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時速1kmの思考

【Amazon Prime】EAT THE WORLD ep3. モダニスト料理の巨匠たち

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モダニスト料理、前衛料理、あるいは分子ガストロノミーなどと呼ばれる分野がある。
なんと呼ぶにせよ、まっ先に思い浮かんだのが、世界を魅了したスペインのエル・ブジだ。というのも、「エル・ブリの秘密 世界」というドキュメンタリー番組を見ていたからだ。

エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン [DVD]

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皿に載せられた料理は、もはやその食材そのものの原型はなりを潜め、料理というより、アートだ。すべてが緻密に計算されたあっと驚く仕掛けに、食事はエンターテイメントに昇華する。2011年、惜しまれつつも閉店したエル・ブジだが、モダニスト料理の父フェラン・アドリアの活動は続いていた。

スペイン出身の巨匠ホセ・アンドレスを案内役に、エメリル・ラガッセはフェラン・アドリアに会いにいく。

モダニスト料理は伝統の延長線上にある

アストゥリアス州の州都オビエドの大聖堂の前でホセと再会したエメリル。さっそく腹が減ったと意気投合する二人は、街へ散策にでかける。オビエドの歴史は中世初期にまで遡る。その影響はいまだ街に色濃く残り、チーズやモルシージャなど伝統食材を売る専門店が軒を連ねている。その様子を、ホセは「刺激的だ」と言う。

ここでは伝統が新しいものを生む。ルーツをたどることで今の自分がわかる。そして未来に向かう。モダニスト料理は伝統の延長線上にある。

まず案内されたのが、チョリソー、モルシージャをはじめ、さまざまな伝統食材を扱っているAramburuだ。漂うハモン・イベリコの空気を大きく吸い込む二人。

ハモン・イベリコは、ドングリを食べて育ったイベリコ種の黒豚を乾燥・熟成させた生ハムで、豚肉の王様とも呼ばれている。脂肪もたっぷりで、口の中でとろけるのが特徴だ。(ちなみに白豚でつくったハムはハモン・セラーノだ。) 店員が薄切りしているハモン・イベリコを見て思いついたホセ。即興で料理をつくりはじめる。

ハモン・イベリコの鶏卵素麺のせ

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鶏卵素麺(ウエボ・イラド)は、14世紀にこの土地伝わってきた食材だ。福岡にも同様の菓子があるが、その起源はお隣のポルトガルだ。卵黄を熱したシロップの中に糸状に流し入れると、髪の毛のように細い錦糸玉子になるのだ。

ハモン・イベリコにウエボ・イラードを載せて、ホセがエリメルに食べさせる。思わず抱き合う二人。

Aramburu

aramburu-asturias.es

アストゥリアス料理の女王

アストゥリアス州の郷土料理といえば、ファバダ・アストゥリアーナだ。豆と豚肉の煮込んだもので、古くから伝わる家庭料理だ。ホセがファバダの聖堂で法王に会わせると、車を郊外へ走らせる。

カーサ・ヘラルド(Casa Gerardo)ミシュランの星に輝く、135年の歴史を誇る名店だ。1970年代に流行したヌーベル・キュイジーヌに刺激されたオーナーのペドロ・モラン(Pedro Moran)は、伝統的なスペイン料理を現代風にアレンジすることに情熱を燃やす。父の情熱は息子マルコス・モラン(Marcos  Moran)にも引き継がれ、現在は彼が料理長だ。

ウナギの燻製

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厨房の大きな水槽には、無数の魚が泳いでる。ウナギの稚魚、アングーラだ。スペインでは、昔からウナギの稚魚を食べる習慣がある。一般的には、缶詰や冷凍で売られていて、オイルで煮た「angulas(アングラス)」が有名だ。

キャビア同様に稀少な食材であり、世界的にウナギの収穫量が減っていることも影響して、近年では高騰しているため、巷のバルではグーラ(gula)という代用品で調理されているほどだ。あの水槽一杯でいくらするのだろうと、震撼してしまう。

今回は、それを生きたまま調理するというマルコ。斬新な調理法で繊細な風味と食感を味わおうというのだ。ブランデーグラスの中を縦横無尽に泳ぎ回るウナギの稚魚。そこに燻製した大人のウナギを入れ、数種のエビでとった熱いコンソメを一気に注ぎ入れる。暴れ出すウナギの稚魚が、あっという間に白くなってしまう。

