この時期タラが安く出回っているが、寒いからといって鍋ばかりだとさすがに飽きてしまう。
そこでクロアチアで食べた忘れられない魚のスープをつくることにした。安くて、具だくさんで、栄養満点。貧乏旅行者にとっては涙がでるほどありがたい食べ物だった。
太った親父と娘が切り盛りしていたそのレストランはドブロブニクの旧市街にあり、客はひっきりなしだった。どれも安くてうまいんだが、特に印象深いのは大きなガラス製のボウルになみなみと入った魚のスープ。他のレストランとは一線を画す、店主の独創性が光るものだった。
特徴は、
- 魚のぶつ切りがごろごろ入っている
- 薄切りのジャガイモがごろごろ入っている
- ショウガの薄切りがけっこう入っている
- ニンニクもたくさん
- レモングラスのさやかな香り
- 透明でさらりとしたスープで、すこし黄色っぽい
ショウガとレモングラスを使う料理はクロアチアの旅を通して見たことがなかった。魚の骨やレモングラスがどっさり入っているから非常に食べずらいんだけれど、これだけ五感にびしびしと訴えかけてくる料理もなく、「スープの中で泳ぎたい!」と言いながら最後の一滴まで飲み干した。結局は滞在中、毎晩この店に通って英気を養い、フェリーでイタリアへ渡ることとなる。
数年後、店主はタクシーの運転手に転職し、残念ながらあのレストランは閉店してしまったが、あの味だけは忘れようにも忘れられないのだ。
改めて調べてみると、「gregada」という料理だったのかもしれない。
クロアチアの家庭ではこのVEGETA(「ベジータ」ではなく「ベゲタ」)という顆粒出汁をよく使っているが、今回は使わない。