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時速1kmの思考

ゴールデンキャビアのパスタ

古本屋にて二束三文で投げ売りされていた『改訂 調理用語辞典』が読み物としてなかなかに乙である。

全国調理師養成施設協会が編纂したもので、和洋中、エスニック料理、食品や栄養、食文化など、調理師に必要とされるありとあらゆる知識を列記されており、写真やイラストも豊富だ。

中華料理の名称においては漢字の画数から調べることができたり、発音記号まで付録する念の入れようで、これは立ち読みでは厳しいと判断し、持ち帰った。
なんせ1468ページにもなる大著だから、頭から読み進めるわけでなく、暇に任せてパラパラめくって眺めては、ニヤニヤするのが日課になっている。

先日目に止まったのは、「とびっこ」だ。
本書にはこうある。

とびっこ【飛子】
トビウオの卵を塩で調味したもの。すし種として利用される。ほとんどが輸入品である。
ゴールデンキャビアとも呼ばれる。

正直いえば、「とびっこ」には鳩のクソほど、いやそれ以上に興味がない。どうせイクラの劣化版だろうと見下し、寿司屋でも手を出したことはなかった。
にもかかわらず「ゴールデンキャビア」に脳内変換された「とびっこ」に、私は異様ともいえるときめきを覚えてしまったのだ。

そういえば以前、トビウオを捌いたとき、一尾に卵がはいっていた。
これだ。
konpeito.hatenablog.jp
あの時は吸い物にして丸呑みにしてしまったが、知らずのうちに口にしていたのをいま思い出す。

にわかにとびっこ熱にうなされ、スーパーを4軒ハシゴしてとびっこを観察してきた。
原産はすべてペルーで、琥珀色をしている。トビウオの腹から出したての卵はもっと黄色っぽかったが、調味液に浸されてこんな色なんだろうか。でもまぁ、見るにつけなかなか美しいものである。せっかくなので、45グラムで300円のものを求めた。

つくったのは、ゴールデンキャビアのパスタだ。バターベースだが、レモンピールで爽やかに仕上げたい。

追記
ネットによれば、アルビノチョウザメから採れた卵も「ゴールデンキャビア」と呼ぶらしい。お値段なんと59,400円(100g)。
色はトビウオのそれと似ているではないか。
日本の近海でもトビウオはとれるんだから、もっと自然なとびっこを売り出してもいいのかもしれない。
どちらのゴールデンキャビアのパスタをつくるかは、お財布次第。

ゴールデンキャビアのパスタ

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よくかき混ぜてお召し上がりください。

材料

無塩バター 20g
小タマネギ 1/2個 極薄切り
白ワイン 大さじ3
パスタ 150g ディチェコ11番使用
トビッコ 大さじ2 ひとり大さじ1
レモン 適量
塩・胡椒 少々

つくりかた

  1. 1リットルにつき小さじ2の塩をいれた湯で、パスタを7分(アルデンテ)茹でる。
  2. 鍋にバターを溶かし、弱火でタマネギがしんなりするくらい炒める。
  3. 白ワインを加え、アルコールを飛ばす。
  4. パスタの湯がき汁を60〜100ccほど加える。
  5. パスタを加えて、全体がとろりとするまでかき混ぜ、塩で味を調整。とびっこの塩分があるので、やや控え目に。
  6. 温めておいた皿にパスタを盛り、とびっこ、すり下ろしたレモンの皮、胡椒を散らす。好みでレモン果汁をしぼってもさっぱりいただける。

ロールキャベツ、クズ野菜スープ仕立て

料理にとりかかるときは、まず野菜を刻むから始めている。
皮ごと専用たわしでよく洗い、皮やヘタ、種をザルに溜めておき、水気が切れたところで冷凍庫に保管しているビニール袋にガサッと入れる。

これを「くず野菜貯金」と呼んでいる。ガチの貯金はさっぱりだが、こっちはすぐに小金持ちになれてお手軽だ。
満期がくれば引き落とし、野菜くず出汁をこしらえることになる。
konpeito.hatenablog.jp

