先日、イノシシが京都のホテルに出没し、従業員が軽傷を負ったというニュースが流れた。他県でも同様の事件が多発しているらしいが、猟師の高齢化も進み、駆除するにもなかなか難しい状況にあるという。そんなニュースを見たあと、こんな小咄を聞いた。
あるとき神様が、生きとし生けるものたちにこう言った。
「明日、君たちの願い一つだけ叶えてあげよう。ただし、より多数の者が願うもの一つだ」
人間たちは「平和な世界」「貧困のない世界」「差別のない世界」など、それぞれに願った。
次の日、神様は言った。
「願いを叶えよう。みなの総意で、人類を滅亡させることにする」
つまり、人間以外の生き物すべてが「人間がいなくなればいい」と願ったという話だ。
考えてみれば、人間ほど身勝手で、悪意に満ち、こざかしい生き物もいない。人間がいなくなれば、人間が願った望みさえも叶えられることになるというのも皮肉な話である。ふと手塚治虫氏のエッセイ『ガラスの地球を救え―二十一世紀の君たちへ (知恵の森文庫)』を想い出した。
適正個体数とはなにをもって適正なのか? 「害獣」というレッテルを貼られてしまった動物にとっては、人類こそが害獣なわけだから、いつか我々が駆逐されたとしても文句は言えないし、人口減少の社会も彼らの総意なのかもしれず、より適正個数への道を辿っているだけなのかもしれない。
なーんて考えてしまったが、気を取り直していこう。前回の猪肉のローストに引き続き、次は猪肉を煮込んでみることにした。ラグーにしようか。いや、せっかくの塊肉を細切れにするのは忍びないので、大ぶりにカットして肉の存在感あふれるイタリア風の煮込みにしよう。
本来は牛肉を使う Stufato di Manzo という料理だけれど、猪肉だから Stufato di Cinghiale だな。イタリア中部のウンブリア地方ではよくイノシシを食べるらしいから、こんな料理だってきっとあるはずだ。
猪肉のイタリア風煮込み
材料
ソフリット | ※1 | |
タマネギ | 50g | みじん切り |
セロリ | 25g | みじん切り |
ニンジン | 25g | みじん切り |
オリーブオイル | 適量 | |
猪肉 | 500g | 大ぶりの一口大に切る※2 |
塩・胡椒 | 適量 | |
強力粉 | 適量 | |
オリーブオイル | 大さじ3 | |
ローズマリー | 1枝 | |
酒 | 120cc | 赤ワインがベスト |
トマト缶 | 200g | ダイスか裏ごししたもの |
水 | 180g | |
塩 | 小さじ1/2 | |
砂糖 | 小さじ1 | 酸味のカドがとれる |
トマトペースト | 小さじ1 | なければケチャップ |
※1 セロリとニンジンはタマネギの半量を目安にしている。大量につくって冷凍しておくと便利。
※2 ジビエ特有の鳥獣臭さは皮と脂肪にあるので、もし臭いと感じたら皮をとっておいたほうが無難。今回はそのまま使っている。
つくりかた
④ 猪肉を焼く
オリーブオイルを馴染ませたフライパンに肉が重ならないよう配置し、その上にローズマリーをおき、強火で焼く。血がにじんできたころをひっくり返す。肉は焦げるくらいが理想だけど、ローズマリーは焦がさないように途中で引きあげる(煮込むときに使うのでとっておく)。
⑤ 煮込む
肉とソフリットを煮込み鍋に移し、鍋が十分温まったら酒を入れてアルコール分を飛ばす。
全体がどろっとしてきたらトマト缶を入れて水分を飛ばすように炒め合わせ、水を加える。肉がすっかり隠れるくらいがいい。一煮立ちしたら塩をいれる。表面がぽこぽこと沸く火加減で、蓋をせずに30分〜1時間煮込む。小麦粉のせいでかなり鍋底が焦げやすいので、ちょくちょく鍋全体をかき回してやる。
⑥ 仕上げ
表面に赤い油の膜がはってきたらおいしく出来上がっている合図。塩・胡椒・砂糖・トマトペーストで調味し、食べるまで蓋をしておく。
付け合わせは太めの手打ちパスタにしよう。
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