「まるで海を食べているようだ」とエメリル。そしてまたハグする二人。ホセはうまいものを食べるとハグとキスをする癖があるようだ。

ファバダ・デ・プレンデス

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伝統的な家庭料理であるファバダにも、モラン流のコツが満載だ。通常は乾燥した白いインゲン豆(ファバ・デ・ラ・グランハ)を使うのだが、モラン家の人々は、秋に収穫して冷凍保存しておいた生の豆を使う。これがポイントの一つだ。

大鍋に豆、水、オリーブオイル、パンチェッタ、そして別の鍋で5分茹でて余分な脂を落としたチョリソーとモルシージャを合わせて、15分煮る。その間、フライパンにオリーブオイルを熱してタマネギ、パプリカパウダーを炒める。

大鍋にはサフランを入れ、鍋をゆする。かき混ぜてはいけない。豆が割れてしまうからだ。赤ちゃんのように大事に扱うことがポイントだ。炒めたタマネギを大鍋に移し、また鍋ごとゆすり、蓋をしてごく弱火で40分ほど煮る。豆を舌の上にのせたら、舌と上あごの間で潰すことができるくらいに煮るのが最大のポイントのようだ。

アストゥリアス料理の女王と呼ばれるこの料理。伝統的には一緒に煮た肉を豆の中にいれて食べるが、今回は横に添えてある。自由に食べればいいのだ。

今の料理をつくっているんだ。昨日の料理は作れないし、明日の料理もムリだ。今日の料理を作る。明日も今日になる。

Casa Gerardo

Carretera AS-19, Km. 9, 33438 Prendes, Asturias,España

Restaurante Casa Gerardo | Uno de los restaurantes más prestigiosos del Principado

モダニスト料理の父に会う

バルセロナモダニスト料理を語るうえで重要な街である。1980年代、世界最高峰のシェフ、フェラン・アドリアが料理革命を起こし、前衛料理が誕生したのだ。フェランはエル・ブジでの食事を映画や絵画の鑑賞に喩え、食事を芸術の域にまで高める。

エル・ブリの一日―アイデア、創作メソッド、創造性の秘密

エル・ブリの一日―アイデア、創作メソッド、創造性の秘密

  • 作者: フェランアドリア,ジュリソレル,アルベルトアドリア,Ferran Adri`a,Juli Soler,Albert Adri`a,清宮真理,小松伸子,斎藤唯,武部好子
  • 出版社/メーカー: ファイドン
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 大型本
  • 購入: 3人 クリック: 14回
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 若かりし頃のホセも、フェランの影響を強く受け、門戸を叩いたシェフの一人だ。しかし2011年7月30日、エル・ブジは閉店する。

「CERRAMOS EL BULLI PARA ABRIR EL BULLI(私たちはエル・ブジをオープンするために、エル・ブジを閉店する)」

料理界に衝撃が走った。1日15時間働く生活を25年間も続けてきたフェラン。休業を宣言したのは、「創造性の枯渇を恐れたからだ」という。そして現在、フェランは「エル・ブジ ファウンデーション」なる料理の研究機関を開設し、再始動している。

地下鉄の通路のような暗い建物の扉を開けると、太陽が降りそそぐかのように対照的な光の下、小柄の男がで二人を迎える。フェラン・アドリアだ。その顔はとても穏やかで、あのドキュメンタリー番組で見られた鋭い眼差しとは別人のように見える。

白を基調とした室内は、まるで大学のセミナールームのようだ。平然と並ぶテーブル、パソコンの前で作業をしている人々は静かな熱気に包まれている。そこかしこに図表やアート、写真が飾られ、いわゆる調理道具といったものは見あたらない。

ここでは料理に関するすべてを研究している。料理人はもちろんのこと、哲学者、歴史家、生物学者社会学者など、さまざまなバックグラウンドを持った人々が集まり、創造性とはなにかについて解析しているのだ。研究の対象は料理ではあるものの、その多様性が可能性を広げるとフェランは言う。

フェランがエメリルに質問をする。

トマトとは? どう理解する? トマトは何だ?
どう新種をつくる? どうやって育てる? 
どう売る? インターネットか、それとも市場か? 
知識は調理を助ける。
すべてを知ることはできない。
3000種類のトマトがあるからだ。

このひとつひとつに、即座に答えられる人がいったい何人いるだろう? 飽くことない探求心にただ圧倒される。そしてその食に関するすべての情報を、惜しみなくみなと共有したいというのも、フェランの懐の深さだろう。

