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時速1kmの思考

激辛好きも沈没death! 森のカレー:ゲーンパー【Kaeng Pah】のつくりかた

ゲーンパー

ゲーン・パー(Kaeng Pah)を初めて食べたのはタイのコチャーン、カンボジア国境に近い島である。直訳すると、森の(パー)タイカレー(ゲーン)。通称ジャングルカレー(Jungle Curry)と呼ばれている。
メニューに写真がなく、どんな料理か検討もつかなかったが、興味本位で頼んでみるとテーブルに届いたのは白いどんぶりになみなみと注がれたさらさらの透明スープだった。ココナッツ風味のカレーに飽きていたのもあって、そのすまし汁のような、いかにも胃に優しそうな装いに、気安くずずっとすすったのが地獄の登竜門だった。

タイ語で「辛い」を「ペッ」というが、ごく自然な流れでペッと吐き出しそうになった。辛いを通り越して、唇の痺れが止まらない。
スプーンで丼の底をまさぐってみれば、とんでもない量の青唐辛子が沈んでいるではないか。まったく遊びのないこの辛さをペッというのか ・・・・・・身をもって覚えた単語は忘れないものである。

激辛好きを悶絶させるこのゲーンパー。口の周りの血管はすでに破裂しそうなんだが、食べすすむごとにクセになってくるのはタイ特有のスパイス使いと執拗な暑さのせいだろう。噴き出す汗を拭う間もなく白飯を頬張り口の中を中和させて、物足りなくなってスープを慎重にすする。
翌日のトイレ事情はご想像におまかせしよう。ひとつ言えるのは、島でトイレットペーパーは流せないので、ゲーン・パーを食べるときはくれぐれもお気をつけいただきたい!

ゲーン・パーの特徴

ゲーン・パーとはいったいどんなカレーなのか。まとめてみると、

とにかく激辛!

生の唐辛子をふんだんに使用。料理人によって青唐辛子だったり赤唐辛子だったり、両方だったり様々。

ココナッツミルクを使わない

森、つまりジャングルの中ではココナッツが手に入らない。ゆえにスープの透明度が高い水っぽいスープカレーで、非常にあっさりしていて胃もたれしない。

具はジャングルの幸

森で手に入る肉・野菜(タケノコ、ヤングコーン、インゲン豆etc)ならなんでも入れる具沢山スープ。あえていうなら、ナスはいれたほうがうまい。最近では日本のスーパーでも「マクアポッ」という小さめの丸ナスが手に入るようになってきた。

https://66.media.tumblr.com/37e3c574e21d28f34f2255a542ff515b/tumblr_pxjs3tHHz91tvgyjgo1_1280.jpg

ゲーン・パーのカレーペースト

youtu.be
サラサラのスープのようなゲーンパーであるが
、一応カレーの一種であるからカレーの素的なペーストが存在する。
ゲーンパーのカレーペーストにはなんと12種類ものハーブが使われているらしく、ざっと並べてみると・・・・・・

① 乾燥赤唐辛子
② フレッシュ赤唐辛子(プリッキーヌ【泰】)
レモングラス(タクライ【泰】)
④ こぶみかんの葉(バイマックルー【泰】カフィアライム【英】)
⑤ 南姜(カー【泰】ガランガル【英】)
⑥ クラチャーイ生姜(リゾーム【英】)
⑦ ニンニク
パクチーの根
⑨ こぶみかんの皮
⑩ エシャロット
⑪ 小さい赤タマネギ(ホームデン【泰】パープルシャロット【英】)
⑫ エビのペースト(カピ【泰】)

これらのハーブを根気よくすり潰すとカレーペーストになるが、これをすべて日本で手に入れるのは至難の業だ。
いまではゲーンパーのペーストも売ってはいるが、日本ではレッドカレーのペーストのほうが手に入りやすいので、今回はそちらを利用する。




●原材料:レモングラス、乾燥唐辛子、塩、エシャロット、にんにく、ガランガー、シュリンプペースト、ライムリーフ
●容量:50g ●原産国:タイ国

ゲーンパー【Kaeng Pah】

ゲーンパー

材料

ゲーンパー

野菜は季節のものでOK。水分の出やすい葉野菜よりも、固形のものが合う。

レッドカレーペースト 大さじ2 メープロイ使用
豚や鶏肉 100g 一口大に切って塩で軽く下を塗す
ナス 1個 タイの小さな丸ナスなら2個
ピーマン 1個
パプリカ 1/4個
キノコ ひとつかみ ふくろだけが主流のようだが、お好きなものを
チキンスープ 500cc
ナンプラー 大さじ1〜
薄口醤油 大さじ1〜
きび砂糖 小さじ1〜
ライム果汁 大さじ2〜




