銀座で半額になっていた洋服を買おうとしたところ、胸のあたりに小さなほつれがあった。試着して気に入ってはいたが、一度目につくと気になってしまうもので、店員に相談する。
「これ、どうにかならないですかね?」。心のどこかでもう少し安くなったりしないだろうか、なんて淡い期待もしていた。
「あっ、ちょっと待ってくださいね」
店員は針を取り出して、洋服に一刺し。目の細かい春物のセーターだったにもかかわらず、飛びだしていた糸は一瞬にして消え、まるで手品でも見せられた気分だ。
それはほつれを修正する特殊な針で、針の先端が凸凹に加工してあるのだと説明をうけ、世の中には便利なものがあるのだと、拍手でも送りたくなった。
翌日に洗濯物をたたんでいると、おろしたばかりの靴下がほつれているではないか! 自分の不注意か、猫の仕業なのか……靴をはいてしまえばなんてことはないが、気になって仕方がない。さっそく「ほつれ補修針」でちくりと刺してみる。
もはや新品同様。素人がやってもあっという間の手軽さ、よみがえるあの感動。万歳三唱!
ということで、なにかと「ほつれ」を探してしまう毎日なのである。クローゼットに眠っている洋服、掘り起こしてみるか。