる代物だ。

ステーキのブリトー(Cali Steak Burrito)($12.50)にも合う。柔らかくマリネされた肉が断然引き締まる。箸が…いや手がとまらなくなってしまった。

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“Eat Local. Buy Local. Support Local!”

オーナーのLenny and Pika Fejeran 氏は、Kitchen Lingo のプロデュースも手がけている。このふたつの店が共通するスローガンがこれ。

Eat Local. Buy Local. Support Local!

両店舗ともに、野菜が肉や魚貝といったメイン食材を引き立てているので、飽きることなく食べ続けることができる。やはり十数年前に比べると、グアムは食を通して確実に活気に満ちてきたようだ。

2017.1.21 再訪
グアム最強のティナクタックバーガー

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気合いをいれてデデドの朝市へ行くはずが、すっかり寝過ごしてしまった。

そしてえらく腹が減ってきた。そうだ、Pika's Cafeへ行こう! 時計の針は12時をまわりっている。混雑を覚悟して店にはいったが、週末のせいか、店内は地元客ばかりで穏やかな様子だ。

まず運ばれてきたのが海老のラップサンド。また同じものを頼んでしまったんだが、うまいものはうまい。ほんのりレアに焼き上がった海老はぷりぷりで最高だ。追加で頼んだドニソースをたっぷりつける。安定と納得の味。

そして待ちに待ったティナクタックバーガーの登場。見た目は豪快、ハンバーガーといってもバンズは白いチャパタなので、特大のパニーニといったところか。

何より驚いたのは、通常牛バラ肉でつくるティナクタックが、ハンバーグの形になっていることだ。しかもその特大のパテはうっすらピンク色で焼き加減は絶妙。

両手でがっしりと掴み、したたり落ちるソースをよそにかぶりつく。

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これはうまい! 思わず興奮してしまった。口いっぱいに頬張りすぎて声にすらならなかったが、目は口ほどに物を言う。それにしてもこの何とも言えないフレーバーはなんだろう?

インゲンにタマネギ、ローストしたトマト、そしてココナッツミルク。香りの秘密はこれだ! ココナッツ独特のひつこさはまったく感じない。むしろふわっと香るココナッツが食欲をMaxにまで加速させる。

なんて独創的なハンバーガーなのか。これぞまさに「グアムを詰め込んだハンバーガー」だ。

食べきれなかったら持って帰ろうだなんて、考えが甘かった。ふわふわの軽いパンが功を奏したのか、あっさりと完食。食べ終わる頃には、店は満席になっていた。のんびり寝坊モードの週末はここからが本番だ。

Information

Pika's Cafe

場  所:888 N. Marine Corps Drive #114 Upper Tumon, Guam 96913
営業時間:月〜土曜日 7:30〜15:00
Facebook@pikascafe
Instagram@pikascafe
WEBhttps://www.pikascafeguam.com/

グアムで食べる、古き良きアメリカ料理 — スリー スクエア(Three Squares)

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 「そろそろチャモロ飯は飽きたよ。いわゆるアメリカンなブランチが食べたいなぁ」

予想通りの展開で笑ってしまう。候補リストのなかから絞り込み、スリースクエア(Three Squares)へ向かうことにした。まだ新しいのだろう。小ぎれいな平屋の建物は、いかにもアメリカのダイナーといった外観だが、看板に掲げられた白とボルドー色のロゴが妙にシックだ。

店に入るなり、心が躍った。白い壁にヘリンボーン柄のテーブル、天井から垂れ下がる無数の裸電球、そしてバーカウンターを照らす「3つの四角形(Three Squares)」。右手には3つの四角い窓から活気あふれる厨房の様子が見える。キッチン側は全面黒板の壁になっていて、チョークの文字が躍っている。遊び心が満載で、まさに憧れの部屋といった内装だ。

“さりげない”が心地いい

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席につくと、とびきり明るい声の女の子がやってきた。

「サムです。このテーブルの担当です!」

太めのキャットアイラインをひいた色白で小顔のサムは、小悪魔的魅力に溢れていて、思わずその笑顔に目を惹きつけられる。

こんなに居心地のよい店ならビールで喉を潤したいところだが、車なので断念。メイソンジャーのような今流行りのガラスのタンブラーに入った水が運ばれてきた。薄切りのレモンが入っているのが嬉しい。なんせこう日差しが強いとビタミンCが不足する。

