店では鱧落とし(湯引き)と同じくらい人気が高いのが鱧の照り焼きだ。どちらかといえば、通はこちらを食べる傾向にあるような気がする。でもまぁ、どちらも趣が違うし、どちらもうまいことには変わりない。
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今日は宴会。マダムたちの集いはコース料理のため、焼き物はハモでいくことになった。
おもむろにハモをとりだした板長。すでに骨切りはしてある。
「これ、串打ちしてくれる?」
素人への無茶ぶりはここ最近、板長の常套手段である。実際に鱧の照り焼きを焼いているところは何度もみたので、やってみることにした。
右手に串をもち、まな板に寝そべっているハモに左手をそっと添えて串を打とうとしたところで、
「左手で触るな!」
と檄が飛ぶ。ハモの身は柔らかく崩れやすいので、べたべたと手で触るのは厳禁なのだ。
ハモを触らずに串打ちするにはどうしたらいいのか?
とりあえず右手だけで静かにハモの身に串を入れてみる。
「それじゃぁうまく打てないでしょ」
板長は笑いを噛みしめている。どうやらからかっているのか。東大王でもこんなの知らないと思うぞ…。
しばらく考えたがもうお手上げ。
「板長、手本を見せてください」
鱧(ハモ)の串打ち
答えはごく単純なことだった。左手の串でハモを押さえながら右手で打っていけばいいのだ。
ちなみにこういった方法を縦串といい、かならず左から打っていく。右から打つと串が手に当たり作業効率が悪いことが実際にやってみてわかった。細かいことではあるけれど、こういった小さな所作が大きな違いを生む。
では、ジャズにのせて板長の串打ちをどうぞ。
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このあと仕事を引き継いだが、コツがわかれば素人でも出来る。身が割れやすいものの左右の端、身が厚い部分にしっかり串を通し、串全部を持ち上げてハモが落ちてこなければ問題ない。薄い部分に刺してしまうと、焼いているうちに身がちぎれてしまう。
板長は串を4本使っているが、何本でも打っていいいう。とにかく、焼いている途中に落ちないことが絶対なのだ。
仕上げに木串を金串に直角にぐし縫いしてやる。専門用語では添え串、追い串、補助串とか言うらしい。これでハモが反り返ることなく美しく焼き上がるのだ。
ハモの照り焼き
皮のほうからハモを焼いていき、ときどき照り焼きのタレをかけ流す。これをくり返すわけだが、焼いているあいだも常に、串を指先で回していなくてはならない。焼けて身が締まった魚から串を取り外すのに苦労することになる。ハモでなくても、身がぼろぼろになることうけあい。
ハモの梅焼
焼いたハモに梅肉を塗り遠火で乾かした料理。照り焼きのように何度も塗るのではないので調理も手軽。ピンク色のハモを前に、宴会のマダムたちからは歓声が起きた。
料理はサプライズ。今日も大成功だ。