「ブジペディア(Bullipedia)」という史上最大の料理百科事典をつくろうというのだ。原始時代から現在まで、食と料理に関するすべてを分類・整理し、収集した情報を世界と共有して新しいアイデアや料理、料理人を育てるのが目的だ。

この研究所自体、彼の夢そのものなのだろう。エル・ブジは健在だ。感謝の言葉を述べながら涙を抑えるエメリルは、「ゼロからやり直したい気分だ」と声を詰まらせる。

ホセがフェランの言葉をなぞる。

彼は、目的があって店を閉めた。
彼は、多くを知ったと思っていた
いろんな技や料理も生み出した
― 無知だった(フェラン)
でも本当は何も知らないと気づいた
― 最高の発見だ(フェラン)

「もしも(What if)」の追求

エル・ブジを閉めた日、別の店はやらないと決めたフェラン・アドリア。ファンとしては少々残念なことではあるが、同店で23年間料理人を務めた実弟アルベルト・アドリア(Albert Adrià)がその革命の伝統を引き継ぎいでいる。

鉄製の門をくぐり抜けると、まるで秘密基地のような薄暗い空間が広がっている。ここがアルベルトが総料理長を務めるエニグマだ。エニグマとは、「謎」「なぞなぞ」「パズル」などを意味する言葉だ。

創造性というのは二割がひらめきで、六割が情熱だ
人生と同じだ

アルベルトがある実験を始める。イカスミに水、ゼラチンを加え、バットに流し込み、バーナーで炙り板状にする。そのイカスミの紙を切り、何かを巻いていく。詳しくは明かされないが、何か新しい食感を試しているようだが、これこそフェランの伝統だ。

アーモンドのムース

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卵とゼラチンを撹拌してつくるミルクムースに、香油を注入し、パルメザンチーズをかけたひと品。亜酸化窒素を使って食材をムースに加工するエスプーマの技術が使われているのだろう。軽くて手の中で溶けてしまいそうだというエメリルに、ホセの語るストーリーが面白い。

五番街を歩いていて、目の前に雲が現れたとする
腹が減っていたので、思わず口を開けて雲にかじりつく
それがパルメザン味だったら最高だ

誰もが考えそうで考えない。というよりも、純真な子供のような発想である。パルメザンが子供受けするかどうかは疑問だが。モダニスト料理のカギは「もしも(What if)」の追求にあるのだ。

モダニスト料理は、創造性とアイデアの蓄積だ。実験を繰り返し、限界に挑戦するシェフたちに感銘を受けるエメリル。

技術を磨くだけでは不充分だ
努力が必要だと再確認したよ

そう旅を振り返り、エメリルとホセは乾杯する。

Enigma

Carrer Sepúlveda 38-40 08015 - Barcelona

elbarri.com

【Amazon Prime】EAT THE WORLD ep2. 小籠包

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マリオ・バターリ(Mario Batali)は手打ちパスタの名人としてNYのイタリアン業界を牽引するシェフだ。豊かな体躯に派手な金髪。皮肉混じりのジョークを交えて豪快に笑う姿は、いかにもイタリア系のおっさんだ。

グリニッジ・ビレッジのバッボ(BABBO)でエメリル・ラガッセを迎えたマリオは、さっそく祖母直伝のラビオリをつくる。ラビオリは皮と具のバランスが重要だと力説するマリオ。太い指で小さなラビオリをていねいに包んでいく。

いわゆる小麦粉の皮で具を包んだ料理は、世界中にある。スペインのエンパナーダ、ロシアのピロシキ、そしてはマリオが愛してやまないのが、中国の小籠包だ。

ラビオリに舌鼓を打ちながら、マリオがおもむろに取り出したのは、上海小籠包ガイドブック(The Shanghai Soup Dumpling Index by Christopher St. Cavish & Ailadi Cortelletti)だ。

小籠包の重量や皮の厚さ、具とスープの割合など、その構成が図解で科学的に分析されている。紹介されているのは、上海で選りすぐられた店ばかりだ。二人は最高の小籠包を食べるべく、上海へ飛ぶ

子牛の脳みそのラビオリ

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丁寧に仔牛の脳みそを潰していくマリオ。滑らかになった脳みそに、飴色になるまで炒めたタマネギ、黒胡椒、パルミジャーノ*1、脳みその20%のリコッタ・チーズを加え、自家製のパスタに包んでいく。