テーブルに置かれた小さなガラス瓶にはバジルの葉。バジルってところがいい。バジルは適当に枝を切って水に浸けておけば、みるみるうちに成長する。食卓に彩りをそえてくれる名脇役だ。これみよがしの花でなく、さりげないもてなし心を感じる。

古き良きアメリカ料理

メニューは大きく3つ。スターター(Square One)、バーガー、サンドイッチと朝食(Square Two)、キッチン スペシャル(Square Three)である。

そのほかに、サラダと飲み物、黒板には本日のスペシャルメニューも書かれている。価格は6〜16ドルだ。

デンバーオムレツ(Denver Omelet, $9.50)

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しっかりと焼かれた巨大なオムレツに挟まれているのは、ベーコン、ハム、パプリカ、タマネギ、とどめのチェダーチーズと具沢山。見るからに腹持ちがよさそうである。

デンバーオムレツの起源は19世紀末にまで遡るが、当初は具入りのスクランブルエッグをパンで挟んだ「ウエスタン・サンドイッチ」と呼ばれるものだったという。

西部開拓者たちが身近にある食材でつくったとか、中国の移民が大陸横断鉄道の労働者のために中華オムレツをパンに挟んだとか、イタリアの移民がデンバーの街角で屋台を出したのだとか。

諸説あるものの、1950年代にこのサンドイッチが新聞で紹介されると、朝食の定番としてアメリカ中に広がっていったが、いつしかオムレツだけで提供されるようになり、発祥の地の名を冠してデンバーオムレツと呼ばれるようになった。

どの説が正しいにせよ、ロマン溢れるアメリカの息吹を感じる卵料理じゃないか。その無骨な姿は、古き良きアメリカを体現したひと皿である。

付け合わせは、フライドライスかポテトをお好みで。

フライドチキン&ワッフル(Fried Chicken & Waffle, $11.00)

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このワッフルは実に絶品だ! ワッフルメーカーの購入を検討したいくらい、はまりそうな予感さえする。

一時期、日本でも流行ったワッフルは、生地が甘いえうえに歯にくっつくような噛み応えがあり、好きになれなかった。そういえば、あれはベルギーワッフルだった。

この店のワッフルは、外はカリッと、中はふわふわ。甘さは控え目で、パンケーキに近いから、食事としての役割をしっかり果たしてくれる。

添えられたメープルシロップホイップクリーム、バター、ジャムを組み合わせて楽しんだが、おすすめはやっぱりメープル&バターの王道だ。

フライドチキンは少し残念だった。バリっとハードに揚がった衣の食感は申し分ないが、下味が薄く、スパイシーでもない。ケチャップをつけて食べるのだろうけれど、終始ケチャップを食べている気分になるのだ。ただ、子ども連れも多い店なので、配慮の末の味つけなのかもしれない。

Three Square のひみつ

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店のあちこちを飾る3つの四角形のモチーフ。サムに尋ねてみると、どうやら軍隊の食事に関係がありそうだ。

そもそも英語の慣用句には、 (a) square meal という言葉があるらしい。

Square は square meal の省略形で、「十分な量で栄養のある美味しい食事」という意味合いがある。

たとえば、have three square meals a day で「1日3回食事をする」という意味になる。たしかに店の柱には「Eat Three Square Meals, Breakfast, Lunch, Dinner」と大きく書かれている。店の営業時間は朝8時から夜10時までだから、納得がいく。

でも軍隊とはどういう関係があるだろう。square meal の起源を調べてみると、これまた諸説あるからややこしい。

かつて英国海軍の船員が四角形の木製皿で食事をとっていたからとか、中世に使われていたトレンチャー(trencher)という皿をのせる四角形の木製板が由来だとか、四角いパンの上に食事をのせていただとか……。

いちばん有力な説として、かつてのアメリカ軍では、食事を口に運ぶときに肘の角度を正しく保ちながら、腕で四角形を描くように規則正しく食べる習慣があり、そこから食事のことを Square と呼ぶようになった、というものだ。

マーク・トウェインは、著書『イノセント・アブロード(The Innocents Abroad),1869』のなかで、square meal はカリフォルニアのスラングだと言及している。

34章トルコ風呂のくだりにこうある。

Thier hungry eyes and their lank forms continually suggested one glaring, unsentimental fact-- they wanted what they term in California "a square meal."*1