寸胴鍋にくず野菜、水をたっぷり加えて火にかけ、煮えたぎったところを灰汁とりしていたら、家人がふらりと顔を出した。
「こ…これ一体なに!?」

大量の生ゴミが浮遊した大鍋を前に、明らかに狼狽している。ついに見てしまったのですね……と鶴の面持ち。

「いつもの野菜出汁だよ」
「なんだか魔女の鍋っぽいね」

たしかにビジュアル的には『マクベス』の地獄のスープを彷彿とさせるカオス具合だ。困惑するのも無理はない。
残念ながら蛇もトカゲもカエルも入っていないが、黒猫の毛が少々混じっていることは黙っておこう。
弱火に落としてコトコトコトコト1時間。

くず野菜出汁スープくず野菜出汁スープ
くず野菜スープ

漉したスープは黄金色。生ゴミ由来とはおもえぬ美しいできばえだ。
そのまま食べても滋味だが、卵を落としたり、ソーセージを煮込んだり、カレーのベースにと応用範囲は広い。
ちょうど半額の鶏ひき肉が300g、冷蔵庫にあったので、ロールキャベツをつくることにした。


ロールキャベツはご存知、肉だねをキャベツの葉で巻いてブイヨンで煮込んだ料理だが、その起源はトルコの郷土料理のドルマ(肉を葡萄の葉で巻いた前菜)と言われている。私が現地で食べたものはだいたいが冷製で、メインデッシュというより手でつまんで口に放り込む前菜の立ち位置だった。

この「肉を葉で巻いた食べ物」はトルコ周辺のアジアを中心に四方八方に伝播し、ついには極東日本に上陸。昭和にお袋の味として定着したあげくに、コンビニのおでんの具にまで昇華している。腹のあたりで結ばれたかんぴょうが、まさにジャパナイズされた証拠だろう。

ちなみに大日本帝国軍が昭和に発行した『軍隊調理法』では、玉菜巻と称してロールキャベツのレシピが紹介されていた。
肉だねをあらかじめ炒めていること、それにジャガイモが入っている点で、ややコロッケ寄りのロールキャベツになっているが、きっと米やパンは貴重なので芋で腹をふくらせようという魂胆だろう。

軍隊調理法
『軍隊調理法』昭和12年7月26日@国立国会図書館

ところでやはり気懸かりなのは、誰が、いつ、なぜロールキャベツをかんぴょうで結ぼうと思い立ったか、である。昆布巻きよろしく縁起をかついだのだろうか? ググってみたが、見つからない。まぁいい。

鶏肉を使ったロールキャベツは合い挽き肉よりあっさりしているので、バターでレンチンしたニンジンとキャベツを加えてコクを出しているのが今回のポイントだ。

ロールキャベツ、クズ野菜スープ仕立て


材料

鶏ひき肉 300g
小さじ1/2(肉の重量の0.8〜1%)
胡椒 少々
パン粉or冷やご飯or煎った米 大さじ2〜3 パン粉だとふんわり、米だともっちり食感
卵白 1個分
タマネギ(小) 1/4個 みじん切り
ニンジン タマネギと同量 みじん切り
バター 10g
キャベツの葉 4枚 なるべく外側の大きいものが扱いやすい
クズ野菜出汁 適量をお好みで

つくりかた

  1. タマネギとニンジンを耐熱容器に入れ、バターを加えてレンジで2分チン。粗熱をとっておく。
  2. キャベツの葉を湯がき、粗熱をとる。厚い芯は包丁でそぎ取る。
  3. ひき肉に塩、胡椒を加えて練り、粘ってきたらパン粉、卵白、タマネギとニンジンも加えて冷蔵庫で半時休ませる。
  4. キャベツを芯のほうを手前に広げ、俵型にした肉だね(4等分で大きめ)をおき、ぐるり一巻き。
    左の葉を折りたたんで、最後まで巻く。
    右の葉を肉だねの中央に指で押し込む。
  5. 鍋にロールキャベツをきっちり、ぎゅうぎゅうに並べ、クズ野菜出汁を注ぎ、落としぶたをして30分ほど弱火で煮込む。
  6. スープを塩、胡椒で味をととのえる。皿に盛り、好みで粉チーズやパセリを振りかける。