Babbo

110 Waverly Place, New York, NY 10011
http://www.babbonyc.com/

尊客来(Zun Ke Lai

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街中にあふれる中国語に右往左往するものの、ようやくたどりついたのは尊客来、ガイドブックによれば、最高点の小籠包を出すという。上海一の小籠包を決めるポイントは、皮、フィリング(具とスープの量)、独創性だ。

豚肉の小籠包(Xian Rou Tnag Bao)

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まずは、皮の薄さ、皮と具のバランス、弾力性をみようと、レンゲにのせた小籠包をじっくりと観察する二人。皮を少しかじってスープをすする。

「コクがあるな」「少し甘いよな」とさっそく批評が始まる。そして、記念すべき一つ目の小籠包を同時に口に入れる。

「すばらしい」と思わず声を漏らす。

マリオは小籠包を手づかみし、具の重みでその極薄の皮が垂れ下がっている様子を注意深く眺めている。エメリルは小籠包の皮を剥がし、スープの状態を見る。豚の味もしっかりしているし、スープの割合もいいと、気に入った様子だ。

だがそこにマリオが疑問を呈す。「もう少しスープが多い方がよくないか?」

皮の薄さは上海一だと豪語するシェフのグー・ダン・シェン(Gu Dong Sheng)。20年前と変わらない秘伝のレシピでつくられている餡は、その調理も信頼できる家族だけが担当し、門外不出である。

木の麺棒で次々に生地が伸ばされ、目にもとまらぬ早さで小籠包が包まれていく様子に驚く二人。なんせ5秒に一つ、1日に1万6000個、すべて受注生産されるというのだ。肉に混ぜ込んだゼラチン状のスープが、蒸すことで溶け出すという小籠包の仕組みを知り、舌を巻くの二人だった。

尊客来

上海市徐匯区天鑰橋路666号

r.gnavi.co.jp

佳家汤包(JIA JIA TANGBAO)

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次は上海で一番の人気店だ。24席とかなり狭い店内ではあるが、毎日1万2000個が手作りされている。慣れない大衆店のせいか、気を紛らわすようにブラックジョークを連発するマリオ。ほどなく小籠包が運ばれてくる。

カニと豚肉の小籠包(Xie Fen Xian Rou Tnag Bao)

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熱い小籠包をさっそく手で摑むマリオ。皮が厚く、サイズも大きいが、それがこの店の売りでもあるようだ。舌を火傷しながら、エリメルはまたもや小籠包を分解しはじめる。「スープは少ない、豚の風味もあまりしない、繊細さが足りない」と、なかなか辛口な批評だ。

豚肉の小籠包(Chun Xian Rou Tang Bao)

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ここで流暢な英語を話すオーナーのジョウ・チャン(Zhou Qiang)が豚肉の小籠包を運んでくる。小籠包の食べ方が違うと二人に指摘する。

小籠包の正しい食べ方は、皮を少しかじり、スープはすぐには飲まない。スープをレンゲに流し、冷ましてからいただくのだ。

突然のオーナーの登場に、手の平を返したように小籠包を褒めまくる二人。安物のコップでも最高にうまいと、ビールで乾杯をする。

佳家汤包

上海市黄河路90号

www.shanghainavi.com

上海古猗園餐庁(Guyi Garden Restaurant)

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最後に二人が訪れたのが、元祖小籠包を掲げる店だ。店内は客で活気に満ちている。6代目の店主リ・ジャンガン(Li Jiangang)は、約150年前の1871年に考案されたレシピを代々守り続けている。一番人気は豚肉の小籠包だ。20人のスタッフで一日に3〜4万個つくるという。ヒダの数は18と厳密だ。

豚肉の小籠包

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店主が見守るなか、小籠包に口をつける二人。そして、ただ頷く。そして、オーナーもまた頷く。その眼差しは、料理人がだけがわかる互いへの尊敬の念が感じられる。

「ナンバーワンだ!」

皮から溢れ出す豚皮と鶏骨からとったスープが絶品だ。これこそ味の決め手。いろいろ食べてきたけれど、やはり元祖にかなうものはないと太鼓判を押す二人。

小籠包対決

エリメルとマリオは古くからの友人だが、家族旅行も一緒に出かけるほどの仲だ。そして旅の恒例行事のひとつが料理対決なのだ。

場所を厨房に変え、二人の小籠包対決が始まった。市場で買った食材を使い、思い思いの小籠包をつくりはじめる。

だが百戦錬磨の二人も、小籠包を包むとなると、一筋縄ではいかない。まったくうまくいかず、料理長のチェン・ハイ・ユン(Chen Hai Yun)は遠慮なくダメ出しをする。なんとか小籠包を蒸しあげ、スタッフが集まり評論会が始まる。

