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時速1kmの思考

哲学者テオプラストスに学ぶ、ビーツの食べかた

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テオプラストスいわく、
ビーツは生で食べてもおいしい

欧米ではビーツを煮たり、丸ごと焼いたりして食べるが一般的だ。海外のレシピをもたいてい火を通した料理が多いので、まだビーツがそこらで手に入らなかった時代は殊勝にもボルシチなんかをつくっていたものだ。反応はいまいち。どうやったらもっとおいしくビーツを食べられるのか、毎年国産が出回る季節は悩むことになる。

するとある日、こんな記述を見つけたのだ。

紀元前300年頃に哲学者テオフラスタスは、ビートは生で食べてもおいしいと書いている。(マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-より引用)

まじか!
Wikiではテオプラストス(Theophrastos)となっているが、彼は古代ギリシャのレスボス島生まれの哲学者であり、植物学者。「植物学の祖」とも言われるほどの人物なのだから信じよう。

それまでビーツは煮て焼いて食べるものだと思い込んでいた。囓ってみると、たしかに甘くてうまい。そりゃそうだ。砂糖の原料にもなる甜菜の仲間なんだから。なにより、火を通すよりも歯触りが抜群にいいしジューシー。なんてこった。これまで食べたビーツを返してくれ!

ビーツのラペ

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刻んでビネグレットで和えるだけの簡単なサラダがいい。フランスのキャロット・ラペと同じだ。ビーツ自体が甘いので蜂蜜や砂糖なんかはいらない。

固いビーツを千切りするのはちょっと苦労するかもしれない。チーズグレーターの粗い面ですると楽だし切断面がランダムになるのでドレッシングの馴染みがいい。削れなくなるほど小さくなってきたら、諦めて包丁で切ること。指を切ろうものなら血と果汁でまな板がカオスだ。

材料

ビーツ 150g(半個) 千切り
クレソン(オプション) 2枝 ざく切り
レモンの皮(オプション) 少々 すりおろし
ビネグレット   市販のもので問題ない
小さじ2
少々
ディジョンマスタード 小さじ1/2
植物油 小さじ6 米油とピーナッツ油をブレンド

つくりかた

  1. 皮をむいて千切りにしたビーツに分量外の塩をひとふりして混ぜる。https://78.media.tumblr.com/d045a757343516d36ca24569ca4b5694/tumblr_p3tfidmdow1tvgyjgo3_1280.jpg
  2. ビネグレットの材料を上から順に混ぜる。なんにでも使えるので多めにつくっている。https://78.media.tumblr.com/44b8421f93c13936735a759ecdf46800/tumblr_p3tfidmdow1tvgyjgo2_1280.jpg
  3. ビーツをビネグレットで和えて、落としラップをして味を馴染ませる。https://78.media.tumblr.com/72b2599b603e9b1fd92d9ad2b53f7383/tumblr_p3tfidmdow1tvgyjgo4_1280.jpg
  4. 味見をして物足りなければ塩・胡椒で調味。食べる直前にレモンの皮とクレソンを和える。https://78.media.tumblr.com/39f61340cb347169c8b31a15321a9dc2/tumblr_p3tfidmdow1tvgyjgo5_1280.jpg

ポーチドエッグも添えてちょっとした盛り合わせもいい。

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薄く切ってディップすればさらに手軽。こちらは味噌とヨーグルト、クリームチーズを混ぜた簡単なドレッシングだ。

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konpeito.hatenablog.jp

キッコーマンの無調整豆乳でつくる激うま自家製豆腐

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数年前に旅した台湾でハマったのが豆花(ドウホア)だ。つるんと喉ごしの良い豆腐にフルーツや甘く煮た豆などをのっけて食べる台湾屈指のデザートである。普段デザートというものを食べない私でさえ、さっぱり軽やかな味に魅了され、帰国する頃には毎食後に欲するほど中毒性の高い食べ物だった。