明日葉の天ぷら蕎麦

アシタバ
明日菜の天ぷら蕎麦

明日葉の天ぷらを初めて食べたのは、もう10年以上も前のこと。友人のデザイナーに連れて行かれた原宿の雑居ビルにある八丈島料理の専門店だった。

さくさくに揚がった明日葉は軽やかで、ほろ苦く、野趣あふれている。食べるほどに健やかになる味で、店ではいつも二皿は平らげるほど明日葉の虜になってしまった。

今じゃ健康的なグリーンとしてすっかり市民権を得た明日葉はどこのスーパーでも見かけるようになった。どちらかといえば八丈島や伊豆諸島でとれる島野菜という認識だったが、先日立ち寄った湯河原の直売所で超がつくフレッシュ明日葉を見つけたときは、嬉しくなって思わず大束を摑んでしまった。

頭の中は天ぷら一色だったが、ただひとつ問題がある。あの軽やかさが仇となり、ついつい食べ過ぎて腹をくだしがちなのだ。もう同じ轍は踏むまい。

ということで、手の平サイズを目安に穂先のひとかたまりを天ぷら用に、その他はお浸しにする。
洗った明日葉はステンレスのボウルにいれてラップしておくと1週間くらいは鮮度が保てる、なかなかに強い野草だ。

アシタバ
明日葉のお浸し

さくさくな明日葉の天ぷらのコツは3つ。

  1. 葉に薄力粉をまんべんなくまぶし、余計な粉はしっかりはたく(下粉)。
    葉の水分を適度にとれて油はねがなくなるし、衣が剥がれにくくなる。
  2. 天ぷら粉と水は容量比で1:1.5の割合でさっくりとく。
    しゃばしゃばのゆるい衣だが、すでに下粉がついているので衣と緑色のコントラストが美しい仕上がりになる。
  3. 葉をひろげながら油に落としたら、衣がしっかり固まるまでひっくり返さない。
アシタバ
天かすのために揚げているといっても過言じゃない

下粉がついているので、天ぷらをあげるほどに衣は重たくなってしまうのでその都度水で微調整は必要だが、途中から天かす職人に鞍替えするのも一手。
もはや天かすのために天ぷらを揚げているようで本末転倒感が否めないが、冷凍保存しておけばなにかと重宝するのだ。

アシタバ
明日葉の天ぷら蕎麦

昼食は蕎麦にしたが、夕食なら天つゆがオススメ。出汁:薄口醤油:みりんを4:1:1で合わせ、さっと沸かして出来上がり。






岩鋳製南部鉄器 揚鍋16【揚げ鍋】

●外寸:底径:140 ●内寸:φ160 深さ:75 ●本体重量:1.4kg ●容量:1.1L ●材質:鉄 木 ●電磁調理器対応:200V

金目鯛の干物でリサイクル炊き込み飯

キンメダイ
金目鯛の干物炊き込みご飯

天気のあまりよくない日にときどき開催されるスーパーの干物祭。本日は金目鯛、ホッケ、アジという王道のラインナップで、どれを選んでも3尾1000円である。

魅力的なのはがぜん金目鯛だ。なんせ丸の金目鯛はサイズにもよるがだいたい一尾2000円前後。普段魚としては高級品だからおいそれとは手出しできない。
わざわざ塩をして干してと手間をかけた金目鯛のほうが安いという点は解せないが、心ゆくまで金目鯛を喰らえるならばと迷いなく金目3枚をカートに入れる。


さぁ、焼こう。
まず魚焼きグリルをかんかんに熱する。こうしておくと、網に干物をくっつきずらいのだ。
金目鯛を二枚、重ならないように、そして焦げやすい尾をグリルからややはみ出すよう首尾良く並べる。
ここからは中弱火で、皮がパリパリになるまでじっくり気長に焼く。
身のほうがじくじくと汗をかいてきたらひっくり返し、あとは乾かす程度に火をいれる。
食卓にあげるころには金目鯛熱はピークに達しており、白飯をたっぷりよそっていざ箸をいれる。

やはり、うまい。ありきたりだが、肉厚でふっくら。旨みがぎゅっと詰まっていい塩梅の塩気。醤油なんていらないいらない。

昔は干した魚なんかに目もくれなかったが、ここにきて干物の旨さとありがたみ(調理が簡易で日持ちする)がわかってきたのは、心技体すっかり干物女と化したせいかもしれない。

