ローストチキンの記事の閲覧数が跳ね上がっていて、はて何ごとかと首を傾げていたところクリスマスイブであったことを思い出した。引きこり生活が板につきすぎてそういう晴れがましいイベントとはすっかり縁遠くなってしまっている。どちらかといえば頭の中は正月のお節でいっぱいの年頃だ。
そういえばスーパーの館内放送で「今年のクリスマスはオリンピックで神聖なチキンを〜♪」と流れていた。斬新なキャッチコピーだと感心してたんだが、よくよく耳を澄ませば「新鮮なチキンを」とのこと。いよいよ耳までも疲労が回ってきているようで、今年はチキンを焼く気概もなければ、借りぐらしでオーブンもない。
そんなクリスマスに完全に出遅れてしまった者たちでも手軽にそれなりに楽しめる鶏肉料理がある。
台湾の国民食である三杯鶏(サンベイジー)だ。
『中国料理の世界史:美食のナショナリズムをこえて』によれば1970年代に台湾で広まった料理なので歴史はそう古くないが、たどれば江西省から伝わったものだろうというのが著者の見立てだ。
胡麻油、醤油、酒を一杯ずつ、つまり同割りにして鶏を煮付けることからこの「三杯鶏」という名がついたそうだ。なにが魅力的かといえば、この覚えやすさに尽きる。
和食にも酢、醤油、みりんを同量ずつ合わせた三杯酢、醤油とみりんと酒を同量ずつ合わせた幽庵(祐庵)地などがあって、この同割りという概念はアジア料理の根幹に横たわる大河のようなものに感じられる。
ちなみに合わせ調味料については諸説ある。
志の島忠氏によれば三杯酢は一般的には「杯」と書くが、本来は酢と調味料を配分する意味合いから「配」と書くのが適当で、彼の三杯酢は酢5:薄口醤油5:みりん3の割合である。
幽庵地においても漬け込む食材や料理人の考え方によるところも多く、たとえば先の志の島忠氏はみりん5:醤油3:酒2の割合を基本としている。
調味料に胡麻油を使う点が三杯鶏を中華たらしめるが、その他の特徴として、①土鍋で煮て熱々を食すべし、②九層塔(ジュウ・ツン・タァ)という台湾バジルが味の決めてだ。
とはいっても手持ちには日式バジル紫蘇しかないため、否おうなしに「日式三杯鶏」となった。
紫蘇、赤ピーマン、ネギでクリスマスカラーを演出、鶏肉は手羽先を使ってクリスマス気分をお安く旨く盛り上げる魂胆だ。
調理時間も30分くらいなので、今からスーパーに走ればディナーに間に合うはず。
みなさま、よいクリスマスを!