彼らの飢えた目と痩せ細った身体つきは、明らかに感傷的でない一つの事実を絶えず示していた。つまり、欲しいのは、カリフォルニアで「スクエアミール」と呼ぶものなのだ。

初版が1869年、つまり大陸横断鉄道が開通した年だ。これまた西部開拓時代とともに国中に広がっていった、アメリカ食文化のひとつなのかもしれない。

なんだか混沌としてきた……とにかくこの「three squares」は、朝・昼・晩としっかり食事をとりましょう、というアメリカの食文化を表す独特の言葉なのだということで、腑に落ちることにしよう。

Information

Three Squares

場  所:416 Chalan San Antonio, Tamuning, 96913 Guam

営業時間:月曜日   8:00〜17:00
     火〜日曜日 8:00〜22:00
Facebook@threesquaresguam
Instagram@threesquaresguam
WEBhttp://www.bgpacific.com/

グアムBBQ界のニューウェーブ—アス スモークハウス(Asu Smokehouse)

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チャモロビレッジには、さまざまなレストランがテイクアウト専用の屋台を出店している。以前紹介したテリーズ ローカル コンフォート フード(Terry's Local Comfort Food)もしかり。

なかでもグアム在住の友人が強く薦めるのが、スモークBBQの専門店、アス スモークハウス(Asu Smokehouse)だ。

いわゆるBBQソースに漬け込んで網焼きするBBQではなく、ドライラブで燻製にしているのがこの店の売りだ。2014年の「グアムBBQブロックパーティー(Guam BBQ BLOCK PARTY)」では、牛肉と豚肉部門でチャンピオン・グリルマスターの栄誉に輝いたと言うから、どうしたって期待は高まる*1。名物は、長時間燻されたブリスケット(brisket)と呼ばれる牛の肩バラ肉。

週始まりだからだろうか。チャモロビレッジには穏やかな時間が流れ、人もまばら。独特な小鳥のさえずりが響いている。突風にあおられて舞い落ちるプルメリア。ビーチはあきらめて、ここで食事しよう。

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燻製BBQの実力は!?

注文したのは、名物のブリスケットとポークベリーのコンボ(Smoked Beef Brisket & Smoked Pork Belly Combo, $12.75)だ。

チャモロビレッジ内の他店と比べると、少し割高に感じるだろうか。グアムらしくもなく、レッドライスも小盛りだなのだが、燻された肉の香りがふわっと鼻腔をくすぐり、撮影しながら生唾を呑み込んでしまう。

牛ブリスケットの燻製(Smoked Beef Brisuket)

美しく切られているブリスケット。牛肩バラ肉は脂身の少ない淡泊な肉質ではあるが、フォークで刺すと崩れてしまうほど柔らかい。肉本来の旨みが凝縮されているのか、噛むほどにうまい。塩味は薄めなので、特製のBBQソースをつけて食べる。

ここではたと気づく。この肉をサンドイッチにしたら最高なんじゃないか?

映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」に登場する、真っ黒にスモークされたビーフブリスケット*2を思い出したのだ。13時間じっくり燻された肉を前に、みな手が止まらなくなるが、息子の提案によりスライダーとなるのだ。よし、グアムでおいしいパン屋を探さなければ。

豚バラ肉の燻製(Smoked Pork Berry)

豚バラ肉の皮は真っ黒なのだが、焦げたわけではない。この黒い部分が絶品なのだ。とにかくうまい。個人的には、ブリスケットよりも好みだ。

ほろほろ肉とぱりっとした豚の皮を口に放り込み、ゆっくり噛むと、甘味のある脂がじゅわっと口の中に広がり、見事なフレーバー。ブリスケットよりも下味が濃いので、BBQソースもいらない。むしろこの香りがよい味になっているので、必要ないといってもいい。

人によっては脂身が強いと感じるかもしれないが、酸味の強いコールスローが口の中をさっぱりさせてくれるはずだ。

「ここのBBQはうまいわ!」
なんと珍しい。BBQ嫌いがそう言うのだから、間違いない味だったんだろう。

Information

Asu Smokehouse

場  所:Chamorro Garden Apartments, Sgt. Roy T. Damian Jr. St, Hagåtña, 96910 
営業時間:水・金曜日 11:00〜14:00、17:00〜21:00(ナイトマーケット、Following GovGuam Payday
     上記以外  11:00〜14:00
     日曜定休
Facebookhttps://www.facebook.com/asu.smokehouse
Instagram@asu_smokehouse

*1:ちなみに、鶏肉部門の優勝者はメスクラだった。詳細はこちら。

*2:テキサスの州都オースティンの「フランクリン・バーベキュー」。