MAE PLOY メープロイ レッドカレーペースト 400g

唐辛子、にんにく、レモングラス、食塩、シャロット、ガランガル、えびペースト、カフィアライムピール、こしょう

ハーブ

タイ料理の最難関は、ハーブを手に入れることだろう。これさえクリアすれば調理はかなり簡単だ。アメ横プラザの地下でたいていのハーブは手に入る。

クラチャイ/ガランガル(カー)/レモングラス/生胡椒(プリックタイオーン)/宮古島産の唐辛子/コブミカンの葉(バイマックルー)
※クラチャイ 3本 細切り。朝鮮人参のような漢方っぽい香り。同じショウガ科のガランガルを使っている店もある。香りの方向性がまったく違うので、好みが分かれるところだ
レモングラス 1本 包丁の背で叩いて、間違えて食べないよう、大き目に乱切り
※生胡椒(プリックタイオーン) 手に入りにくいので省略
※生唐辛子 3個 個体差があるので唐辛子の辛味をチェックする。そのまま入れるか、刻むかでまた辛味は変わる
※コブミカンの葉 4枚 〜 太い葉脈をとって手で千切る
タイバジル、もしくはパクチー、ライム果汁 適量
コブミカンの葉脈

つくりかた

おいしくつくるポイントは、生のハーブの香りが飛ばないよう、煮込みすぎないことだ。

  1. 鍋に分量外の油を加え、レッドカレーペーストを弱火で炒める。
  2. チキンスープを加え強火にし、生ハーブ(※クラチャイ〜生唐辛子まで)を加えて沸騰させ、肉を加える。
  3. 一煮立ちしたら野菜とコブミカンの葉を加えて煮立たせる。
  4. ナンプラーや醤油、砂糖で味を整える。ナンプラーばかりをいれるとモノによっては臭くなるので薄口醤油をブレンドしているが、クセのないものであればすべてナンプラーでも大丈夫。レッドカレーペーストの塩辛さ、また肉にも塩をしているので、ここは味見しながら塩梅をみる。
  5. 野菜が煮えたら火を止め、ライム果汁を絞ってパクチーやタイバジルを飾る。

ゲーンパー

手の平サイズのローストビーフでサンドイッチ

ローストビーフのサンドイッチ

在宅勤務が始まって半年が経過しようとしている。振り返ってみれば、昼食はほとんどが麺かパンで構成されていたが、なかでもサンドイッチ率が高かったのは、ウェブ会議の隙間に片手で食べられる利便性と、作り手側の手抜きにほかならない。

具はハムとチーズ、目玉焼きか玉子スプレッドを挟むのが定番になっているが、さすがに飽きてきたころ、ローストビーフでも挟んでやろうかという気になった。

最近はなるべく小さな牛肉を選ぶことにしている。自分の太腿ほどある豪快なローストビーフには憧れるが、二人で飽きる前に、かつおいしく食べられるのは200gくらいが身の丈だとわかったからだ。手の平サイズの大きさだと火入れも早いし、ほっとくだけで安定してピンク色のいい焼き加減に仕上がる。

ローストビーフ

まずは牛もも肉を塩とオリーブオイルで一日マリネする。ニンニクとか醤油とか入れたくなるところだが、使い回しやすい塩だけが好みである。
翌日常温に戻したら全体をこんがり焼き、アルミホイルでふんわり包んで常温まで冷ます。

ローストビーフ

冷め切ったら200度のオーブンで再び3分焼き、またアルミホイルで包んで常温まで冷ませば出来上がりだ。薄切りにすると筋も気にならない。

ローストビーフ

味見と称して、まずはバルサミコソースとワサビで食べる。
konpeito.hatenablog.jp



満を持して、翌朝はサンドイッチに。

ローストビーフ

パンは成城石井のボッカブレッドを使用。両面を一分ずつ焼いて、片面はスライスチーズをのせてもう一分。
そのあいだにもう一枚のパンにマヨネーズを塗り、レタスとローストビーフをのせたらたっぷりとバルサミコソースをたらし、チーズが溶けたパンで挟んで出来上がり。 