ウナギ、マッシュルーム、ハーブの小籠包/マリオ作

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エメリルに定番具材の豚肉をとられてしまったので、鰻を使うことにしたマリオ。見た目は正統派の小籠包に仕上がっている。卵白を使ったエリメルに対し、「俺は使わない」と頑なに自分を貫いた小籠包。スタッフには好評だ。

エビ、豚、ナズナの小籠包/エメリル作

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エビ、豚、野菜など、オーソドックスな具材を使っているが、豚足、エビの殻、ハーブなどを使ったクレオール風スープに小籠包をいれるという逆転の発想で勝負する。

だが、スープが美味いものの、肝心の小籠包が薄味だと批評される。「薄味の小籠包とこのスープは最高の相性だ」とからかうマリオ。小籠包を通して親交を深めるシェフたちの笑顔が印象的だ。

この経験を活かして、ラビオリを改良しようと、意気揚々に夜の上海の街を歩くマリオとエメリル。

上海、最高!

上海古猗園餐庁

上海市嘉定区南翔鎮宜公路218号 

http://www.guyigarden.com/

 


小籠包を見ているうちに、食べたくなってしまったので、つくってみることにした。

スープをゼラチン状にして細かく切るという工程があるものの、餡は餃子や焼売のそれとさほど変わらない。

やはり包むのがなかなかに難しかった。ヒダの数を18にそろえようとしてもうまくいかない。不細工なのもいくつかあったが、蒸し上げたら素人ながら小籠包の形にはなっていた。

何でもやってみるものである。なにより外でしか食べられないと思っていた小籠包が家でも食べられると知った家人は大喜びである。

https://68.media.tumblr.com/d0daed56f3731ca759cc5940342e5ea9/tumblr_olrply1mtm1tvgyjgo2_1280.jpg

*1:字幕では「最高のチーズ」となっているが、バターリは「King of Cheese」と言っているので、おそらくパルミジャーノのことだろう

【Amazon Prime】EAT THE WORLD ep1. 新北欧料理 

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2004年、スカンディナビア半島で食の革命が起こった。その名も「新北欧料理(ニューノルディック・キュイジーヌ)」。

地元の食材が見直され、伝統的な調理法が復活したのだ。世界の美食家を虜にしたデンマークコペンハーゲンの「ノーマ」を皮切りに、このムーブメントは世界を席巻することとなる。

エメリル・ラガッセは、この新北欧料理の神髄にせまるべく、スウェーデン出身の人気シェフ、マーカス・サミュエルソン(Marcus Samuelsson)とともに旅にでる。落ち合ったのは、ストックホルムだ。

北欧料理は男の料理

まず訪れたのは、ニコラス・エクステッドが経営するEkstedt(エクステッド)だ。

北欧料理は、高熱と煙で調理する炎の料理だという。電気が普及し、その独特の調理法は廃れてしまったが、ニコラスは原点回帰。電気を一切使わず、燃やした薪の熱と煙ですべての調理を行っている。

トナカイの心臓のタコス

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登場するのは、ニコラスが「タイタニック」と呼ぶ手製の薫製機だ。

薫製は古くから北欧で使われる調理法で、食材の水分を高温で飛ばして短時間で乾燥させることで保存性を高めることができる。その器具もさまざま、各家庭に自家製の薫製機があるというから驚きだ。

まずはセイヨウネズを燃えさかる炎の上におき、その煙で刻んだトナカイの心臓を燻していく。セイヨウネズが独特の風味をつけてくれるのだ。その間に、鉄製のボウルを火に入れる。

カンカンに熱つくなったボウルにバターとパセリ、温燻製した心臓も入れて手早くかき混ぜていくニコラス。さらにパセリ、塩で調味し、マッシュルームを加えていく。「低温でじっくり」というのがBBQにおける定石だが、北欧では直火や熱した鉄で調理をするのだ。これをファンタジー小説になぞらえて、「ゲーム・オブ・スローン的だ」とニコラスは言う。

かたやマーカスは、北欧の伝統的な薄焼きパンを焼き始める。薪オーブンを前に、要領がつかめず焦りの表情を隠せないマーカス。焼き上がったパンを格子状の突起がついた麺棒で伸ばしていく。