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基隆の屋台で食べた豆花

帰国してさっそく始めたのが豆花づくり。調べてみれば、日本と中華圏では豆腐のつくり方からして違いがあるという。
日本は豆腐をにがりで固めるが、台湾では硫酸カルシウム(すまし粉)という、いわゆる石膏で固めるのだ*1。もちろん美術用の石膏ではなく食べられるやつだ。
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硫酸カルシウムは保水力が高いために、豆乳が含む水分のより多くを固めることができるからあのクセのない、つるんとゼリーのような喉ごしになるという。いわば節約型豆腐といったところだろう。

より純度の高い豆乳の成分をにがりで固めたのが日本の豆腐ということになる。台湾の豆腐に比べてより大豆の香りがするのはそのせいだ。もちろん日本ではこの豆の香りがよいほうがうまいといわれる。

デザートとして食べるなら、台湾の豆腐のほうがクセがなくてよいと思ったが、当時は食用の硫酸カルシウムを手に入れることができなかったので、にがりを使うことにした。

まずはベースとなる豆腐の試作から始まった。試作品を食べてもらうと、これがなかなか評判が良い。特にパーティの前菜としては優秀で、小腹を落ち着かせてくれるし、酒飲みたちの胃の負担を和らげる効果もある。
特に出来たては格別で、冬の寒い日にも、体調の悪い日にも、食欲のない日にも、この豆腐はなかなかやる奴なのだ。

いつの間にか豆花づくりはそっちのけになり、豆腐は出来立てをすぐに食べてしまうようになった。台湾の豆腐とは違うけれど、副産物としては上々である。

無調整豆乳でつくる自家製豆腐

つくりかた

  1. 計量カップで豆乳とにがりをよく混ぜる。
  2. 器に豆乳を入れる。どうしても泡だってしまうので、スプーンなどで泡を潰しておく。https://78.media.tumblr.com/368dc2b2019eb2a2db89436404d5029d/tumblr_p3tfewQrTD1tvgyjgo1_1280.jpg
  3. 蒸す。強火で10分、弱火で10分、余熱で10分。https://78.media.tumblr.com/9dd858aa9640d3b38211934f38e0f8bd/tumblr_p3tfewQrTD1tvgyjgo2_1280.jpg
  4. 竹串で刺してみて、白い液体がついてこなければ出来上がりだが、とろとろの半熟状態もおぼろ豆腐のようでうまい。https://78.media.tumblr.com/4091ae568d7664b1c9de6c0406d12c30/tumblr_p3tfewQrTD1tvgyjgo3_1280.jpg

食べ方∞無限大
自家製豆腐

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醤油と薬味であっさり食べるのもありだし、ラー油をかければ中華風、餡をかけてやると洒落た一品になる。

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人数が多いときは、大きな容器で蒸しあげて取り分けている。こちらは豆乳500cc、にがり5ccを鉢に流し入れ、強火で10分、弱火で15分、余熱で10分蒸し上げたものだ。器の大きさや材質によっても加熱時間は変わってくるものの、様子をみながら終始弱火で蒸しておけばたいてい固まる。

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夏には冷やして食べるのもいい。果物の缶詰とあんこをのせれば、台湾を思いだす豆花もどきだ。

追記:2021年11月17日

konpeito.hatenablog.jp

*1:中華圏の豆腐の凝固剤は地域にもより、すまし粉とにがりが併用されている。

温度管理から解放! 鍋選びで失敗しない温泉玉子

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理論だけで
温泉玉子はつくれない

温泉玉子をつくるには、「65度で30分保温」というのがセオリーである。料理書を読んでいて腹立たしいのは、そんな理論は分かりきっているし、どうでもいいってことだ。つまりは65度を30分をどうやって保つのか教えてくれよ! て話だ。