困ってしまうのは白飯がいつもの倍速で進むので、半身を食べたあたりで腹が膨れてしまった。
翌日にもちこした干物は干物というより化石といった趣きであまり美味しくない。そこでまだ温もりが残っているうちに、身をほぐしておくことにした。

各自の食べ終えた骨や頭を皿から回収し、鍋に放り込んで水、酒、昆布をひとかけら加えて火にかける。
沸騰する前に昆布を取りだし、灰汁をとりながら30分ほど煮出す。網でこすと干物の残骸由来とは思えぬ透き通った金色のスープがとれた。

キンメダイ, 金目鯛
干物から出汁をとる

翌日、冷蔵庫から出した金目鯛の干物スープはコラーゲンでぷるぷるのゼリー状だ。干物のポテンシャルや底知れず。干物女もまだまだイケるんじゃないかと希望の光が差す。

炊く

薄口醤油で吸い物くらいの味に調えたスープに、米とほぐしておいた干物半身、それに針生姜を散らして土鍋で炊き込む。
仕上げに小ネギと海苔をかけて、金目鯛の干物炊き込み飯の完成だ。
金目鯛のスープをたっぷり吸った米が不味いはずがなかろう。一心不乱にかきこんでしまうことになる。そしてまた、米を食い過ぎてベッドに倒れこむダメな干物女がここに出来上がる。
残った飯はお茶漬けにしてもよし、焼きおにぎりにするのも一興だろう。



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新「貧乏人パスタ」にセージとバターのパスタを内定

セージのパスタ
セージのバターパスタ

これまで貧乏人のパスタといえばペペロンチーノとカッチョエペペが二大巨頭だと思っていたが、その上をいく(下か?)パスタを好んでつくっている。
セージとバターのパスタだ。
東京ではそれなりのお値段で売られていたセージだが、ここ横浜の内陸地では1パック30円で投げ売りされていることがしばしばで、限りなく雑草に近いハーブという認識に変わってきた。

水を少量入れたコップにセージをいけて、ビニールやカップで蓋をし冷蔵庫にいれておけばかなり長持ちするし、肉との相性が抜群なので、あれば必ず買ってしまう香り高き雑草だ。
konpeito.hatenablog.jp

ところで、「貧乏人」「パスタ」で検索してみると、なんと新手の貧乏人パスタ 「Spaghetti alla puveriello(貧乏人のパスタ:Poor Man’s Spaghetti)」が筆頭に上がってきたではないか。

使っているのは玉子数個、チーズ、塩・胡椒。材料はほぼカルボナーラだが、生卵で和えるのでなく目玉焼きをのっけたスタイルで、パスタ版TKG改めTKPといった趣である。戦後貧しい時代に暑いナポリで食べられていたというから、衛生的にも卵には火を通さなければならなかったんじゃないかと睨んでいる。

はたしてどのパスタがキングオブ貧乏パスタなのか、暇にまかせて考えてみたが、個人的には玉子やチーズが入っているなんて富裕層の領域ではないかと結論づいた。ということで、新貧乏人パスタに「セージとバターのパスタ」を内定する。家人は喜んで食べているので問題ないだろう。

セージとバターのパスタ

材料

パスタ 80g
セージ 5枚〜
無塩バター 10g
オリーブオイル 少々

つくりかた

  1. 水1Lに対して10gの塩を沸かす。
  2. パスタをアルデンテよりも少し柔らかいくらいに茹でる。
  3. フライパンにバターとオリーブオイルを少々たらし、セージを加え香りを出す。
  4. 湯からパスタをあげ、あまり湯を切らずにフライパンに加え、やさしく和えてとろりと乳化させる。
  5. 塩・胡椒で味を調える。

以上、お粗末様でした。

鶏モモ肉入りセージバターソース手打ちパスタ
生パスタとの相性もいいセージバターソース

気まぐれに賽の目にした鳥モモ肉を加え、細めに切った自家製パスタに合わせてみた。これならメインもはれそうだ。

konpeito.hatenablog.jp