薄焼きパンに熱々のトナカイの心臓、カリカリに揚げた苔、コケモモのソースをのせて、一口でかぶりつく。

わらで焼き目をつけたアカザエビ

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フライパンが発明される前の北欧では、熱した牛脂を肉や魚にかけて、表面に焼き目をつけていたという。

そしてニコラスはこの伝統的な調理法にひねり加える。熱した窯に並べられたアカザエビに藁をかけるのだ。藁のさわやかな風味をアカザエビに移そうというのだ。

牛脂をいれた鉄製の漏斗を真っ赤になるまで熱し、エビにピンポイントで脂をかけていく。かなりの重労働らしく、漏斗を必死で振るエメリルの額には汗がにじむ。

コールラビの千切りを敷いた皿に、アカザエビ、フェンネルの花粉、スイバをのせ、酢漬けのコールラビを添える。最後に、鶏ベースのソースをかけて出来上がりだ。

伝統的な調理器具を前に、まるで新しいオモチャを手に入れた子供のようにはしゃぐシェフの面々。わいわいと料理をする三人の姿がなんともほほえましいのだが、北欧料理はまさに男の料理とよぶにふさわしい側面が強く印象づけられる映像だった。

Ekstedt(エクステッド)

Humlegårdsgatan 17, 114 46 Stockholm

http://ekstedt.nu/en/ 

北欧の漁師飯

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エメリルとマーカスは、アカザエビ漁に同行するために、スモーゲンへ向かう。あられの降るなか、船上でさっそく獲れたてのエビを調理する。

湯だった大きな釜に塩、ビールを数本いれ、アカザエビを放り込む。実にシンプルで豪快な漁師の料理だ。

素材の味を活かすのが北欧料理だと、エビにむしゃぶりつく二人。マーカスはアカザエビを100匹仕入れる。

マーカス・サミュエルソンの新北欧料理

エメリルとマーカスは、ヨーテボリにあるフェスケショルカ(FESKEKORKA)とよばれる魚市場へ繰り出す。かつてのゴシック教会がそのまま使われているこの市場は、魚教会と呼ばれるそうだ。新鮮な食材に目移りしながらも、選んだのはイシビラメだ。

さらにサルハールという歴史古い市場では、乾燥熟成肉の薄切りを15枚、カレーペーストなどを買い込み、ようやく二人は料理にとりかかる。

イシビラメのミソ&ディル仕立て

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半身のイシビラメは骨ごと一人前用に切り分けておく。熱したフライパンにヒラメをおき、焼き目をつける。焦がしバター、レモン、ディル、隠し味の味噌を追加し、スプーンでソースを魚にかけながら、ていねいにソテーしていく。

黄色いソースを散らした皿にイシビラメをおき、そしてカレー粉、バター、ディル、胡瓜などで和えたエビをのせる。

見るからに洗練された一品だ。ディルはやはり北欧料理の要となるハーブなんだろう。

牛肉とアカザエビのだんご

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叩いた極薄の牛フィレ肉に、茹でたアカザエビとマッシュルームおく。

そこでマーカスがおもむろに取り出したのが、モロッコのスパイスだ。コリアンダー、クミン、シナモン、ターメリック、ジンジャーなどがブレンドされた辛くないスパイスである。

団子状に丸められた牛フィレ肉はスープ皿におかれる。熱いエビの出汁をかけて、牛肉が半生になったところをいただく。

スウェーデンは移民の国だ。マーカス自身も生まれはエチオピアだ。さまざまな人種が共存するこの国を表したような一品である。

「移民がもたらした文化をいれる」のが、マーカスの考える新北欧料理なのだ。

まるで鯛茶漬けのような発想のひと皿。食材を活かして調理を最小限におさえる日本料理との共通点を見出せる。

ゆでた魚卵

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茹でたイシビラメの魚卵に、酸味(pickled)のソース、チリオイル、鮭類の魚卵(トビコのようだ)、すり下ろした西洋ワサビをのせる。なんとも酒の肴にふさわしい一品だ。

NORDA ノルダ バー&グリル

www.nordabargrill.se


豪快でいて繊細。シンプルでいて複雑。相反するのものがひと皿に融合された新北欧料理を堪能した。ぜひAmazon Primeで味わっていただきたい。

【Amazon Prime】EAT THE WORLD ~エメリル・ラガッセと世界を食す~

ひょんなことからAmazon Primeに入会することになった。目的は買いものだ。WOWOWに入会しているので、プライム・ビデオには興味がなかったんだが、ふっと「深夜食堂」が見たくなって、ドラマ版から映画まで一気に見てしまった。