AnovaTANICA ヨーグルティアSのような温度管理できる調理器があれば話は早いんだが、いまだ踏み切れずにいる。
確実なのは、鍋に張り付いて温度計で計りつづけることだ。晩飯が温泉玉子だけというならそれも我慢できるが、そんなヤツはいないだろう。どれだけ楽に温泉玉子をつくるか、それが命題だった。

ところで、ポーチドエッグの記事にも書いたとおり、温泉玉子とポーチドエッグには明確な共通点と違いがある。
konpeito.hatenablog.jp
共通するのは、両者とも卵白と卵黄のタンパク質が変性する温度の違いを利用して調理される点だ。卵白は62〜65℃、卵黄は65〜70℃で凝固する。
そして両者の違いは、「温泉卵=とろとろ白身×固めの黄身」であり、「ポーチドエッグ=固めの白身×とろとろの黄身」なこと。だからセオリーは65度で30分なわけだ。

まずは手持ちのあらゆる鍋で、なるべく手間をかけずに温泉玉子をつくる方法を試すことにした。鍋、玉子の数、調理時間などの変数を組み合わせ、なんとか納得のいく温泉玉子に近づいたので紹介したい。

温泉玉子をつくる
調理器具の選びかた

使ったのは、ビタクラフトのミニパンセットのうち、中サイズの鍋(1.5L/730g)と計量カップだ。

ビタクラフトのミニパンセットの中サイズ

無水・無油調理と余熱調理を得意とする鍋で、保温性と密閉性が抜群というのが売り。鍋に付属する冊子によれば、温泉玉子は熱湯1リットルに400ccの差し水をして20分余熱とあるんだが、いったい何個の卵なのか、どの大きさの鍋を使っているのか、そもそも差し水は季節によって温度が違いすぎるだろ! と突っ込みどころ満載だったが、とにかく温泉玉子はつくれそうだ。

ルクルーゼと土鍋は、保温性はあるものの密閉性がいまいちだったようで、この立春寒波のせいもあるのか湯の温度を保つのが難しかった。

とにかく、手持ちのもののなかでいちばん保温性と密閉性が高い鍋を選んでほしい。いま流行のバーミキュラも密閉性がすごいらしいからきっとうまくいくだろう。お値段はかわいくないし、先日のTV番組の影響なのかほとんど売り切れなんだが。まさかANOVAより高いとはね……。

耐熱のプラスチック計量カップ

沸騰した熱湯を玉子にばしゃばしゃかけてしまうのは相撲業界でいうかわいがり。最悪、割れてしまう場合もある。
熱湯を計量カップに一度移せば、湯量を測りつつ、少しだけ湯冷ましすることができる。これが今日の唯一のポイント。

30分放置の温泉玉子

材料

玉子 4個 常温に戻しておく

冷蔵庫から出したばかりの冷たい玉子で成功したらベストだったんだが、どうしても割れてしまうのと保温性が著しく悪くなるので、ここは譲歩することにした。

つくりかた

  1. 鍋に常温の玉子をいれる。https://78.media.tumblr.com/cc2ba10c8a6229756a2a62ea654de54b/tumblr_p3tfc1QjWL1tvgyjgo1_1280.jpg
  2. 計量カップで1リットルの熱湯を入れる。この鍋だとほぼ満水。https://78.media.tumblr.com/39e516ea9aa244a7fcad1f3486942499/tumblr_p3tfc1QjWL1tvgyjgo4_1280.jpg
  3. 蓋をきっちりしめて、30分放置する。蓋をあけたときは62度になっていた。ちょうど卵白がかたまり始める温度だ。https://78.media.tumblr.com/1206683adad1ace252b87a25d8d7f6a4/tumblr_p3tfc1QjWL1tvgyjgo3_1280.jpg
  4. 30分たったら急冷する。https://78.media.tumblr.com/287eb81e7bc8704c912dfdb3344f259d/tumblr_p3tfc1QjWL1tvgyjgo8_1280.jpg

