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時速1kmの思考

The Silence of the Lambsー旬の食材ミルクラムを食べる

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例年に比べると天気が安定しなかったが、五月にはいってすっかり気温は上がり、BBQシーズンの到来だ。昼間は暑いが、陽が落ちはじめると風がさらりと吹くし、雨も降らない。一年でもいちばん好きな季節だ。

さて、先日は近所のジンギスカン屋にミルクラムが入荷したというので、友人のツテて届けてもらった。

ミルクラムとは生後2~3ヶ月以内の母乳で育った「乳飲み仔羊」のことだそう。一般的に、羊は草を食べはじめるとあの独特な香りの肉になる。羊の出産時期は2〜3月ごろなので、すなわち、ミルクラムはこの時期しか食べられない旬の食材なのだ。

「ミルクラム」を調べれば調べるほど、愛らしい子羊の写真がでてきて、正直かなり気がひけた。が、もうこうなっている以上、感謝して美味しくいただくしかない。

淡いピンク色をした、これまで見たこともない上品な肉で、羊特有の香りはほとんどせず、そのまま刺身で食べられそうだ。
ジンギスカン屋にタレもいただいたが、ミルクラムにはもっとシンプルな食べ方がいい。今回は、海塩、ハーブ塩、トリュフ塩、柚胡椒、レモンを用意した。

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羊を常温に戻して、鉄板でさっと焼き、口に入れる。普段食べている羊と比べると、断然クセもなく、柔らかい。ほんのりと羊の甘い香りがして、肉の繊維がほどけていくような口当たり。個人的には普通の塩が一番合う。

なにより驚いたのが、その脂の質だ。羊を焼いた鉄板を一日放置すると、たいてい冷えて固まった脂が白くこびりついているものだが、ミルクラムの場合は力をいれて鍋をこすることなく、さらりと脂が流れていくのだ。これが口溶けの軽さに秘密なんだろう。

さて、この素晴らしき旬の食材をまた来年も食べたいか? と言われると、少し悩ましいところだ。たしかにうまいし、一口めは感動すら覚えた。でも私は、羊のあの独特の香りがするからこそ羊だと思う。さらに妄想を膨らませていけば、なにも乳飲み仔を親から離して意図的に殺してまで食べる必要があるのかとも思う。もちろんそれは羊に限ったことではないが……。

映画『羊たちの沈黙』で、主人公クラリスレクター博士に、自分の過去のトラウマを打ち明けるシーンがある。

「朝方、子羊の悲鳴で目が覚めたの。牧場に行くと叔父が子羊を殺していて…逃がさなきゃと思って柵を開けたのに、子羊たちは逃げないの。咄嗟に近くの一匹を抱えて逃げたわ…でも重くて…」

ミルクラムを食べた次の日、なんとなくこの映画を思い出した。ちなみに原題は「The Silence of the Lambs」だから、ミルクラムだったらクラリスは抱えて逃げ切れたかもしれない。

旬の野菜や魚貝を食べているときには感じなかった、妙な感情だった。もしかしたら調理されている状態だったらこんなこと思わなかったかもしれない。
菜食主義になるつもりは毛頭ないし、こういった議論も白黒つける必要はないから、今回は特にオチがない話になってしまったが、散文ってことで勘弁してほしい。

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