たしかに、WOWOWとはまた違った楽しみが、プライム・ビデオにはある。せっかくだからお試し期間をたっぷり楽しむことにする。

そして何気なしに見始めた「EAT THE WORLD~エメリル・ラガッセと世界を食す~」にすっかりはまってしまったのだ。

エメリル・ラガッセは、アメリカでは大変有名なカリスマシェフで、TV番組で活躍するほか、著書や受賞歴も数々あるそうだ。全米で自らのレストランを展開し、専門はケイジャン料理だ。

周りを明るくさせるお茶目でコミカルな中年男だが、真摯に料理に向き合い、涙もろい感激屋の一面もある。その人間くささが彼の魅力のひとつだ。

Essential Emeril: Favorite Recipes and Hard-Won Wisdom From My Life in the Kitchen

Essential Emeril: Favorite Recipes and Hard-Won Wisdom From My Life in the Kitchen

 

本作は、そんな彼が友人のトップシェフたちとともに、世界のあちこちで食べまくるドキュメンタリー番組である。舞台となるのはスウェーデン、中国、スペイン、韓国、イタリア、そしてキューバ。ただ食べるだけでなく、道中では各地の食文化や歴史を探ったり、料理をとおして現地の料理人と交流をはかったりする姿が描かれている。

だがやはり、メインは料理だ。深夜に見るには非常に危険な番組だ。やたらに腹が減ってくるのだ。そしてトップシェフたちがおしげもなく披露する調理の技術は、ただ漠然と見ているだけでも興味深い。

なにより家庭料理がワンランクアップするようなヒントが随所に出てくるから、いますぐにでも「料理したい」気分になってくる。イタリアの回ではアクアパッツァが登場するのだが、シンプルな素材と調理の隠し味に魚醤をいれるという本場の味を真似したところ、家人にも好評だった。

旅に出たら一度はいってみたいレストランの情報も満載だ。ぜひともAmazon Primeで味わっていただきたい、おいしい番組なのだ。

1. 新北欧料理(スウェーデン

konpeito.hatenablog.jp

 登場する料理
  • トナカイの心臓のタコス
  • わらで焼き目をつけたアカザエビ
  • イシビラメのミソ&ディル仕立て
  • 牛肉とアカザエビのだんご
  • ゆでた魚卵

2. 小籠包(中国) 

konpeito.hatenablog.jp

 登場する料理
  • 子牛の脳みそのラビオリ
  • 豚肉の小籠包
  • 蟹と豚肉の小籠包
  • マリオの小籠包(ウナギ、マッシュルーム、ハーブ)
  • エメリルの小籠包(エビ、豚肉、ナズナ

3. モダニスト料理の巨匠たち(スペイン) 

konpeito.hatenablog.jp

 登場する料理
  • ハモン・イベリコの鶏卵素麺載せ
  • ウナギの薫製
  • ファバダ・デ・プレンデス
  • アーモンドのムース

4. 料理の啓蒙(韓国)

konpeito.hatenablog.jp

 登場する料理
  • メウンタン
  • 焼肉
  • 焼き豆腐の漬物添え
  • 干し柿のサラダ
  • テンジャンチゲ
  • チキンウィング
  • BBQシュリンプ

5. 世界一のピザ(イタリア)

konpeito.hatenablog.jp

登場する料理
  • アンチョビのアクアパッツァ
  • コラトゥーラのスパゲッティ
  • アンチョビのフライ
  • イル・ソーレ・ネル・ピアット

6. 禁断のキューバキューバ

konpeito.hatenablog.jp

 登場する料理
  • ロブスターのクリームライス添え
  • 子豚のロースト
  • アヒアコ・スープ
  • ロパビエハ
  • 豆の煮込み
  • カボチャの花のフリット
  • ダーティ・ライス
  • 豚のモホソース

グアム最強のティナクタックバーガーにかぶりつく—ピカズ カフェ(Pika's Cafe)

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2016.02.01 初出
2017.02.12 更新(2017.01.21に再訪。「グアム最強のティナクタックバーガー」を末尾に追記)
2018.01.18 更新(Information追記)

グアム人の、グアム人による、
グアム人のためのPika's Cafe

「このあいだ12時ごろに行ったら、1時間以上待たされたよ!」

そう言いながらも、グアムの数あるレストランのなかでも彼の一押しが、ピカズ カフェ(Pika's Cafe)だ。新鮮な地元食材とひねりを効かせたチャモロ料理を求めて、昼どきは行列がなす超人気店だ。