うどんの上にそっと割り入れる。殻に白身が残ることもなく、スルリと抜け落ちた。第一関門突破だ!
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黄身はねっとりと濃厚、白身はとろとろ。ばっちり温泉玉子である。まずはこれを基本の温泉玉子としたい。ここから好みの食感に向けて、放置時間を調整するといいだろう。夏には台所の気温が上がるだろうから、また同じ条件でつくってみたい。
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25分放置の温泉玉子

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同じ条件で25分の温泉玉子をつくる。

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30分のものとほとんど変わらないが、気持ち白身が緩い。殻を割ると少しだけ白身が残った。カレーにかけるなら30分、熱々のうどんにかけるなら25分がいいのかもしれない。

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使ってよかった暮らしの道具

二連式キッチンタイマー

手持ちのiPhoneにもタイマーはついているが、料理中に携帯をいじるのも不衛生だし、最終的には火を消すのが目的だから、結局キッチンには出向かなければならないのである。ならばキッチンに常設してある大音量のタイマーの方が便利だ。二連式なので、土鍋で飯を炊きながら、半熟卵を茹でるといったこともできるので、重宝している。

ワイン好きに贈る、夜のスクランブルエッグ

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フォアグラのスクランブルエッグ添え、
フォアグラ抜き!

もう10年以上の付き合いになるイタリアンレストランで、冬になると登場するのが「フォアグラのスクランブルエッグ添え」だ。個人的にはフォアグラはあまり好きではないんだが、甘いのにキリッとしたフォン・ド・ヴォーソースがたっぷりかかった玉子が絶品で、いつのまにか「フォアグラ抜きで!」を頼むようになった。

「うちはいいけど、それじゃただのスクランブルエッグじゃん!」とシェフは笑うんだけれど、これが本当に美味いし赤ワインに合うんだから仕方ない。ソースはパンにつけて最後の一滴までいただくもんだから、「きれいに食べるねぇ」となかば呆れ顔。
スクランブルエッグといえば朝食の定番だと思いこんでいたけれど、酒のつまみとして食べるのも乙なものなのだ。

以来、夜のスクランブルエッグは定番になった。なにか一品足りないとき、ささっとつくれる簡単なつまみはなにかと重宝するもんだ。

スクランブルエッグについて

夜に食べるので胃に負担をかけないよう、スクランブルエッグ自体にはバターを使わずあっさりと仕上げて、ソースのほうにバターのコクを加えている。もちろん、バター至上主義ならバターを使ってほしい。
今回はビル・グレンジャー(Bill Granger)風スクランブルエッグにしてみる。
konpeito.hatenablog.jp

ソースについて

ソースは和食の定番、べっこう餡を洋風にアレンジしたものだ。ベースとなる出汁は以前紹介したくず野菜を使ったフォン・ド・ヴォーを使っているが、手持ちのものならなんでもかまわない。ただし塩分がすでに入っているものなら、醤油の量を調節していただきたい。
また、決めてのバターを澄ましバターにすると、ソースも濁らないしすっきりした味わいになるが、今回はそのまま使った。
朝のスクランブルエッグが、このソースでワインに合うスペシャルな夜のひと皿になる。
konpeito.hatenablog.jp

夜のスクランブルエッグ

材料

玉子 3個  
生クリーム 大さじ2  
ひとつまみ  
米油 適量 クセのない植物油
洋風べっこう餡ソース
フォン・ド・ヴォー 90cc 塩分なし
濃口醤油 大さじ1
みりん 大さじ1
蜂蜜 小さじ2/1
バター 10g
水溶き片栗粉 適量  

つくりかた

  1. まずソースをつくる。フォン・ド・ヴォーを90ccほど小鍋にとり、醤油、みりんをいれて軽く沸騰させ、蜂蜜とバターを加えて水溶き片栗粉でとろみをつける。
  2. メインのスクランブルエッグはビル・グレンジャー(Bill Granger)風にしよう。熱したフライパンで油を温め、クリームを入れた卵液を一気に流し込み、ヒダを寄せるようにしてヘラや菜箸でゆっくり、大きくかき混ぜていく。
  3. 温めておいた皿にソースをしき、スクランブルエッグをのせる。好みで胡椒をひとふり。

