数年前に旅した台湾でハマったのが豆花(ドウホア)だ。つるんと喉ごしの良い豆腐にフルーツや甘く煮た豆などをのっけて食べる台湾屈指のデザートである。普段デザートというものを食べない私でさえ、さっぱり軽やかな味に魅了され、帰国する頃には毎食後に欲するほど中毒性の高い食べ物だった。
帰国してさっそく始めたのが豆花づくり。調べてみれば、日本と中華圏では豆腐のつくり方からして違いがあるという。
日本は豆腐をにがりで固めるが、台湾では硫酸カルシウム(すまし粉)という、いわゆる石膏で固めるのだ*1。もちろん美術用の石膏ではなく食べられるやつだ。
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硫酸カルシウムは保水力が高いために、豆乳が含む水分のより多くを固めることができるからあのクセのない、つるんとゼリーのような喉ごしになるという。いわば節約型豆腐といったところだろう。
より純度の高い豆乳の成分をにがりで固めたのが日本の豆腐ということになる。台湾の豆腐に比べてより大豆の香りがするのはそのせいだ。もちろん日本ではこの豆の香りがよいほうがうまいといわれる。
デザートとして食べるなら、台湾の豆腐のほうがクセがなくてよいと思ったが、当時は食用の硫酸カルシウムを手に入れることができなかったので、にがりを使うことにした。
まずはベースとなる豆腐の試作から始まった。試作品を食べてもらうと、これがなかなか評判が良い。特にパーティの前菜としては優秀で、小腹を落ち着かせてくれるし、酒飲みたちの胃の負担を和らげる効果もある。
特に出来たては格別で、冬の寒い日にも、体調の悪い日にも、食欲のない日にも、この豆腐はなかなかやる奴なのだ。
いつの間にか豆花づくりはそっちのけになり、豆腐は出来立てをすぐに食べてしまうようになった。台湾の豆腐とは違うけれど、副産物としては上々である。
無調整豆乳でつくる自家製豆腐
材料(小鉢二つ分)
無調整豆乳 | 200cc | |
にがり | 小さじ1/2弱 | 豆乳の1%の分量。500ccの豆乳なら5cc(小さじ1) |
食べ方∞無限大
自家製豆腐
醤油と薬味であっさり食べるのもありだし、ラー油をかければ中華風、餡をかけてやると洒落た一品になる。
人数が多いときは、大きな容器で蒸しあげて取り分けている。こちらは豆乳500cc、にがり5ccを鉢に流し入れ、強火で10分、弱火で15分、余熱で10分蒸し上げたものだ。器の大きさや材質によっても加熱時間は変わってくるものの、様子をみながら終始弱火で蒸しておけばたいてい固まる。
夏には冷やして食べるのもいい。果物の缶詰とあんこをのせれば、台湾を思いだす豆花もどきだ。
追記:2021年11月17日
*1:中華圏の豆腐の凝固剤は地域にもより、すまし粉とにがりが併用されている。