よくよく考えたら、これはステーキ・サンドイッチのような気もしてきたが、非常に満足のいく昼食となったので良しとしよう。

エボダイの姿揚げと骨煎餅

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筑地市場にて

筑地で一目惚れしたエボダイ。体長15cmくらいの小さなものだったが、愛くるしいつぶらな瞳から放たれるその眼差しから目が離せなかった。ややピンクを帯びたメタリックの輝きは携帯の最新機種のようにも見え、値は張るものの期待感が先走る。

調べてみれば、これまでずっと「エボダイ」だと思っていたこの魚は、本来「イボダイ」が正式名称で、全国的に獲れるものだから日本各地で「メダイ」「シズ」「モチウオ」などなど地方色豊かな名称がたくさんあるらしい。
だがいまさらイボダイと呼ぶのも他人行儀な感じがするし、築地でもエボダイと書いてあったから、このまま「エボダイ」を貫いていこうと思う。

エボダイは骨や身が柔らかく、揚げると丸ごと食べられるというので、ちょっと工夫をこらした姿揚げに挑戦することにした。

エボダイの唐揚げ

まずはウロコとって、エラをかき、腹の脇くらいから小さく切り込んで内臓を取り出し、きれいに洗って水気をとる。
背から開いて、弧を描くように包丁を入れて、腹ギリギリまで開いて袋状にし、頭と尾の中骨の付け根をトンと包丁で落とし、中骨をごっそり取り出す。

エボダイの唐揚げ

薄力粉をはたいてそのまま揚げてもいいが、尾の付け根からアゴ下に向けて竹串を刺してスズメに見立てる。横からだとわかりづらいんだが
、正面から見るとたしかにスズメが羽を広げているような格好だ。

エボダイの唐揚げ

低温の油で中骨と一緒にじっくり揚げていく。10分弱くらいだろうか。バリバリになるまでけっこう時間がかかるので、ここは気長に構える。仕上げに油の温度を上げて、手で触ってみて固ければ油から引き上げる。

エボダイの唐揚げ

熱々を皿に盛り、ポン酢とネギ、一味を振りかけて頭からかぶりつく。
衣はザクザク、身はふんわりで、我ながら天才かと勘違いするほどの出来栄えだが、味付け等なにもしてないため、全てはエボダイのポテンシャルで成り立った料理である。
中骨もしっかりと煎餅になっており、普段なら捨ててしまうところが立派な一品になったことが満足度を跳ね上げているのかもしれない。

エボダイの唐揚げ

グアムでよく食べるミルクフィッシュのフライにフィナデニソースをかけたものもを思い出す味だったが、小さなエボダイなら揚げやすいうえ、ポン酢があればより手軽なこともわかった。

エボダイの唐揚げ

そういえば、車でしか行けない少し離れたスーパーでは、小柴漁港産のエボダイが雑魚のような値段で売られている。これからは積極的に揚げて食うことを心に誓う。

山葵風味のバルサミコソース

5年ほど前から年に一度、定期便のように訪れるぎっくり腰。ここのところ調子が良かったもんで、今年はなんとなくやり過ごせる気がしていたが、やはり魔女の一撃は交わせなかった。
台所に立つにもオットセイのような声が漏れ、くしゃみの時には全身で身構え、全神経が腰に集中するもんだから頭の中から人間らしさがずるずると失われていく。

数週間たち、ようやく腰も癒えてきたので、途中になってた記事に向かい合うものの、ぎっくり以前の記憶も曖昧になっている。そうそう、紹介したかったのはバルサミコソースだった。



今夏いちばん世話になったバルサミコソース。そもそもは板長の誕生日にバルサミコ酢をプレゼントしたのがきっかけだったが、牛肉に合うというこのソースを伝授しようと翌日には筑地にエシャロットを発注したそうだ。
つくりかたはいたってシンプル。

バルサミコ酢に炒めたエシャロットを入れて煮詰め、醤油を加え一煮立ち」
以上である。

煮詰めたバルサミコにけっこうな量の濃口醤油を加えることで、和食にもしっかりマリアージュする仕様となっている。出来たてを舐めてみると、高級なウスターソースといった赴きもあり、コロッケなんかにもぴったりはまりそうである。