【暮らしの道具】右腕になってくれる最強の木べら

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世の中、木べらフェチってけっこういるんじゃないだろうか。私といえば、旅へでるたびに現地の調理道具を物色するんだが、なかでも木べらは軽くて持ち帰りやすいのでつい買ってしまう土産のひとつ。旅先で悩みすぎるのは時間の無駄。いつの間にか木べらが増殖し、収納からあふれ出る始末なので、選りすぐりだけを残すことになった。

結局、本当に自分の右腕になってくれる木べらというのは数本なのだ。ここ数年よく使っているのがこちらの二本、どちらも国産だった。

絶妙なカーブ!
キッチンクラフトザイツの木べら

木ベラの概念を覆されたMr. 木べら(写真の左・中央)。材質は桜だ。
秀逸なのは、この絶妙なカーブだ。まるでゴムべらのようにステンレスのボウルにぴたっと沿うので、食材を余すことなく移動することができる。食材のへばりつきも普通の木べらと違って極端に少ない。

じゃあはじめからゴムベラを使えばいいじゃないか、という疑問が出てくる。もちろんゴムベラの方がその精度は勝るが、できれば洗い物は増やしたくない。
火を通す料理はもちろんのこと、生肉を扱うときは木ベラを使うと手の熱が伝わらないので脂が溶け出さないし、力がうまく伝わるので肉のこねすぎも抑えられる。
蒸したカボチャを裏ごしするときだって、ゴムべらではいまいち力がうまく伝わらない。木べらのほうが仕事も早いだろう。

出番が多すぎてすっかり年季がはいってきたので、二本目を追加購入。そのとき初めて値段を知ったんだが、2400円。そんなに高価な物とは知らずにガツガツ使っていた。でもまぁ、道具は使ってなんぼである。

キッチンクラフトザイツは大分県日田市に工房があるそうで、できれば大人買いに走りたいところだがフライト代を考えるとえらく高くつく。
Facebookは更新されているようなので、お近くのかたはぜひとも使ってみていただきたい。
都内では TOKYO FANTASTIC OMOTESANDO で購入できる。とはいえ在庫があれば、の話だが。購入予定の3本目は、友人を介して入荷をのんびり待っているところだ。
ameblo.jp

これぞ原点!
双葉商店の木べら

材質はイチョウ。大・中・小がサイズがあるが、写真(右)は小である。三年ほど前に百貨店の実演販売で買ったものだが、たしか1000円以下でお手頃なのがまずの魅力だった。
実際使ってみると、感触もコストパフォーマンスも抜群だ。特に、口径の小さい深鍋、うちの場合は「石黒智子のシンプルな台所道具 重ね鍋」の深鍋にはいい塩梅のヘッドの大きさで小回りが利く。

「元祖」と紹介したのには訳がある。先日訪れたタイの漁村では、コンロの脇に長短合わせて10本ほどの木べらが据えてあったんだが、これがただ竹を割ったものだったのだ。昔ながらの台所と昔ながらの調理器具。そこで食べた伝統的なタイ家庭料理の数々はすばらしいものだった。木べらで料理の腕が上がるわけでもないが、その素朴で単純な形状が人間の食べる歴史を支えてきたかと思うと感慨深い。

双葉商店の木べらは、もちろん職人が緻密な加工を施しているんだろうが、無駄を省いたシンプルな形状がなによりも魅力だ。真っ直ぐにのびたその柄は深鍋にもぴったりと沿って食材を無駄なくかき出してくれる。
あえて難を示せと言われれば、先に紹介した木べらよりも若干軟質なのか、あまりに乱暴に扱うと削れてしまうことくらいか。

ホームページで全国の催事のお知らせもある。もう一本買い足したいので、3月の銀座三越には足を運んでみたい。