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時速1kmの思考

【プロの技】薄造り

夕飯の買い出しを済ませて店に立ち寄った。ビールを飲み干し、汗がようやく引いてきたところでメールが届く。
「今日はメシいならい」

おい! 思わず目の前にいる板長に愚痴ってみる。
「せっかくイワシ買ってきたのに、帰ってこないとさ」
魚の入った容器をカウンターにおく。
「けっこういい(新鮮)じゃない。薄造りにでもしてみようか」

そうして目の前に出てきたのが鰯の薄造りだ。
https://78.media.tumblr.com/a7b0b20b7e6647ba60bf9737b9b3daf4/tumblr_pajyytdM9g1tvgyjgo2_1280.jpg

皿に大輪のイワシが咲いている。
これで1尾分、原価90円である。90円だぞ! 90円がプロの手にかかるとこうなるわけだ。ちょっといい料理屋にいけば数千円とられてもおかしくない。やはり食べる側は料理人の技術に敬意を払い、きちんと対価を払うべきなのだ。

「これをもっと美味くする方法があるよ。ちょっと待ってて」
まだ半分以上残っているイワシがさげられてしまった。
そして15分後でてきたのは、冷凍庫でキンキンに冷えたイワシの薄造りだ。半分凍っているルイベの状態だ。
口に入れてみると、冷たいイワシがとろっと口の中でとけて脂が広がる。ポン酢も爽快。こりゃもうビールを飲んでいる場合じゃない。冷酒だ! 

薄造りという技にすっかり魅せられた私は、以来魚を買ってきては薄造りに挑戦しているが、いまのところ人様に出せる代物ではない。もう一度板長の薄造りを観察したいと思っていた矢先、チャンスは訪れた。

シマアジの薄造り

https://78.media.tumblr.com/0ec31ff960af44a1c5e58d3dd3aaf921/tumblr_pajz6xy3qL1tvgyjgo1_1280.jpg

チャンス到来。板長がシマアジを薄造りにしてくれるというのでさっそくカメラをまわす。
レゲエに合わせて板長の薄造りをどうぞ。
youtu.be

注目すべきは次の三点。

  • 刃渡り全体を使ってなるべく薄く切ること(これは当たり前か)
  • 切り口の三角形(写真の赤で囲った部分)を、内側に折り込むこと
  • 折り込んだ三角形の部分を親指と人差し指で摑んだまま皿におき、包丁の切っ先で引っ張りながら盛ること

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切り口の三角形はスロー再生で何度くり返しても同じ形で、ただただ感嘆。原理はなんとなくわかったものの、やるのと見るのじゃ大違いなんだよなぁ。