ステーキには塩胡椒! を頑なに貫いていた家人も、コロナをすり抜けて我が家を訪ねてきた友人も、何が入っているかよくわからないけれど高級っぽい味がすると驚いている。
瓶に詰めて冷蔵庫に入れておけば日持ちするのもありがたい。
香りが飛ばないよう、最後にワサビを加えるのがポイントだ。

山葵風味のバルサミコソース

材料

バルサミコ 500cc 250ccの瓶2本
エシャロット 200g みじん切り
少々 ※つくりかたに詳細
濃口醤油 200cc ヤマサ使用
ワサビ 適量

つくりかた

バルサミコのステーキソース

フライパンで、エシャロットを分量外の油で焦がさないようにしんなりするまで炒める。油はオリーブオイルやバター、もしくはその両方をミックスさせてもいい。
鍋にエシャロットとバルサミコを一本(250cc)入れる。

バルサミコのステーキソース

竹串で高さを測って、その部分を折っておく。もう一本バルサミコを加えて煮詰めていく。

バルサミコのステーキソース

半量(先ほど折った竹串が目安)になるまで煮詰める。

バルサミコのステーキソース

醤油を加えて一煮立ちしたら出来上がり。食べるときにワサビを混ぜて提供する。

バルサミコソースを使った料理

ローストビーフ

ローストビーフ

サラダビーフのサンドウィッチ

サラダビーフのサンドウィッチ
konpeito.hatenablog.jp

抜かりなく手を抜いた、猛暑の冷奴飯

冷や奴飯

梅雨が終わって晴れ晴れしたのも束の間。次は暑くてどうにかなりそうだ。洗濯物を干していると太陽による強火の遠火にさらされ、顔がピリピリ傷む。四十路の肌は悲鳴をあげている。マッハで干し終えて、クーラーの効いた部屋でひと息つく。

今日は家人が出社したので、昼食をつくらなくていい。正直、ほっとしている自分がいる。
一回の食事にまつわるエトセトラがなくなるだけで、浮いた時間は自分のために使える。ひとまずは腹ごしらえをして、有意義な午後をスタートダッシュしたい。

どうせなら抜かりなく手を抜きたい。となると、時間・労力ともに省エネなのは間違いなくカップ麺だろう。だが手を伸ばしかけたところで、中途半端に残っている豆腐を思い出してしまった。1人ではちょっと多く、2人では足りない分量だから、さっさと処理してしまったほうが得策だ。

冷や飯を温めている間に、豆腐を盛る皿を取り出したものの、洗い物が増えると思い直し、飯茶碗にそのまま豆腐を座らせた。白飯に白い豆腐。やや味気ない風景なので、渋々まな板を取り出してネギを刻む。

出汁醤油をかけて豆腐の角を崩しながら、飯と交互に食べる。
これはうまい。
冷たい豆腐の喉ごしと水分が手伝って、白飯が驚くほど爽やかな粒となり、口の中で混ざっていく。汗もすっと引き、萎んでいた胃もぐるぐると活動しはじめた。



豆腐といえば、江戸時代(1782年)に発行された『豆腐百珍』を思い出す。この豆腐料理の専門書では100種類ものレシピが紹介されており、「尋常品」「通品」「佳品」「奇品」「妙品」「絶品」という6つのカテゴリに分かれている。冷や奴は「通品」に分類されているが、いまのところ自分のなかではこの冷奴飯は「絶品」であり、101品目に加えてほしいくらいである。

前のめりで食べていたら、あっという間に豆腐が先になくなってしまった。不覚にも飯と豆腐の配分を完全に見誤ったようだ。
仕方なく、もう一丁あった新品の豆腐に手を出すことになった。1/9ほどに切って、残った飯にのせる。次は豆腐と飯をぐちゃぐちゃにかき混ぜて出汁醤油をかける。猫マンマのようで、他人様に見せられたものではないが、茶碗に口をつけてがさがさとかき込む。うまいうまい。はじめから混ぜていれば飯と豆腐の配分を間違えることもなかったなと、また余らせてしまった豆腐に思いを馳せる。

茶碗を片づけて、有意義な午後の始まりだ。ひとまず本とiPhoneを携えて、ベッドに転がる。