天候が悪い日、そして市場が開いていない日に地元のスーパーに並ぶのは、宮城産の皮なしタラ。そんな日の夕飯はフィッシュ&チップスのフィッシュに決まりだ。
イギリスの、飯はまずいし天気も悪いのは長いこと世界の定評であったから、旅先にイギリスを選ぶことはなかったが、私はこの食べ物がかなり好きであり、死ぬまでに一度くらいは本場のフィッシュ&チップスを食べてみたいと思っている。
では本場のフィッシュ&チップスとはどんな食い物なのか。開高健によれば、本場のフィッシュ&チップス、いや「フィッシュンチップス」はこうである。
"フィッシュンチップス"はタラとかカレイとか、白身の魚なら何でもいい、それを乱雑に叩き切って粉にまぶして油で揚げただけというだけのものである。ポテトのフライといっしょにして新聞紙の三角袋につっこんでわたしてくれる。ごくざっかけな食べ物であって、料理といえるほどのものではない。町角のスナックである。つまみ食いのオヤツみたいなものである。
開高 健『珠玉』より
日本の天ぷらのような繊細さは一切無用のようである。
だから「ふんわりさくさく」では生ぬるい。口の中が血だらけになるくらいバリバリ・ハード系がいい。天ぷらがブラーなら、フィッシュ&チップスはオアシス。きっとそんな感じに違いないと、夢想している。
ところでフィッシュ&チップスの衣は、小麦粉、ビール、ベーキングソーダが主な材料だ。イギリスに敬意を払い、昔は自分もこの材料を忠実に守ってきたんだが、よりバリバリ食感を求めて加えたのが片栗粉である。これだとバリバリ食感が持続してくれるので、翌朝はフィッシュバーガーと洒落込むことができる。これがかなりうまくて、もしかしたらフィッシュバーガーのために揚げているといっても過言ではない。
ついでに本場では揚げ衣にビールを使うが、プレミアムモルツは飲むもので料理に使うなと家人より厳命を受けているので、ひよった私は炭酸水を使うのが常である。
ちなみに開高健の知人のイギリス人いわく、フィッシュンチップスはエロ新聞で包むと保温性が長持ちするという。
『タイムズ』なんかだとたちまちさめてしまうというんです
開高 健『珠玉』より
家人に「エロ新聞はないか?」と尋ねるも、そんなものはないと一喝され、仕方なく我が家の新聞を開いてみたが、お堅すぎる日経新聞では速攻で冷えてしまいそうだし、色気もへったくれもない。ここは天紙で手を打とう。
フィッシュ&チップス
材料
タラ(皮なし) | 400g | |
塩・胡椒 | 少々 | |
薄力粉 | 少々 | |
揚げ衣 | ||
薄力粉 | 50g | |
片栗粉 | 40g | |
BS | 小さじ1/2 | |
塩 | 少々 | |
炭酸水もしくはビール | 130cc | |
フライドポテト | 好きなだけ | つくりかたはこちらへ |
つくりかた
タラに塩・胡椒をふり、10分くらいおいておく。
タラからでてきた水分を拭きとり、刷毛で薄力粉をはたく。
揚げ衣の材料を混ぜる。
衣をたっぷりつけて、やや高温の油で揚げる。