少し時間をずらし、閉店一時間前の2時頃に入店すると、15分ほどで席に案内された。とはいえ、やはり満席だ。営業時間も7:30〜15:00という潔さである。時間に余裕をもって訪れたほうがよさそうだ。

人気なのは、2011年のグアム・バーガーフェスタ(Guam Burger Festa)でグルメバーガー部門第2位に輝いた、ティナクタック・バーガー(Tinaktak Burger)だ。ティナタックとは牛バラ肉を野菜とココナッツで煮込んだチャモロの代表的な料理のひとつ。

グアム出身のオーナーLenny Fejeran 氏が「グアムが詰め込まれたサンドイッチ」と言うのもうなずける。ただ情けないことに連日の肉料理で胃袋が疲れ気味である。

そこで胃袋と相談して頼んだのが海老のラップサンド(Shrimp Club*) $12.50だ。海老、アボカド、トマト、ベーコン、ロメインレタス、チリのアリオリがトルティーヤで包まれている。

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ぷりぷりに火入れした海老、歯切れの良いしゃきしゃきレタス。さすが、農家と契約して野菜を吟味しているだけある。華奢なラップサンドに見えて、じつはかなりのボリュームだ。

天国か地獄か
激辛ディナンシェ・ソース

横に添えられているホームメイドのディナンシェ・ソースつけると、飛び上がりたくなるくらい絶品だ。じつにパンチが効いたこのソース、ちょっとつけるだけで天国(もしくは地獄)へと直行できる代物だ。

ステーキのブリトー(Cali Steak Burrito)($12.50)にも合う。柔らかくマリネされた肉が断然引き締まる。箸が…いや手がとまらなくなってしまった。

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“Eat Local. Buy Local. Support Local!”

オーナーのLenny and Pika Fejeran 氏は、Kitchen Lingo のプロデュースも手がけている。このふたつの店が共通するスローガンがこれ。

Eat Local. Buy Local. Support Local!

両店舗ともに、野菜が肉や魚貝といったメイン食材を引き立てているので、飽きることなく食べ続けることができる。やはり十数年前に比べると、グアムは食を通して確実に活気に満ちてきたようだ。

2017.1.21 再訪
グアム最強のティナクタックバーガー

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気合いをいれてデデドの朝市へ行くはずが、すっかり寝過ごしてしまった。

そしてえらく腹が減ってきた。そうだ、Pika's Cafeへ行こう! 時計の針は12時をまわりっている。混雑を覚悟して店にはいったが、週末のせいか、店内は地元客ばかりで穏やかな様子だ。

まず運ばれてきたのが海老のラップサンド。また同じものを頼んでしまったんだが、うまいものはうまい。ほんのりレアに焼き上がった海老はぷりぷりで最高だ。追加で頼んだドニソースをたっぷりつける。安定と納得の味。

そして待ちに待ったティナクタックバーガーの登場。見た目は豪快、ハンバーガーといってもバンズは白いチャパタなので、特大のパニーニといったところか。

何より驚いたのは、通常牛バラ肉でつくるティナクタックが、ハンバーグの形になっていることだ。しかもその特大のパテはうっすらピンク色で焼き加減は絶妙。

両手でがっしりと掴み、したたり落ちるソースをよそにかぶりつく。

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これはうまい! 思わず興奮してしまった。口いっぱいに頬張りすぎて声にすらならなかったが、目は口ほどに物を言う。それにしてもこの何とも言えないフレーバーはなんだろう?

インゲンにタマネギ、ローストしたトマト、そしてココナッツミルク。香りの秘密はこれだ! ココナッツ独特のひつこさはまったく感じない。むしろふわっと香るココナッツが食欲をMaxにまで加速させる。

なんて独創的なハンバーガーなのか。これぞまさに「グアムを詰め込んだハンバーガー」だ。

食べきれなかったら持って帰ろうだなんて、考えが甘かった。ふわふわの軽いパンが功を奏したのか、あっさりと完食。食べ終わる頃には、店は満席になっていた。のんびり寝坊モードの週末はここからが本番だ。

Information

Pika's Cafe

場  所:888 N. Marine Corps Drive #114 Upper Tumon, Guam 96913
営業時間:月〜土曜日 7:30〜15:00
Facebook@pikascafe
Instagram@pikascafe
WEBhttps://www.pikascafeguam.com/